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中国編

WFC第二段。今度は、中国の例の山だ!

 俺の名前は、白石シライシナガレ

 元は、小さな大学の助教授だった。

 とある調査を元に、日本のホテル王のスポンサーの下でWFと呼ばれる怪奇現象調査を本格的に始める事になった。

 ネットに玉石混交する情報の中でも信用度が高いと思われた事件の調査の為に、中国に飛んでいる最中である。

「広東地方の山の一つが、不自然な崩落しているか。あの山とは、扱いが違うが、近い現象だな」

 俺は、飛行機での移動の間に問題の山の様々な情報を確認して居た。

 すると、隣の一人の中国人女性が座ってきた。

「少し良いですか?」

 日本語での問いかけに緊張が走る。

「何でしょうか?」(上海語)

 故意的に日本語を避けた。

 苦笑する中国人女性。

「無理に中国語を話す事は、ありません。貴方が日本人だという事は、解っています」

 間違いなく、俺の目的を知って近づいてきた女性だ。

「何の用だ?」

 中国人女性は、曖昧な表情を見せる。

「これから行おうとしている調査を止めて貰う為に来たと言ったら驚くかしら?」

 どんぴしゃだ。

「俺は、単なる観光の為に中国に向っているのですが?」

「誤魔化す必要は、ありません。私の主の夢のお告げで貴方の存在が語られたのですから」

 夢のお告げと来たか。

「そんな曖昧な物で動いているのか?」

「曖昧? 私の主の夢のお告げは、どんな情報より、正確無比です」

 そう答えた女性の表情には、一片の疑いを現れていなかった。

「予知夢の大半は、それまでの経験からの合成映像の中からこれから先に起こるだろう現象をピックアップしているだけだ。単なる経験則に因る予測でしかない」

 俺の反論に女性は、不機嫌そうな顔をした。

「そんな一般論でわが主を語られるのは、不愉快です。あの御方は、まだ会った事のないあの娘すら予知夢の中に含ませていたのです」

 また出てきた。

 WF、謎の白き発光現象の発現点、神やそれに類する存在と対決する謎の少女。

「あの娘は、それなりに有名なのでは、無いのか? それだったら夢に出てきてもおかしくないだろう?」

 半分ブラフの質問に女性が引っかかった。

「こっちの世界では、地上最強の攻撃力を持つ者として有名でも、あれほどの事が出来るとは、我々の中で誰も信じていませんでしたよ」

 地上最強の攻撃力とは、かなり奮った表現だが、核ミサイルとガチで遣り合える能力だ、満更嘘でないだろう。

「確かに山の形を変えてしまう様な力を持っているなんて誰も思わないだろうな」

 俺の一言に女性が眉を顰める。

「そっちの調査だったのですか?」

「そっちってそれ以外に何を調査する事があるって言うんだ?」

 俺の答えに女性は、苦笑した。

「なるほど、わが主は、それほど気にする必要が無いと言っていた訳ですね。失礼します」

 そのまま立ち去る女性が見えなくなってから俺が呟く。

「山の姿を変える様な怪奇現象より大変な事などあるのか?」



 現地に着いた俺は、すぐさま日本語が使える現地ガイドの下、問題の山を確認した。

「本当に自然崩落だったのですか?」

 現地ガイドの男性が呆れた顔をする。

「何を言ってるんだい、人の力で山の形を変えるなんて出来る訳ないだろう。我が国は、あんたの国みたいに核ミサイルは、落とされていないよ」

 それが一般的な見解だろう。

 しかし、俺が日本で調査した山と様々の事で相似点があった。

「崩落の前後に白い光を見たって話を聞きませんでしたか?」

 現地ガイドは、眉を寄せた。

「崩落前後は、やたら地震があったのは、記憶があるが、そういう話は、余り聞かないな」

 ネットでは、遠方からだったが白い光が見えたとある。

 この場合問題は、地震だ。

「その地震が崩落の引き金になったと言うのですか?」

 現地ガイドは、肩をすくめる。

「単なるガイドにそんな難しい事は、解らないさ」

 本格的な地質調査等は、無理だろう。

 あの山は、崩落したと言うのは、中国政府も認める公式見解だ。

 ここ中国でもあの娘の政治的圧力が有る事がわかる。

 山の方からこれ以上探るのは、無理だろう。

「少し話が変わるんですが、その前後に日本人の少女を見た人が居ませんか?」

 現地ガイドが少し悩んだ後、手を叩く。

「そうだ、確か、拳神様と一緒にいる日本人を見たって知り合いが言っていたな」

「拳神って何ですか?」

 俺の基本的な質問に現地ガイドは、目を輝かせて語る。

「中国拳法を極めた御方。龍の名、地龍を持つ最高の拳士、中国の至宝だ!」

 変な方向に話が伸びてきたな。

「その人に会うことは、出来ますか?」

 目を半眼にする現地ガイド。

「馬鹿な事を言うのも大概にしろ! 拳神様にそうそう会えるわけが無いだろうが!」

 しまった、このガイド、かなりその拳神様を崇拝している。

 下手に刺激したら不味い。

「すいませんでした。そんな立派な御方でしたら、一目拝見したく言っただけでして……」

 適当に誤魔化すと現地ガイドが立腹を納めて答えてくれる。

「拳神様御本人は、世界中を回っていらっしゃるから無理だ。しかし、弟さんが事業を興している筈だが?」

 俺は、その現地ガイドの情報を元にその人物にコンタクトをとる事にした。



 拳神と言うのは、中国では、かなり有名らしく、その弟の情報も早い段階で掴む事が出来た。

 スポンサーの力を借りて問題の人物との面会の機会を得る事に成功した。

「始めまして、カイ=ロンです」(英語)

「ナガレ=シライシです。話をする機会を頂き感謝しています」(英語)

 企業の社長だけあって英語に長けている事で今回は、英語で話す事になった。

「それで、どの様なお話なのでしょうか? 兄に関する事でしたらあまり詳しい事は、解りかねますが?」(英語)

「些細の事でも良いのですが、拳神と呼ばれる貴方のお兄さんに日本人の少女の知り合いが居ると思いますが、何か解りませんか?」(英語)

 カイ氏は、少し考え込んだ後に告げる。

「兄は、ある日本の男性の下で危険な仕事をしているという話を聞いた事がありますが、兄の性格からして少女の知り合いが居るというのは、考え辛いですね」(英語)

 危険な仕事か、もしかしてそれがあの少女と関わりがあるのかもしれないが、情報不足だ。

「そうだ、一人だけ居ました。私の事業にも多額の出資をして下さったのが、確か日本人の少女と聞いています」(英語)

 大きなお金、もしかしたら、それかもしれない。

「多額の出資? それは、何時ごろですか?」(英語)

「確か私が結婚した前後ですから……」(英語)

 カイ氏が言った時期は、問題の山の崩落の時期と重なった。



 ホテルで今まで得た情報を整理する。

「山の崩落は、ほぼ間違いなくWFに因る物であろう。その前後に拳神と呼ばれる人物と一緒に行動する日本人少女がみられる。問題は、この少女が何でこんな事をしたかだ。今までの例からして何かしらの要因があると考えて良いが、それが全く見えてこない。そもそも、なぜ日本と対応が異なる。日本みたいに山そのものを無かった事にしなかった理由は、何故だ?」

 幾つかの理由は、考えられる。

 一つは、政治的影響力の違いなどだが、そういったものとは、何か違うものを感じた。

 ドアがノックされる。

 俺は、用心しながらドアスコープを見ると飛行機であったあの女性が居た。

『話を良いですか?』

 かなりきな臭いが、ここで情報源を逃す気には、なれなかった。

 俺は、何時でも警察を呼べ、逃げ出す準備をしてからドアを開けて、女性を招きいれた。

 入ってきた女性が会頭一番に忠告してくる。

「これ以上の調査は、我々にとって不利益になります。おやめ下さい」

 ストレートな忠告だ。

「俺は、あくまで山の崩落の調査に来ただけなんだが?」

 前回の引っかかりがここで出てくる。

 この女性いや、その背後の組織は、山の崩落自体をそう大きな問題としていない。

「その原因調査をされるのが困るのです」

「あの娘が何故それをしたかが、あんた達の組織にとってマイナスって事か?」

 俺もストレートに返すと女性の目が鋭くなる。

「あの一件は、決して表に出す訳には、行かないのです」

 WFと関わり出した時から感じるようになった死の香が濃くなる。

 俺が唾を飲む中、女性の携帯がなる。

 驚いた顔をする女性に俺が告げる。

「どうぞ出てください」

 女性は、躊躇していたが携帯に出る。

「はい。いえ、しかし……。態々、貴女様が話す必要は……」(広東語)

 早口なのであまり細かい所までは、聞き取れないが、何か急展開を迎えているみたいだ。

 暫く話した後、不満一杯の顔で女性が携帯を差し出す。

「あの御方が直々に貴方にお話があるそうです。間違っても失礼が無いように」

 予知夢を見る、謎の御方か。

 どんな人間か楽しみだ。

「変わった。あんたの名前は?」

 俺の言葉に女性が睨んでくるが、そんな事を気にしている状況では、無い。

『クダン。その意味は、日本人の方が詳しい筈よ』

 意外と若い少女の声だが、もしかして。

「予言をする件って妖怪の事なのか?」

 苦笑が聞こえてくる。

『そう。私は、家の災厄回避の為の予言をする件。それを教えてくれたのが貴方の追っているあの子だけどね』

 やっぱりあの娘が関わっていたのか。

「しかし、どうして直接話す気になったんだ?」

『貴方をここで始末して公開されてしまう情報があの子にとって不利益になるからよ』

 俺がいざと言う時の保険の事をどうやって調べたのか。

 まさか本当に予知した訳じゃないだろうな。

「そこまでする義理があるって事か?」

『難しい所ね。はっきり家の不利益になるのだったら、間違いなく私は、貴方を始末する事を指示していたわね。でも貴方が求めているのは、あくまであの子が起こした事でしょ?』

 相手の問い掛けに見えないだろうが俺が頷く。

「そちらに不利益になる事は、しないつもりだ」

『それじゃ、事実だけ答えるわね。あの子が山を壊したのは、私の家の事でそこで戦闘があったから。私が日本のあの子にその協力を求めに行っていた。情報操作自体は、私の家が行った。これで貴方の知りたい事が解ったでしょ?』

 概要だけだが、確かに俺の知りたい事は、解った。

「詰まり、俺がその家の事情については、調べなければ良い訳だな?」

『その通り。そっちに関わらなければ質問に答えるわ』

 意外なサービスに色々と考えたが一番の問題点を聞くことにした。

「あんたは、あの娘が怖くないのか? あんなとんでもない破壊力を持った化け物が同じ日本に住んでいると言うだけで俺は、生きた心地は、しないぞ」

 爆笑が返って来た。

『地球上の何処に居たって関係ないわよ。あの力が暴走すれば地球なんてあっという間に消滅してしまうんだから』

 物凄く嫌な汗がにじみ出る。

「随分と誇張するんだな?」

『誇張じゃないわ。山を壊そうとして壊したんじゃない、物のついでで壊れただけ。私の予知夢の中には、家の秘密の為にあの娘に手を出して地球が無くなるのもあった。貴方が考えているレベルより更にとんでもない危険要素。それでも誰も手が出せないのは、あの子の父親が最強の鬼神と呼ばれる存在だから。手を出したら最後、組織ごとこの世から消されてしまうのがハッキリしているからね』

 どんどんとんでも無い事になって行っている気がする。

「……情報感謝する」

 そう口にするのが精一杯だった。

『最後に、忠告。あの子のいくつもある通り名の一つにハードトラブルスターターと言うのがあるわ。とにかく騒動を大きくするのがあの子の特徴。かかわりあわない方が絶対に平穏に生きられるわよ。それじゃあね』

 切れる携帯を女性に返す。

「あの御方は、なんと?」

「あの娘に関わるととんでも無い事になるから係わり合いになるなと忠告してくれた」

 沈痛な表情で答える俺に女性が頷く。

「当然です。あれは、地球最大の騒乱の種です」

「それでも、少しでも知ってしまったんだ。最後まで調べきってやるさ」

 俺の言葉に女性が呆れた顔をする。

「学者とは、因果な生き物ですね」

 俺は、大きなため息を吐く。

「それが自分で選んだ道だから仕方ないさ」



 WFの脅威レベルが上がろうとも俺の調査は、中断される事は、無かった。

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