届くファンレター
僕は、ペンタというアイドルグループのアイ(藍上音葉)にファンレターを送った。
自分以外に関心がなかった僕が、自分から、知らない人にコミュニケーションとる、
併せて、手紙を読んでもらいたい、人に行動を期待する。
人生の中で革命的な変化を成し遂げた。
「これは普通の人にとっては平凡な一歩だが、秋田健一にとっては偉大な飛躍である。」
スタジオの鏡張りの壁に、熱心に練習するアイドルグループ、ペンタの5人の姿が映っている。
リズムに合わせてビートが鳴り響き、5人は息を合わせた動きを繰り返しながら振付を磨いている。
中央のリーダー、ソラ( 青空 美咲)が「もう一度!」と声をかけると、全員が一斉に体勢を整え、最初のポーズに戻る。「アイ、スマイル忘れないで!」額には汗がにじみ、呼吸は少し荒い。それでも、誰も諦める様子はない。音楽が流れると、再び足を踏み出し、腕をしなやかに動かしながら、まるで一つの生き物のように踊る。
鏡越しに見える彼らの目は真剣そのもの。失敗してもすぐに修正し、何度も同じ動きを繰り返して完璧を追求する。メンバー同士でアイコンタクトを取りながら、お互いを励まし合う。
最後のキメポーズが決まると、一瞬の静寂が訪れる。次の瞬間、スタジオ内に「よし!」「完璧だ!」という声が響き、アイも満面の笑顔になり、みんなで笑顔を交わしながらハイタッチをする。厳しい練習の中にも、仲間との信頼と喜びが満ちていた。
その時、アイの横にマネージャのミサキが近づいてきた。
「最後の笑顔よかったよ。
アイは真面目だから、ダンスも完璧にしようとして頑張っているのも、いい事だと思う。
でも、ペンタは笑顔と元気で、エンターテイメントの価値を高めるグループだから、途中ももうちょっと、笑顔を持ってくれると嬉しいな。」
うわー、やっぱり言われちゃった。。。アイがうつむいていると、横からソラがやってきた。
「あんまり気にしなくていいよ。ええと、失敗すること。
アイは真面目過ぎるから、失敗しちゃいけないって気持ちが強くて、表情に出ちゃうんだよね。
もっと、気楽でいいよ♪」
ソラはセンターでいつもみんなを緊張させないように気を配ってくれている。
ありがたいことだが、、、緊張しちゃダメって言われると。。。。
「緊張しなくっていいって言われると、余計緊張するんだよね。」
メインボーカルのハナ( 花野 結衣)が話に入ってきて、つづけた。
「私は、今のダンスの失敗より、次の歌の事を意識してるから、緊張する部分が分散できると思ってる。」
それは、ハナちゃんに歌と言う武器があるからで、、、、
すると、ダンススペシャリストのレイ(尾崎玲奈)躍るようにやってきた。
「目標が低いと緊張する。
私はいつも、今よりいいダンスにするかを考えて、目標にする。
だから、目標を追いかけられる。
最低限が目標なら、目標に追いかけられて、苦しくだけ。」
レイさん、ごもっともです。
私に足りないのは、いいダンスを目指す余裕すらないのです。。。。
「アーシも参加しないとだめだよね~」
いつも、みんなを盛り上げてくれる、ミオ( 山口澪音)だ。
「アイって、頭がいいから、すごいスピードで頭考えながら踊ってると思う。
手をこう、足をこう、とかカンペキなイメージを考えてる感じ~。
アーシ、バカだから、だいたいこうってポーズをやって、練習する度により身体・腕・足・手・指先って意識を広げていく感じ~。
目標低いから、振り付け完成するまで時間かかるけど、いつもうまくできてる気分だから、笑顔だよ。」
もう、目標高くしろって言ったり、低くしろって言ったり。
どっちよー!
その時、スタジオに封筒を持ったスタッフが入ってきて、マネージャのミサキに手渡した。
「みんなー!ペンタに初めてファンレターが届きました。」ミサキの声が響いた。
「アイ宛てよ。」
SNSのコメントは伸びてなかったし、ダンスも苦労しているからへこんでたけど、応援してくれる人がいる。うれしい気持ちになった。
封筒には、送り主の名前、秋田健一と書いてある。
恐る恐る封筒を開き、手紙を読んだ。
メンバーみんなが、覗き込んでくる。
15歳、年下ね~
兵庫県ってどこだっけ?
硬いわね~、きっと、すごく緊張して書いてくれたんだ、カワイイ♪
自己肯定感が低いわね。アイがフォローするのよ。
真剣な表情がいいんだって~
私たちの動画は二番目だって。一番にしてやろうじゃない。
皆、ワイワイ好き勝手なことを言っている。
読み終わった後に、ミサキに手紙を見せた。
「今のお前を全肯定じゃないか。よかったな、アイ。
ファンレター第一号、しっかり返事書くんだぞ。
さっき、みんなでアイを笑顔にする方法を考えたのに、笑顔じゃない応援が届くか。。。
面白いな♪」
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アイは手紙をもって、自宅に帰った。
今の15歳男子ってどういうことに喜ぶんだろう?
いや、そんな年齢ごとに分類して、無難な返事を送るのは失礼よね。
秋田健一君はどんな人なんだろう?
15歳、高校生かな?
返事。。。。
何を書けばいいんだろう。。。。
15歳って妹の京香と同い年か、、、健一さんより、健一君の方がいいかな。。
事務的な白い封筒に入った、白い便箋。
「僕は、いつも何かやろうとしても、うまくできない人間です。」って自分に嫌なのかな?
ダイレクトに聞いてみる?
でも、相談のために送ってきているわけじゃなくて、私を元気づけるために、自分の事を言って元気づけてくれてて、本当は大したことないよね。
まず、当たり障りない返事を書こう。
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ファンレターを送ってくださって、本当にありがとうございます。
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「僕は、いつも何かやろうとしても、うまくできない人間です。」の部分が引っ掛かったが、、、、スルーしてしまった。
いや、触れないと決めたのが。
アイは手紙を書き終えた。