FILE:49 ―― リベンジャー
――埴と桃田の静かな攻防は続く。
「アスレチックは君の警官隊で潰されて、ゾンビ対策チームは僕のアスレチックで潰した。それで次は? 」
「上手いこといかんもんやなぁ」
「だよねぇ」
埴は腕を組んで、「分かる分かる」とでも言うようにわざとらしくうなずく。すると。
「あ、思い出した」
「なんや」
「アビスにもう一つ指示出してたんだ。伊形の組長殺した後、息子も殺せって」
その発言を受けて、桃田は一瞬ぎょっとしたが、それでも何か閃きそうに呟く。
「あー……そうなんや。そうか、いや……そうか」
「どうしたの」
「いやなに、鉞を殺したアビスを、えげつない女ヤクザが狙ってるハズなんや……運が良ければアビスもソイツもここに来るかなぁって」
「何でアビスがここに? 息子はいないのに」
「向かわせてんねん。息子もここに」
「君、それ……なんで? 」
――アビスは東京を縦横無尽に疾駆する。
目的は、事前に中室より指示を受けていた、鉞ともう一人、コウジを抹殺すること。
同時に、コウジや左門たちは皇居に向かう。左門もまた、鉞を殺したアビスがコウジを狙うと直感していた。
そんな中、最も早くアビスと接敵したのは、最も遅くこの街にやってきた男だった。
「アドニス気をつけろーッ! 」
常軌を逸した速さで移動するアビスと、鷹邑の運転するキャンピングカーの並走。アビスは車を気にも留めていないが、鷹邑からしてみればそうもいかない。
「(ここで仕留めるか……!? )」
彼の思考に選択肢が渦巻く。そもそも、挑んだところで勝てるのか? 人生は一度しかない。その命を賭けるべきは、果たしてこの場所なのだろうか?
「もちろん賭けるねェエーッ!! 」
アドレナリン全開のチャンピオンに躊躇はなかった。
鷹邑は時速八十キロで並走するアビスの横からキャンピングカーを衝突け、歩道沿いのカフェまで吹き飛ばす。
アビスは倒壊したカフェから飛び出ると、標的を鷹邑に移した。
「来るなら来いよデカブツ! 」
「バウッ! 」
アビスは即座に追いついてキャンピングカーの後部に取り付き、後部ドアを剥がして車内の一人と一匹を視認する。
「はえぇよ馬鹿ッ! 」
鷹邑は爆走する車のドアを開け、アドニスを抱いて飛び出す。さんざん傷を負いながら転がりつつ、なんとか懐からリモコンを出してスイッチを押す。
「くたばれ! 」
遠くのキャンピングカーが木っ端微塵に爆発。轟音に噴煙が立ちのぼり、衝撃波で鷹邑とアドニスの毛がなびいた。
「公孝に貰ったリモコン爆弾が早くも役に……あれ? 」
このアビスは超再生の能力を持つ。たとえ爆発に遭ったとしても、脳と全身のうち三十パーセント以上の体細胞が接続されていれば、そこを起点に再生が始まる。
つまり、脳を粉微塵にしない限りは、このアビスは永遠に再生し続ける。
相手にとって不足なし。次回へ続く。




