巻き込まれて異世界に来てしまったけど、聖女とか関係ないのでのんびりします。
39.
畑の野菜を収穫して、美奈が小屋に持って行く分を籠に分けていると、街に行っていたネコが面白おかしく話しを始めた。
〈ただいまぁ~~~。もう、王城下では第一バカ皇子と、女ギツネ聖女の話しで持ちきりだったよぉっ。黙っていても、どこからか話が漏れてしまっていて、ロイが大変そうだったよっ。〉
「第一バカ皇子がサルになって、戻れないからでしょ。まさか、一緒に来た女の子まで戻らないなんてねぇ。」
第一皇子と聖女がサルになってから、5日目。まだまだ戻りそうにない2人に、国王と王妃も決定を下そうと、毎日会議を開いている様子だった。その会議に、ロイも出席していて。流石に疲れが見えてきているから、休ませた方が良いと宰相たちからも話が出ている。とネコは話した。
「そうなんだ。やっぱり、ロイが大変になっちゃったよねぇ。休むのは良いけど、どこで休むかだよねぇ。」
〈そうだな。避暑地に行ったら、行ったで。まだ婚約者も決まっていないから。ロイの周りに公爵令嬢たちがまとわりつくだろう。〉
「それじゃあ、休みになんないよね?」
〈王族と云うよりも、貴族と云うモノはそういうものよ。周りの国では、幼きときに婚約者を決めるのだが。スペード公国だけは、そう云うのはいつでも良いといった感じであるからな。いまの国王も王妃と婚約をしたのは、22~23の時だったしな。〉
「そうなんだ? じゃあ、ロイもそろそろお嫁さん候補がいてもおかしくないよねぇ? ロイは性格も見た目も良いから。お嬢さんたちが放っておかないよぉ。」
野菜を洗って話す美奈を見て、リルとネコは眼を細める。ドランも、眼を細めて見ていた。
〈・・・・・ロイは昔からもててたけど。ダイヤとハートの国から婚約の打診もいまだにきているしね。〉
〈そうだな。しかし、あのバカが廃嫡もしくは皇子のままであるのであれば。ロイが王太子として立太子するであろうから。そうなると、国内外から、歳の近い令嬢たちからの婚約申込状が届くであろう。〉
〈視ている限り、ロイほど国王にふさわしい者はいないと、我れも思う。〉
ネコ・リル・ドランと話しをしつつ、野菜を洗う美奈をちらちらと見る。美奈は、そうなんだぁ。とまるで母親のように、聴いていた。
それから、美奈が設定した日が過ぎても、第一皇子と聖女はサルのままで。流石に、美奈はどうしたんだろう? と思っていた。
「おっかしいなぁ。1週間で元に戻るようにしたはずなんだけど。元に戻ってないって。」
いつものように、野菜を収穫して洗い美奈は、リルとドランに話す。リルは理由が解かっていたので、答えなかった。
〈どこかで、なにかが手を加えたのか。もしくは、反省していないから戻れないから。とかではないか。〉
「反省していないって・・・・・。それはそれで、サル以下だから。サルでも反省するのに。」
トマトを洗い、ドランの前に出す。ドランはトマトを齧った。
〈サルのままでも良いんじゃないかって、王室で話しも出ているみたいだにゃあっ。サルのままで、どこで飼うのか話し合い中だにゃあっ。〉
もうペット扱いの2人に少しばかり、同情をしつつも。美奈は云う。
「まっ、戻れないなら戻れないで。それは自己責任って云うことで。でも、それでロイが忙しくなりすぎて、会えないのは寂しいねぇ~~~・・・・・・。」
なんだかしんみりとする美奈を見て、リルたちは集まっていた。
一方、そのロイは執務室で、すでに6徹というとんでもないことになってしまっていて。ヤンが少しでも休んで欲しいと、文官も巻き込んで処理をしているのだが。ヤンも5徹というもうすでに、2人とも限界に達そうとしていた。
「・・・・・・ろ、ロイ殿下とヤン殿のお顔が・・・・。」
「やたらとお2人とも美形だから、やつれた姿も美しすぎる・・・・。」
「いやいや。いま、あのお2人に倒れられてしまっては、公務がすべて滞り、止まってしまうぞ。」
文官たちが、ひそひそと話し合っていると、ロイの手が止まった。
「・・・・・・・・・ヤン。」
「はい、殿下。」
「もう限界なんだが。」
「も、もう少しだけ。こ、この書類だけは・・・・!!」
ヤンがどうにか書類を選び、ロイの前に置く。文官たちは、ロイとヤンを見てはヒヤヒヤとしていたが。
そこに、大きな影が窓を覆い、文官たちが気付いた時には、ロイとヤンの姿はなかった。
ドラゴンの背中に乗ったロイとヤンは、一体ナニが起こっているのか。と、空を飛んでいた。
「・・・・・やん。一体、なにが・・・・・・。」
「わ、解かりません。ドラゴンの背中に乗っているのは、解かりますが。」
「ドラゴンの背中・・・・。もしかして、美奈のところにいるドランか?」
〈そうだ。美奈がとても心配していたのでな。無理矢理、連れだすことにした。〉
ロイとヤンが話していると、ドランが話に加わる。ロイとヤンは、驚くしかなかった。
「美奈が・・・・。そう云えば、兄がああなってから、一度も外にも出ていなかったな。」
「そうですね。しかも、いまだにサルのままで戻られませんし。・・・・・もう、いっそのことどっかの森に放ってしまうのが一番だと思うのですけどね。」
なんだか腹黒いのが出て来たヤンに、ドランは笑う。ロイはなんとも云いようのない顔をしていた。
庭に降り立ったドランは、厩舎から出て来た美奈が眼を丸くしているのを見て、また笑う。美奈は手にしていた桶を置くと、傍に走って来た。
「ドラン! 大きくなっちゃったらダメじゃないっ。」
〈今日は特別だ。いつもは、小さいままでいるから。それより、客を連れてきたぞ。美奈〉
「お客様?」
怒りながらも、心配しているのはドランのことなので、ドランは躯の大きさを小さくする。となると、その後ろに隠れていたロイとヤンの姿が視える訳で。美奈は、さらに驚いていた。
「ろ、ロイ! や、ヤンさんっ。そ、その眼の下の濃いクマは・・・・!!」
何日寝ていないの!? とロイとヤンの腕を引っ張って、家へと入る。
「み、美奈!? えっと・・・・・。」
「美奈さま。あの・・・・・。」
とりあえず、寝ろ! と美奈は、ハンモックに2人を放り込む。ロイとヤンは、その揺れにすぐに眠ってしまった。
「あ、寝ちゃった。どやったら、こんなに濃いクマができるの!? つうか、さっさと元に戻れや!! くそ皇子が!!」
〈口が悪いぞ。美奈。〉
〈気持ちは解かるけど。でも、口が悪い。〉
リルとドランが云う。美奈は、ははは。と笑ってごまかした。
「にしても、本当にどうして戻らないんだろうね?」
ロイとヤンに毛布を掛けて、美奈が云う。ドランとネコは、リルを見た。
〈・・・・・どうして、そこで我れを見る。〉
〈リルなら知っているのではないかと。〉
〈だって、にゃあ・・・・・。〉
ドランとネコが云うと、リルは溜め息を吐いて云った。
〈それは、元から戻る気がない。か、戻れる技量がない。か、だな。〉
「戻る気がない、戻れる技量がない? ・・・・・・なんで?」
リルが云うと、美奈が首を傾げて訊き返す。
〈技量はないのは、見て解かるが。〉
〈そうにゃあ。技量は元からにゃいにゃあ~~~。〉
ドランとネコがさも当然とばかりに話していると、美奈は呆れた眼を向ける。リルは、頷いた。
「・・・・・・マジか。ムカつくから、無理矢理元に戻してやろうかなぁ?」
〈それは、それでも構わないと思うが。反省はしていないから、また同じことを繰り返すだろうな。〉
リルが云うと、美奈はテーブルに突っ伏す。ドランとネコも、呆れたように目を丸くしていた。
「まぁ、でも、いまは。ロイとヤンさんの寝不足解消と、疲労回復っ!!」
美奈はそう云うと、台所に行き滋養強壮の料理を作ってくれるように頼んだ。




