↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もこもこ犬  作者: 鑫鑫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/1

第1話 水たまりの虹の筆《みずたまりのにじのふで》

(はげ)しい(あき)(あめ)がようやく()がった()午後(ごご)

るいは、大好(だいす)きな黄色(きいろ)いカッパに(そで)(とお)しました。

フードを(ふく)(かぶ)ると、カサカサと(みみ)(おく)(しず)かな(おと)がします。足元(あしもと)には、お()()りの(あお)長靴(ながぐつ)

くるぶしのところについている(ちい)さな(しろ)いねこのマークが、お()かけが(うれ)しくてたまらないというように、るいの(あし)(うご)きに()わせて(ちい)さく()れました。


パシャ、パシャ、パシャ


()れたあぜ(みち)(ある)くたびに、長靴(ながぐつ)(そこ)(どろ)(みず)()()げて、(たの)しいリズムを(かな)でます。


るいの左手(ひだりて)には、まだ自分(じぶん)では上手(じょうず)にさせない、(おお)きな黄色(きいろ)(かさ)(にぎ)られていました。


ズル、ズル、ズル


(かさ)先端(せんたん)地面(じめん)をずるずると()っていましたが、るいにとっては大切(たいせつ)宝物(たからもの)(つえ)のようでした。


すぐ(ちか)くの生垣(いけがき)では、雨宿(あまやど)りを()えた(ちい)さなスズメが「チュン、チュン」と(はね)(ふる)わせて、るいに挨拶(あいさつ)をしてくれました。

ふと右側(みぎがわ)(おお)きな(いし)()をやると、()れてつやつやと(ひか)(こけ)(うえ)を、カタツムリがのんびりとツノを()ばして(すす)んでいるところでした。

みんな、雨上(あめあ)がりの世界(せかい)(うれ)しくてたまらないのです。


そんなあぜ(みち)()(なか)に、るいの背丈(せたけ)(おな)じくらいの、(おお)きい(おお)きいまぁるい(みず)たまりがありました。

るいは、お散歩(さんぽ)(あし)()めて、その(みず)たまりの(まえ)にしゃがみ()みました。


カッパの(すそ)(どろ)(すこ)(よご)れましたが、そんなことは()になりません。

(みず)たまりの(にご)った(みず)が、時間(じかん)()つにつれてしんと(しず)まり(かえ)り、やがて一枚(いちまい)不思議(ふしぎ)(かがみ)へと()わっていきました。


「……あ」


るいは(ちい)さく(こえ)()らしました。

(みず)たまりの(なか)(のぞ)()んだ瞬間(しゅんかん)、そこには、(いま)見上(みあ)げている(そら)とは(まった)(ちが)う、(しん)じられないほど(うつく)しい景色(けしき)(うつ)()んでいたのです。

現実(げんじつ)(そら)は、(あめ)()がったばかりの灰色(はいいろ)がかった薄曇(うすぐも)りなのに、(みず)たまりの(なか)には、()()めるような(あざ)やかな七色(なないろ)(にじ)(おお)きくアーチを(えが)いていました。

そして、(にじ)()こうには、()たこともない(ふる)くて立派(りっぱ)なペンシル屋根(やね)洋館(ようかん)(あか)りのついた街灯(がいとう)が、(しず)かに(たたず)んでいたのです。


さらに不思議(ふしぎ)なことは、それだけではありませんでした。(みず)たまりの(そら)にぽっかりと()かぶ(しろ)いモコモコとした(くも)が、まるで()きているかのように(うご)いていました。

(しろ)いクマさんかと(おも)って、もう一度(いちど)よく()ると、それは(まる)いお(みみ)尻尾(しっぽ)()った、(おお)きなモコモコした(いぬ)(かたち)をしていたのです。

るいが()(まる)くして水面(みなも)()つめていると、(みず)(なか)(うつ)自分(じぶん)右手(みぎて)()(はい)りました。


カッパの(そで)から()びたその右手(みぎて)は、現実(げんじつ)のるいは(なに)()っていないはずなのに、(みず)たまりの(なか)では、一本(いっぽん)(ほそ)くて(ちい)さな()()くための(ふで)をぎゅっと(にぎ)りしめていたのです。

(みず)たまりの(なか)にだけ(あらわ)れた、ひみつの(ふで)

そのとき、水面(みなも)が「チリ……」と(ちい)さく(ふる)えました。(みず)(なか)のモコモコ(いぬ)(くも)が、(みず)たまりの(なか)からるいを見上(みあ)げて、(やさ)しく尻尾(しっぽ)()ったのです。


るいの(あたま)(なか)に、(すず)()るような心地(ここち)よい(こえ)直接(ちょくせつ)(ひび)いてきました。


『こんにちは、(ちい)さなカッパのお(とも)(だち)(おどろ)かないで。(きみ)右手(みぎて)にあるのはね、(そら)(にじ)をすくい()ることができる、特別(とくべつ)(にじ)(ふで)なんだよ』


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。