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32/40

巻き込まれて異世界に来てしまったけど、聖女とか関係ないのでのんびりします。

32.


胃にとても優しい野菜盛りだくさんのスープを完食し、こちらもぐっすりと休んで気合十分体力十分になった馬たちもいななきを上げる。

「・・・・・・こんなに、元気になったのを見るのは久しぶりだな。」

「・・・・・・はい。これは、馬たちも酷使しすぎていたのかもしれませんね。」

ロイとヤンの専属の馬なのだが。ロイとヤンが厩舎に行くと、すでに外に出て走り回っていた。

「別に良いけど。これは、少し広く運動場を作った方が良いかな?」

美奈が走り回っている馬たちを見て、考えて云う。

「いや。場内にちゃんとあるから。そこで走ってもいるのだけど。ここに来ると、違うのだろうか。」

「岩に囲まれているのと、自然に囲まれているのとの違いじゃないかな? いつでも走り回りに来て良いからね。」

美奈が笑って云うと、馬たちは更にいなないた。


ロイとヤンが帰り、美奈は収穫した野菜をどうしようかと考えていた。

〈我らが食べるのに。なにをそんなに悩んでいるのだ。〉

「食べるのは食べるけど。この量は、流石に私たちだけじゃ、消費できないよ。ロイとヤンに少しお土産として渡したけど。」

と、台所を埋め尽くさんとばかりにある野菜の山を見る。

〈これは多いにゃあ~~~。みんなで分けるにしても、ネコが食べられないのもあるにゃあ~~。〉

〈・・・・・雑食の肉食の癖にナニを云っているんだ。コイツは。〉

ドランが呆れて云うと、ネコはヒクヒクと頬を引きつらせる。リルは美奈を見上げると云った。

〈どこかで、売るという手もあるが。そうなると、行かないといけなくなる。それは、嫌なのだろう。〉

「売る・・・・・。どこかで・・・・・・。」

リルの言葉を聴き、美奈は考える。ナニを考えているのだろう。とドランとネコも、美奈を見る。美奈は、なにやら思いついたのか、手を叩いた。


夜半時、王都に近い場所の道の脇に、小さな小屋ができ。美奈は小屋の出来栄えを見て、よしっとガッツポーズをした。

〈・・・・ナニをするのだ。こんなところに、こんな小屋を建てて。〉

背中に籠を乗せていたリルが、美奈を見て訊く。美奈は、持って来たザルを小屋にある棚に並べて云った。

「ここで、無人の野菜売り場をね。お金は特にいらないから。ここに野菜があるのを知ってもらって、持って帰ってもらおうかなって。」

〈無人の野菜売り場・・・・・。また、変なことを思いつくものだ。外に置いておくと、ひとだけではなく、動物たちも食べ来るぞ。〉

「それはそれで、良いし。それに、もう菜園には新しく実っていたし。腐らせてよりも、誰かに食べてもらって消費してもらうのが良いしねっ。」

そんなものなのか。とリルは思いつつ、美奈の手伝いをする。一緒に来ていたドランとネコも、野菜をザルに並べていた。

〈美奈の野菜は美味しいし。きっと、誰もが食べたくなって、ここに取りに来ると思うにゃあ~~。〉

〈トマトなどは、最高だ。我が食べるから、トマトはおかなくても良いだろうに。〉

ネコとドランが云う。

「トマトも、もう実ってたでしょ。ドランだけじゃ、全部を消費するなんて、できないから。それに、美味しいものはみんなで食べるから、更に美味しくなるんだよ。」

と云う美奈に、リルとドランとネコは、そんなものなのか。と思っていた。


家に戻った美奈は、リルとドランとネコと一緒に、お風呂に入る。バシャバシャと湯船で遊ぶネコとドランを眺めつつ、美奈はリルの躯を洗っていた。

「痒いところは、ない? リル。」

〈・・・・・うむ。ないが。このシャンプーとやらは、かなり泡立つな。いつも思うのだが。〉

「そりゃあ。泡だってなんぼだし。この泡が良いんだよっ。ネコも泡増し増しで洗ってるしねっ。」

シャワーを手にして、泡で埋もれているリルを洗い流す。ドランは器用に羽根を広げて湯船に浮かんでいた。

〈この“湯”というのは、とっても気持ちが良い。魔界でも、できないものか。〉

「お水さえあれば、火の魔石で温められるんじゃないの?」

ドランが云うと、美奈が答える。ドランは湯船から浮き上がり、大きく躯を震わせた。

〈そうか! その手があったかっ。さっそく、側近に伝えて・・・・。〉

「きゃあっっ。もうっ。」

〈うわぁっ。バカものっ。浮かんで躯を震わせるな! 水滴が飛ぶだろうがっ。〉

ドランが嬉しそうに云うが、水滴がかかった美奈と、リルが文句を云う。ドランは、おや? と美奈とリルを見ると、また湯船に浸かった。

ドライヤーで髪を乾かす美奈の傍で、ドランとネコも躯を乾かす。リルは浴室の中で、大きく躯を震わせて、躯に残っていた水滴をすべて乾かし、脱衣所に出た。

「いいなぁ~~。リルは。躯を震わせるだけで、乾くんだもん。・・・・・髪、もう少し切ろうかな。」

ドライヤーを止め、髪の長さを確かめつつ、美奈が云う。

〈それぐらいの長さは、この世界では短い方だぞ。〉

〈そうだにゃあ。あんまり、短くすると剥げ坊主と思われるにゃあ。〉

〈魔導士とかは、ツルピカなのが多いぞ。〉

「・・・・・・このままにしておきます。」

リル・ネコ・ドランと云われて、美奈は返した。



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