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Abyssers  作者: Higasayama
Abyssers Season.1
21/56

FILE:21 ―― 決戦を構想しませんか

「あとは私から説明する」

 鉞の後ろにすっぽりと隠れていた五月雨が、彼の後ろから顔をだす。

「これから、ヤクザとか自警団みたいな組織とアンモラルは戦争になる。

 連中は鬼畜だから、正面からやりあおうとすれば、水道を潰されたりガソリンを使われたり、そういう奇襲で殺されるかもしれない。

 となれば、一箇所に戦力を集めておくのは危険。そもそも、それじゃ敵の大将首は――」

「なぁ、待て」馳芝が割って入った。

「いつから我々は暴力団の傘下に入った? 他はともかく、私が貴様らと組むことはありえん」

「ですって、左門」

「ふん。腐っても警察だな」

 霧雨と左門の嘲笑。

()れた口を訊くなよ。チンピラども」

 馳芝がホルスターから二丁の拳銃を抜く。霧雨と五月雨も、彼女を挟むように銃を突きつけた。

「騒々しい。下げろ」

 鉞が制する。三人はお互いに様子を見合うように、静かに銃をしまった。

「五月雨。続きを」左門が促す。

「えぇ。

 調査の結果、アンモラルは埴っていうリーダーのカリスマで成立してるみたい」

「リーダーを討てば自ずと瓦解すると? 」荷稲が口を挟んだ。

「可能性は高いわ。瓦解までいかなくても、組織的な活動は難しくなると思う。

 それで、アンモラルの動きを読むためにも、伊形組事務所には一定数の人間は置いておきたいわけ。囮としてね」

「ここには俺が残る」鉞が言う。

「裏社会でも名の知れたボスが残れば、アンモラルは必ずここを標的にする。だから、そこを狙う」

「具体的に、どうやって戦うんですか? 」柄木が質問した。

「奇襲よ。左門たちには各地に散った組員や、組に協力する人員を集めてもらいつつ、アンモラルの集団の背後に回ってもらう」

 柄木は飯島の方を見て、「俺は質問してやったぞ、どうだ」とドヤ顔をキめた。

「この奇襲が成功すれば、全滅や大ダメージを避けつつ、効果的な一撃が期待できるわ」

「で、聞かせてもらうが」鷹邑が重い腰をあげた。

「なんでそのチームメンバーなんだ」

「コウジ様とボスを一緒にしておくわけにはいかない。組の頭が二人揃って同じ場所にいるのは危険だからね。

 で、コウジ様には護衛が必要。護衛には、道中で仲間を増やせるコミュニケーション能力も必要。左門だけでは後者が心もとない。

 で、ある程度名が知れてて、かつ左門に殺されない人間となればアナタしかいない」

「よーく分かった。けど俺はマイペースだぜ。人と歩調を合わすのが嫌いなんだ。いざとなれば伊形組なんてどうでもよくなるかもしれないぞ」

「大丈夫よ。コウジ様と左門から、アンタの話を聞いたわ。アンタは逃げないヤツよ」

 鷹邑は黙りこくって、足元で尻尾を振るアドニスを見下ろす。「当の左門はいいのかよ」

「私はボスの命令に従うまでだ」

 鷹邑は訝しんだが、内心はなんだか安心していた。味方としてこれほど心強い奴はいない。

「ま、面白そうだしやってやるよ。報酬は? 」

 鷹邑は冗談半分で鉞にふっかけた。

 鉞は口角をあげる。

「左門をくれてやる」

 フロアがざわめいた。馳芝は顔をしかめ、シャビと霧雨は、左門と鉞を交互に二度ずつ見た。

「おいボス冗談か? 」

「冗談よね? ね? 」

「黙らんかい餓鬼ども」

 シャビと霧雨は子どものように口をとじる。

「コー君の護衛にキックボクシングのチャンプがつく。良いガードだ。それから、この国じゃ金はもう機能してねェ。あとは女だろうが」

「だ、だからって、左門の都合もあるでしょうし、ね? 左門、たまにはボスに何か言ってもいいのよ」

 霧雨が特に焦っていたが、左門は表情を変えない。変えないまま、ぶっきらぼうに告げる。

「霧雨。我々の存亡がかかっている。男の一人や二人、殺せば約束は反故(ほご)にできる」

 鉞は手を叩いた。

「左門。それでこそだ」

 鷹邑も乗り気になってくる。

「報酬はさておき、考えは面白ぇから引き受けてやるよ……で、さっきから疑問だったんだが」

 一同が「やっとツッコむか? 」という顔で鷹邑を見る。

「アンタ、息子のことコー君って呼んでんのか」

 一同、鉞を見る。

 鉞は、三拍空けて、照れくさそうに鼻をさすると、こう言った。

「俺は、家族が大好きだからな」





それは意外にも家族愛。次回へ続く。

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