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Abyssers  作者: Higasayama
Abyssers Season.1
27/56

FILE:27 ―― おはようございます死ね。

「あれがアビスってヤツか」

「久々に武者震いがしてくる」

 ほうぼうから反撃の狼煙があがる。

「撃て! 」

「全弾撃っても構わん! 」

「ここで倒せ! 」

 男たちは、四方八方から小銃を連射した。アビスは蜂の巣になり、皮膚が弾け筋肉を穿たれるも、それ以上に回復力が勝り、またたく間に治っていく。

 アビスの広背の左腕が車のサイドミラーを外すと、男の一人に向けて投擲した。

「あッ」

 水切りのように放られたミラーは、深々と男の胸を打った。刺さりこそしなかったが、胸骨が粉砕、砕けた骨は肺にまで届き吐血する。

 銃が効かないことを察した何人かは、仲間を置いて車で逃げだす。取り残された連中も、脱兎のように背を向けてちりぢりになった。

 左門も、万が一を想定してウォッチドッグスへ急報を入れる。

「こちら左門。アビス出現。至急応援を頼む。アサルトライフルは効かない。それ以上の火力を要請する」

『こちらウォッチドッグス、了解。応援を向かわせる』

 その場に残るは鷹邑達のみ。

 アビスは、ゆっくりと、二人のもとへ近づいてくる。

 なぜ二人が逃げなかったのか。理由は明白。

「本気で蹴ってやる」

「加減無用」

 鷹邑は首を鳴らし、左門もその場で足首や手首を回して準備する。根っからの戦闘者(プレイヤー)体質の二人が、これしきのことで逃げ惑うことはありえない。

「オ前タ血はニゲ無ゐの禍? 」

 アビスはまだ離れたところから、歪な人語で問いかけた。 

「喋れるのか? 賢いヤツ」

「私たちの邪魔さえしなければな」

 アビスは立ち幅とびの要領で数十メートル跳躍。二人の眼前に立ち塞がる。

「左二本をやれ」

「応」

 電光石火、アビスの左腕ストレート一閃。反射のみで顔を左へ逸らして回避するも、耳に擦れて火傷のようにヒリついた。

 続けて背中側の左腕も手刀で鷹邑の額を突かんとする。それは上体を屈めてかわしつつ、右脚での前蹴りを膝関節へ入れた。

 鷹邑が左腕の攻撃を受けているのと同時、左門もまた右腕の猛攻を受ける。

「ボクシングか」

 右腕の二本は、隙のないフックやジャブによって駆け引きを仕掛けてくる。左門はステップや、正中を切っていなす。もしこれをガードしたとしても、まともに受ければ腕の骨など粉々になるのが分かった。

 鷹邑の前蹴りで膝関節が逆向きにひしゃげ、アビスの身体が傾く。彼女は好機を逃さない。

「この隙ッ! 」

 弧を描くような、あまりにも鮮やかな空中回し蹴り。

 体勢が低くなったアビスの頚椎に、左門の足の甲がドンピシャで掛かり、刈り取るような形で蹴り抜かれる。

 見事アビスの首がフクロウのように真逆へ曲がったが、まだ倒れない。

 その頭に、鷹邑が左門の頭上を越えて左のハイキックを後頭部へ捩じこむ。クラッカーのような破裂音とともに、曲がっていた首がもう半回転し、次は首の骨がキリリと軋んだ音が聞こえた。

 それでも、アビスからの反撃の膝蹴りが鷹邑を狙う。彼はそれを受け流すも、さらに左腕がストレートを重ねて打ってくる。

「がァッ!? 」

 対応しきれず、拳は鷹邑の右肩を直撃。

「肩、外れた……」

「自力で治せ! 」

「分かってらァッ! 」

 鷹邑はアビスと距離をとってから、カポっという音を立てて肩をハメた。

「快調ォーッ! 」

「その意気だ! 」

 左門は乱打をかいくぐり、股下へスライディングして後ろをとる。だが。

「……面妖だな。こちらにも目がある」

 アビスの後頭部にも二つ、充血し黄ばんだ目が見開かれてあり左門を凝視していた。口や鼻は無い。それから、背中側の腕が根本から捻転し、左門と正面から対峙するようにファイティングポーズをとってくる。

「それしきの真似事で…………おい、鷹邑右へ避けろッ!! 」

 二人は左右へ散開。

「起こすなっつったろうがァァアアッッ!! 」

 アビスへ向け、正面からキャンピングカーが激突した。





目覚め最悪、少年暴走。次回へ続く。

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