FILE:18 ―― しようよこれからの話
次なるクライマックスへ向けての情報整理回。
命からがらに組事務所へたどり着いた一行。
事務所オフィスにて。
これから始まるのは、情報整理も兼ねた生存戦略会議である。
ホワイトボードの前に、指示棒を持ったシャビが立つ。「えー、おほんおほん、うふんうふん」
左門や五月雨は出払っているため、会議に参加するのは体育館のメンツと変わらない。面々は、椅子を勝手に使ったり、ホワイトボードの前の床に座ったりした。
「じゃ、始めるぞ。俺がファシリテーターだ」
「偉そうにしないで」霧雨が野次る。
「黙らっしゃい。とにかく、最初に日本の現状をまとめるぞ」
小さな拍手。
「知ってのとおりこの国は、ゾンビの出現によって壊滅状態だ。そんな状態なのは、先進国でいえば日本だけ」
「なんで日本だけなんですか? 」飯島の質問。
「ゾンビが出てきたとき、ほとんどの国は武力や核を使った。さらにアメリカなんかは国民が銃を持ってるから、それで自衛ができたのさ。それに比べて、日本じゃ対応が後手後手になった。
結果、数千万体のゾンビによって警察と自衛隊はてんやわんや。治安維持能力も失って今に至る」
そこへ霧雨が補足する。
「そのおかげで、それこそ私たちみたいなヤクザが動きやすくなった。
海上保安も機能してないから、密漁でも密猟でも密航でも、やりたい放題ってわけ」
「隣国の動向は? 」荷稲が訊く。
「チャイニーズマフィア、北朝鮮スパイ、ロシアの諜報部隊……もう日本人より密入国者を数えたほうが早いわね」
シャビが指示棒でホワイトボードを叩いて言う。「ただ、うん千万のゾンビがいるってことは、よその奴らにとってもそんだけの敵がいるってことだ。この流れで、次にゾンビの種類について説明する」。ホワイトボードには、とくに何も書かれてはいない。
「普通のゾンビ以外にもいるんですか? 」
金属バットを拭きながら柄木が首をかしげた。
「いる。数が多いってことは、突然変異体が生まれる確率も上がるってことだからな。
ゾンビにはざっくり分けて四種類。
ノーマル・アスレチック・ジーニアス・アビスだ」
フロアの片隅で、アドニスを撫でる鷹邑。
「突然変異か知らんけども、べらぼうにデカい奴とは戦ったことがあるな」
「それは多分アスレチックだ。アスリートみたいなフィジカルギフテッドがゾンビ化したら、その身体能力を維持したままゾンビになるケースがある。
ジーニアスはその頭バージョン。天才がゾンビになりゃ、天才のゾンビが生まれることがある。
このジーニアスは特にタチが悪い。群れを作るし、放火するし、武器も使えば人に紛れることさえある。風の噂じゃ、言語を理解してコンピュータまで使うらしい」
「人間じゃねえか」鷹邑は目を覆う。
「元、な」シャビが肩をすくめてみせた。
「じゃあ、アビスってなんだ? 」
「よくぞ聞いてくれた。それはな――」
次回へ続く。