再会
アルコールランプが二つ点いた薄暗い部屋で、ぽんちゃんとイエティ女はベッドに隣りあわせで腰掛け、固いパンをかじっていた。
先ほどは離れていて良く見えなかったが、イエティ女の乳房はかなり大きいようだ。ぽんちゃんは恐る恐るイエティ女の長い前髪に触れた。イエティ女はそれでも一言も発しないし、慌てた様子もない。ぽんちゃんは思い切ってイエティ女の前髪を左右に大きく割って顔と上半身を露にした。
――あっ。
ぽんちゃんは一瞬我が目を疑った。
イエティ女の左の乳房には、ジャイアントパンダの絵模様のタトゥーがぼんやりとだが彫り込まれていたのだ。乳頭をパンダの鼻に見立ててその上方に黒い目と黒い耳を二つづつ描いて丸で囲んだ、あのいい加減な絵模様だ。女の胸がとても大きく膨らんでいるため、もの凄い『下ぶくれ』のパンダである。
――ぶっ。いえ、笑ってる場合じゃない!
それはまさに、歹徒龍一族に連れ去られタコ部屋で育てられた女たちの共通の証だった。
ぽんちゃんは女の顔を見た。同じくらいの年頃の西洋系の顔立ち。そこにはみるみると懐かしい面影が浮かんできた。
「サリ! あなたでしょ! 私、ミコよ。ミコ! 覚えてるでしょ!」
ぽんちゃんはあの時の『ウイグル語』で叫んだ。そして前をはだけて、パンダの絵模様のある自分の乳房を女にはっきりと見せた。しかし見せてみて少しの後悔を彼女は感じた。
――あれ? サリに完全に負けたよ。くうぅ!
しかし、彼女のパンダも幾分下ぶくれになっていて、それは七~八年の歳月と『女』を感じさせるに充分なものだった。
――だいたい、サリの成長が早すぎるのよ。うん。
女の顔は、はっきりとした驚きの表情になった。
――覚えている! そう、サリが私のこと忘れるなんてこと、あるわけないわ。
しかし、彼女、サリはなお一言も発することはなかった。口は開いたが声が出ない。彼女は何らかの原因で言葉を失っているのだ。しかし、明らかに彼女の記憶にはぽんちゃんが残っていて、何だか嬉しそうな表情にも見える。
「サリ。私、あの時もう一生のお別れかと思ってた。また会えるなんて……。あなた、どうしてたのよう。イエティと一緒になんかいて……」
「ぐうう。ぐうう」とサリがはっきりと頷く。目が輝いている。その大きな目にやがて涙が浮かび、そして頬を一筋つたった。
「ねえ、泣かないでよ。私まで泣いてしまいそう」
――別れてから七年間とちょっと。私も色々あったけど。サリ、あなたの方がもっとずうっと大変だったみたいね。でも、もう大丈夫よ。もう泣かないで、サリ……。
「ぐうう。ぐうう」サリはぽんちゃんに抱き付いて、頭を彼女の胸に埋めてきた。
ぽんちゃんは、今晩、簡単には眠れそうになかった。