6話 奪われたもの
学校では教師や生徒がパニックになっていた。宇宙人の地球の大地に降り立ったことにより、恐怖で身体が動かない生徒もいた。
「もうダメだ……!み、みんな死ぬんだ‼この学校もいつか宇宙人に占領される‼」
「家に帰りたいよぉ……」
「早く逃げ道を探すんだ何してんだよみんな‼」
「学校の外のほうがもっと危ないよ……」
「だから、もう終わりだって言っただろ!俺たちはみんな死ぬんだよ‼」
皆、とても混乱していた。
そんな中、春香からの置き手紙を手にした俺は急いで学校を後にした。向かった先は自宅だった。
(今日、母さんは午後から仕事だった!まだ家にいるはず‼)
そう思い、自宅の前まで来た。俺は慌ただしくドアを開けたが、そこにはとんでもない光景が広がっていた。
家中がメチャクチャに荒らされていたのだ。
「おい、嘘だろ……」
家の中を進み、リビングにたどり着いた。リビングも同じように荒らされていて、壁には焼き跡が残っていた。
そして、そこに女性の下半身があった。
床に下半身だけが倒れ伏せていたのだ。
俺はその下半身を見て、すぐに誰の足だかわかってしまった。
「く、クソが……‼‼」
俺の心には恐怖よりも憤怒と憎しみのほうが強く表れていた。
そんな俺は悲惨な姿になった自宅を後にし、しばらく住宅街を歩き回っていた。
ーー午前9時17分ーー
住宅街を歩き回っていた俺の前に、二体の光り輝く奇妙な人間が現れた。
いや、人間ではない。宇宙人だ。
「地球人ノ雄ダナ。ノコノコ現レテ何ノツモリダ?」
「奴ハ成体ダナ。幼体ハ捕獲シロト命令サレタガ、奴ハ殺シテモ大丈夫ダロウ」
二体の宇宙人たちはそう話していた。
俺には何を言っているのかわからなかったが、何となく話の内容が理解できていたのだ。
だが、そんなことより、宇宙人を前にした俺はその怒りを表した。
「貴様ら……うぉぉぉぉぉぉぉぉ‼‼‼」
怒り狂い、怒鳴りながら俺は素手で宇宙人に襲いかかった。二体の宇宙人は右手に持っているビームソード対抗して来たが、俺は一体の右手を蹴り上げ、剣を手から弾かせた。
剣を持っているもう一体の宇宙人が蹴り上げた直後の俺を斬りつけようとしたが、俺はそのまま後転宙返りをし、ビームソードの攻撃を避け、空中に弾き飛ばされた一本のビームソードをジャンプして手にした。
「バカナ⁉我々ノ武器ヲ人間ガ触ルコトガデキルダト⁉」
「アノ戦闘力!油断スルナ!」
二体の宇宙人がそう言っていたとき、俺は空中からビームソードを構え、地上にいる宇宙人たちに襲いかかっていた。
「死にやがれッッ‼‼‼」
それから、何があったのかはあまり覚えていない。
気がつくと俺の左手にはビームソードが握られており、そのビームソードの先には宇宙人の腹が刺さっていた。
もう一体も近くで倒れていたが、ビームソードで刺された跡が何個もあった。
「罪悪感……いや、そんなものは感じない……。こいつらはたくさんの人を殺した。俺は悪くない……。俺と比べればこいつらは何人殺し……‼」
俺は気づいた。母さんは宇宙人に殺されたことを。身体の上半身を宇宙人に持っていかれたことを。
そのことを思い出した瞬間、俺はビームソードを宇宙人の腹から抜き、頭に突き刺した。
「お前らが俺の生活を奪った‼お前らが俺の家族を奪った‼お前らが俺の、人類の全てを奪ったんだ‼」
何回か宇宙人の頭にビームソードをグサクザと突き刺し続けていた。
そして、その宇宙人の頭がグチャグチャになったところで、俺は春香のことを思い出した。
あいつはまだ無事だろうか……。
俺は急いで電話しようとしたが、電話は通じなかった。だが、渋谷駅に行けば春香は来る。そう確信した俺は宇宙人が持っていた二本のビームソードを武器に、渋谷駅へと向かって行った。