5話 置き手紙
謎の大艦隊の撃破任務に出発した航空自衛隊の戦闘部隊が全滅した情報は、海上自衛隊、陸上自衛隊の軍人の耳にも流れていた。
自衛隊本部でも、その噂が充満していた。
「なに⁉航空自衛隊が全滅だと⁉じゃあ、さっきの爆発は航空自衛隊の物なのか⁉」
「どうやらそうらしい!航空自衛隊の将官の朱谷長官も死んだらしいぞ!」
「もし、あの大艦隊が地上に落ちて来たらどうする⁉逃げるしかないよな⁉」
「まだ死にたくねぇよ!なんでこんな仕事にしたんだ俺は‼」
航空自衛隊の死を驚く者、恐怖を増幅させる者、たくさんの軍人が誇りを捨てていった。
そんな中、航空自衛隊の全滅を疑っていた者がいた。それは海上自衛隊の佐官である立原尚志という男だった。
彼は朱谷長官とは昔からの友人関係である。
「バカな、真人が死んだだと⁉信じるものか!あんな大艦隊なんて、すぐに消えるさ!」
そう言い張っていた彼だったが、このとき、恐ろしいことが起ころうとしていた。
東京都、道路は渋滞していた。何故なら謎の大艦隊の出現、そして航空自衛隊の飛行機による爆発、その恐怖が人々を東京都から遠ざけようとしていたのだ。
だが、渋滞に巻き込まれた車がほとんどで、電車もバスも常に満員状態だった。
ある家族が乗った車で、4歳くらいの男の子が窓の外に指差した。
「ママ、UFOから何か降ってくるよ」
「何が降って来たのかなぁ?雨かなぁ?」
「あれって人じゃない?」
「人が降ってくるわけ……」
その子の母親は人が降ってくるという幼い息子にそう言おうとしたが、窓の外を見たとき、言葉が止まった。
その子の言っていた通りだったのだ。
大艦隊から光り輝く人間らしい物が何万……いや、何億という数で舞い降りて来たのだ。
その光景を見た人々の中には、道路に車を置き去りにして逃げる人たちもいた。
「「「きゃぁぁぁぁぁ!‼‼」」」
「宇宙人だ‼早く逃げろ‼」
「殺されるぞ‼」
人々は空から降りてくるエイリアンの姿を見て、恐怖を抱かせながら逃げて行った。
東京都の道路に着地したエイリアン8億体は、ビームソードやレーザー銃などの未知なる武器を構え、あるメタル製のリュックを身につけたエイリアンが他のエイリアンに命令した。
「全部隊戦闘準備!コレヨリ、我々ハ地球侵略ヲ開始スル‼」
一方、学校の保健室へとやってきた俺と先生は春香の状態を見ようとしたが、そこに春香はいなかった。
「先生!春香がいません‼」
「いないだと⁉こんな時に!天野は一体どこに⁉」
「まだ近くにいるかもしれない‼探して見ます‼」
俺はそう言い、保健室の中を調べ、先生は保健室の周辺の外を調べたが、誰一人いなかった。
だが、保健室のベットの上に一枚の置き手紙を俺は見つけた。それは、春香の字だった。
『10時に渋谷駅に来て。待ってる』
という内容だった。
俺はその置き手紙を握りしめ、学校を後にした。