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とんでも魔王メモリアル~真実の愛を探せと言われ相手のステータスが見えるのに恋愛無双できないのだが~

作者: 角ころ
掲載日:2026/01/31

 我は魔王。勇者との戦いで相打ちとなり死んでしまった。

 しかし私は別の世界に転生した。そして神にこう言われた。

『この世界で真実の愛を見つけたら、前の世界に再転生させてあげてもいいよ』

 ならばやるしかないだろう。やってやる。真実の愛とやらを見つけてやる。


「たけしー、起きないと遅れるよー」

 ガラガラ

「いつまで寝てるの! 早くご飯食べて学校に行きなさい」

 のそのそと起きる魔王。

「誰だ、貴様は。我は魔王クロノスだ」

「は? 魔王? もうお父さん、何か言ってやってよ」

「はっはっは、たけし、今日から高校生だから中二病はほどほどにしとけよ」

「高校生? 何だ、それは。我は真実の愛を見つけねばならんのだ」

「そうか、真実の愛なら高校に行けばきっと見つかるぞ」

「それは本当か? ならばこうしてはいられない、すぐに行くぞ」

「ちょっとあんた、ご飯食べていきなさいよ。それから学生服」

 クロノスは言われるままに用意された食事をかき込んだ。

「うまい!」何だ、この食べ物は、こんなうまいものは食ったことがない。

「それから学生服とは何だ?」

「ああ、魔王軍の制服みたいなもんだ」父親が言った。

「なるほど、では着て行こう」


 母親に遅刻するから急いで学校へ行けと言われたので走って向かっていると、曲がり角で急に現れた女の子とぶつかりそうになる。

 しかしすんでのところで鮮やかにかわすことに成功する。

 俺じゃなければぶつかっちゃうね。

 避けたにもかかわらず女の子はその場でつまずいて転んでしまう。

「ちょっと、あんたのせいで転んじゃったじゃない。どうしてくれんのよ」

 よく見ると膝をすりむいている。

「見せてみろ、ここだな〈ヒール〉」しかし何も起こらなかった。

「あ……、やっぱいいわ」女の子はそそくさとどこかに行ってしまった。

 その女の子のステータスが目に入り、スキスキメーターの数字が五十から三十に減っていた。

「なんだ、このスキスキメーターというのは。よくわからんな」


 校門を通り教室へ向かう。たしか五組だと言っていたな。

「あのー、もしかしてクロノス様ですか?」

「何故我を知っている。貴様何者だ」

「ケイロンです。魔王であるあなた様の配下でした。ああ、よかったこんなところであえるなんて」

「ほう、ケイロンか……、知らんな」

 ずっこけるケイロン。

「そんなわけないですよ! 毎日顔を合わせていたんですから」

「そうか、すまんすまん。ところで何故私が魔王だとわかった?」

「それは大きな魔力が見えたからです。目を凝らしてみれば見えます」

 目を凝らして辺りを見回すクロノス。

「何も見えんな」

「私を見てください。私を!」

 振り返りケイロン見ると、大量の魔力に覆われているのが見える。

「おお、本当に見えるぞ」

「はい、それで魔王様を見てもしやと思って声をかけました」

「なるほど、で、この魔力は何に使うのだ? 魔法は使えなかったぞ」

「……もしかしたらスキルは使えるかもしれません」

「スキルかそれは試していなかったな。早速試してみよう。はあああ、ハアアーー」

 大声を出したので周りの生徒が何事かとこちらを向いてくる。

『ベイビー』

「ん、何か渡されたスマートフォンというものから音がしたぞ」

「音からすると電子マネーか何かですかね」

「このベイビーアプリというやつか」

 アプリをタップする。

「クロノス様! 残高九百九十九億円になってますよ!」

「はっはっは、私はスキルで巨万の富を得たというわけか。ふん、悪くない」

「あ、ちょっと待ってください。一日の使用上限が一万円になってます……」

「それはどういうことだ?」

「一生かかっても使いきれないということです……」

「まあいい、帰りにでも使ってみるか。そういえばケイロン。お前はこちらの世界で何と呼ばれている?」

「田中太郎です」

「私は鈴木武だ。今後この世界の人間どもと会話するときは、お互いその名前で呼び合うとしよう」

「はい、わかりました」


 入学式が終わり、教室でそれぞれの自己紹介が始まる。同じクラスの前方にもう一人大きな魔力を持った男子生徒がいた。

「あいつは何者だ。だが素性が知れぬ以上うかつに接触するのはまずいか」

 クロノスは小声で独り言を言った。

 クロノスの番となり魔王などとは名乗ることなく普通に自己紹介をした。

 すると約半数いる女子生徒のスキスキメーターが三十から八十の間でそれぞれ数値を示していた。

「私の端正な顔立ちとイケボにかかれば造作もないことだ。早速放課後に八十の数値の女子生徒を落としにかかるとしようか」


 放課後

「伊藤さん、バウバウモグラ、俺も好きなんだよねー」

 伊藤とはスキスキメーター八十の女だ。

「え、そうなの? 嬉しい!」

「今度イベントがあるみたいなんだけど、よかったら――」

「武、おい武!」

「何だよ、今取り込み中だ!」

 振り向いたところに例の大きな魔力を持った男子生徒が立っていた。

「お前のその魔力。ただものじゃないな」その男子生徒が言った。

「何! なぜそれを」

「俺は勇者テセウスだ。お前は魔王クロノスではないのか?」

「ふん、だったらどうする」

「正直に言っちゃうのはまずいですよ……」ケイロンが言った。

「やはりそうか! ここであったが百年目。今度こそ確実に打ち取らせてもらう!」

「二百五十年生きている我にいう言葉ではないな。だがいいだろう。こちらの手間も省けたというものだ」

「いでよ、聖剣エクスカリバー!」テセウスが言ったが何も起こらなかった。

「はっはっは、聖剣に見放されたか。我が本物を見せてやろう。魔槍グングニール!」

 しかし何も起こらなかった。

「何! 〈ファイアインフェルノ〉〈アブソリュート・ゼロ〉〈ケラウノスの一撃〉」

 次々と魔法を唱えるが何も起こらない。テセウスも何かのスキルを試みていたようだが何一つ成功していない。


 近くの駐車場にて

「そういえばそろそろ充電しないといけなかったっけ。あ、あれ充電が満タンになってる。なんでだろう?」


 教室に戻る

「はあはあはあ、何故だ、何故、何も起こらない」

 放課後で人は減っていたが、その場にいる生徒全員が口を開けた状態でクロノスとテセウスを見て呆然としていた。

「くそう! こうなったら最終手段。肉弾戦だ!」

 クロノスのグーパンチがテセウスの顔面に命中し、吹き飛ぶ。

「やりやがったな! やってやるよ!」

 テセウスも本気になった。

 ボコスカ、ボコスカ、ボコスカ。

 見かねた他の生徒が先生を呼んで、複数人で止める。

 喧嘩両成敗。クロノス、テセウス、停学一週間。チーン。


 クロノスの波乱万丈な学園生活は始まったばかりだ。

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