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Abyssers  作者: Higasayama
Abyssers Season.1
41/56

FILE:41 ―― 暗中会議

 ―― 時は遡り、開戦四日前。

 チーム通天閣の桃田、ミク、斧見、井上の四人は、伊形組事務所の向かいにある雑居ビルに軟禁されていた。他のメンバーは皆近くの避難所に移されている。

「で、揃って拉致されて今に至るわけや」

「やっぱヤクザはクソでござるね! 」

「下手なこと言うな。盗聴されてんだぞ」

「とっ盗聴……!? 」

「何で知らねえんだよ。説明されたろ」

「それはさておき。桃田さんがどのように伊形に協力されるのか、お聞かせくださいますか? 」

「ミクちゃんはほんまにもう……とりあえず、説明していくわ」

「頼むぜ」

「ワクワクするでござる」

「お願いします」

「まずは、高速から来とるゾンビについてや。

 コイツら、今までバレんように大群で隠れてたクセして、なんで今、()()()()()()()()()()()()()()東京に来んねん? 」

「確かに……言われてみれば」斧見がこめかみをかく。

「数は空撮でちゃんと数えたらしいし、野良ゾンビの動きにしてはあまりにも不自然やろ? 」

「そうでござるね」

「進路も不自然や。東京に西の高速から入った場合と、北の埼玉側から入った場合。主要な地区に近いんは断然北や。

 ボクがゾンビの大将なら、西からツッコまずに下道通って奥多摩から抜けて埼玉に渡ってから、最短で新宿とかを荒らしに行く道をとる。高速封鎖されたりもせんしな」

「そこまでの知性がない可能性もござるよね? 」

「念のため、その大将はもっとキレると仮定したほうがええ。アホなら高速で叩いて終いや」

「では、本命は爆破予告の日に北からやって来るということですか? 」ミクが口を挟む。

「ボクならそうするって話や」

「でも、でもでござるよ? 爆破が絶対当日にされるなんて、埴を信用し過ぎでは? 」

「爆破だけが目的なら、今までさんざん予告無しにやってきとる。今回だけ違うのは、特定の日にせなアカン理由があるからや」

「例えば、何だ? 」

「メディアや。『この日に凄いことするんで見に来てください』って言っとけば、センセーショナルな映像が世界中に拡散される」

「ってことはよ? 止めるべきはその爆破と、二〇〇〇の群れと、北からの何かと、アンモラルの本隊、ってことか? 」

「無理ゲーやね」

「絶望的でござるねぇ」

「けどソイツらの狙いをまとめて叩けんのは今回だけ。ピンチはチャンスとはよう言うたもんやわ」

「全国から味方が集まってるのも今回だけでござるもんね。例のゾンビなんちゃらかんちゃら部隊とか」

「そやで。戦力が限られてるから、大事なのはこっちの人員を最適な所に置くことや。その為には情報が…………あ、誰や? 」

 作戦会議へ突如割って入ってきたのは、警官の制服をまとった馳芝 茉生だった。部屋に入るやいなや警察手帳をかざす。

「警官の馳芝だ。伊形組から、持っている情報は全て桃田という男に共有しろと言われてやって来た。大切な情報が一つある」

 桃田はニヤりと笑って、手招きする仕草をとった。

「座り。待ってたで」

 ――時はさらに遡り、その前日。

 ゾンビ災害独立対策班、作戦会議室。

 隊員全七名が一堂に会している。

 隊長の森は、沈痛な面持ちで作戦行動を告げた。

「今しがた、迫る件の大群二〇〇〇を、我らだけで抑えろとの命が下った」

 一同、疑問符を浮かべる。七名でそんな数を相手取れるものなら、とうにやっている。上は何を言っているのだろう、と。

「不可能では? 」公孝が真っ先に発言した。

「じゃあ命令無視せぇ言うんかい」武闘派の村木は、既に隊長の判断を支持している。

「いいえ。ただ、都内のゾンビは無視するのでしょうか」

「隊は二つに分ける」

「ただでさえ少ない隊をさらに分けると? 」

「そうだ。高速でゾンビを迎撃するのは、私、村木、川瀬の三名だ。残り四名は、ヘリを駆って都内の特異種を掃討する」

「いくら森さんの命令であっても、それは……」

「これは警視総監の命令だ」

 村木と川瀬が同時に机を蹴り飛ばした。

「そんな命令蹴りましょうや! 」

「そうだ! 命より大事な命令なんて無いぜ! 」

「それが有るんだ。命より大事な命令が。

 いいか……これが警察で、社会で、戦争だ。力を持つとはこういうことだ。今回は、私が責任を持って皆の命を預かる。もしもの時は、私だけ置いて撤退することも許可する」

「アナタらしくない。森隊長」

「そうだ。マトモじゃねえ」

「ホントにな」

 そして、森が天井を仰いで呟いた。

「……この国には、もう我々くらいしかいないんだよ」

 七名の無音の慟哭がこだまする会議室。

 彼らの肩に、都民の命の重圧がかかる。





会議は踊らず、されど。次回へ続く。

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