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巻き込まれて異世界に来てしまったけど、聖女とか関係ないのでのんびりします。

31.


厩舎を見上げて、口を開けてぽかんとしているロイとヤンに、美奈は云う

「2人ともっ。早く、馬さんを中に入れてっ。ちゃんと、お水とご飯も用意してあるんだからっ。」

早く、早く。とロイとヤンを急かすようにして、先に中に入る。ロイとヤンも、手綱を引き馬を連れて中に入った。

「・・・・・・こ、これは・・・・・・。」

「柵が無いのはどうしてでしょう?」

「柵? べつにそんなの無くても良いかなって思って。そこに、お水とご飯をかける柵だけあるけど。のどもお腹も空いてるでしょ? ロイとヤンがうちでゆっくりしているのに、この間は炎天下の下に放置してたからね。やっぱり、動物も熱射病にかかっちゃうし。寝る時は、そこの藁でどうぞ。・・・・・って、解かってるかな?」

藁も柔らかそうで、ロイとヤンが手綱と鞍を外すと、馬たちはすぐに水桶へと向かった。


美奈の周りをパタパタと飛ぶドランを警戒しつつ、ロイとヤンも後ろからついて行く。リルとネコも美奈の左右を固めて歩いていた。

「・・・・・美奈。一体いつの間に、ドラゴンを?」

「うん? あれ、云わなかったっけ? そこの菜園のトマトを全部、ドランちゃんが食べちゃっててさぁ。それで、怪我をしているみたいだったし、保護しました。」

「保護・・・・・。」

「ドラゴンを保護するなんて。誰も考えません。」

異世界から来た人だからなのか。とロイとヤンは思う。家のドアを開けて、美奈はロイとヤンを中に入れた。

お茶と軽食が用意してあり。ロイとヤンは、勧められた椅子に座り、家の中を見まわす。

「・・・・・前回来た時よりも、なんだかまったり感が・・・・・。」

「・・・・・ゆったり感が、増して強化されているような・・・・。」

ロイとヤンが話し合うのを、ラグに丸まりリルとネコは見ていて。ドランは美奈の横にある椅子の背にとまっていた。

〈美奈。この2人は、敵ではないのか。なんなら、すぐにでも滅してやるぞ。〉

「ドランちゃん。大丈夫だよ。この2人はあの、色ボケくそ・・・・、第一皇子じゃないから。私を保護してくれた人だからね。」

笑って云う美奈に、ドランはそれなら。と、2人を見据える。ロイとヤンは、出されたお茶をひと口飲み、云った。

「・・・・・名まえを付けていると云うことは、美奈の眷属になったということで間違いないのかな?」

「眷属って云うよりも、友だちだよ。リルもネコも、ドランちゃんもね。」

「友だち・・・・。美奈様の感覚は、私には理解しがたいのですが。リルはどう見ても、狼ですし。ドランはドラゴンですし。安全なのは、ネコだけとしか思えないのですが。」

ヤンが、真剣に云うとリルとドランの口元がピクッと、動く。ネコは、くつくつと笑いを堪えていた。

〈〈ナニを云っているのだ。ネコもキャットシーという魔獣だぞ。〉〉

〈〈まったくだ。しかし、フェンリルを狼とは・・・・・。見る目がないのか?〉〉

〈〈美奈が狼だと、貫き通した。〉〉

〈〈それなら、いたしかたあるまい。〉〉

リルとドラゴンが、話しているのも気づかずに、ロイとヤンは軽食も口にする。ふんわりと口の中で溶ける感触に、ロイとヤンは驚いていた。

「美味しい? 忙しすぎて、食事もしていないっていうのは、ダメだよ。特に、ロイは、この国を継ぐかもしれないのだからね。そしたら、ヤンさんも宰相になるかもしれないのだから。しっかりと、食事・睡眠・休暇、は取らないとね。」

ぱくぱくと食べているロイとヤンを見て、美奈は笑ってお代わりのお茶を煎れる。

「・・・・私に休めというのは、美奈とヤンぐらいだな。」

「ロイ様は、働き過ぎなのです。これも、あの無能レイくそバカ皇子が、まったく公務も執務もされないからです。国王様も、皇后様も立太子にはロイ様を、とお考えを纏められていらっしゃいます。」

ヤンがさらっと、第一皇子をディスりながら云う。

「無能くそバカ皇子、って。ヤンさんもそう思ってるんだぁ。」

美奈がその言葉を拾って云うと、リルたちも笑い出す。ロイは、ヤンをジト目で見た。

「・・・・不敬罪で首をはねられるぞ。ヤン。」

「そうならないように、ロイ様がしてくださると信じています。」

どんな信頼だ。と思いつつ、ロイは城では普段食べないぐらいの量を食べていた。

「美奈。あなたといることで、ナニも害がないのであれば、そのままドラゴンも住むことを許可しますが。」

「やったぁっ。ありがとう、ロイ!」

「ですが、ドラゴンは魔獣の中でも最恐種です。いくら小さくても、その姿を見て恐れ畏怖するモノたちがいないとは云い切れない。なので・・・・・。」

「もともと、私はここから出る気はないし。森の中を散策するぐらいで、ひととの接点はロイとヤンさんだけだし。でも、気をつけることは気を付けるから。それに、アラフォー女子の根強さを甘くみないように。」

「アラフォー・・・・・って、美奈は良く云うけれど。見た目はどう見ても10代だからね?」

自覚はある? とロイが心配そうに訊いてくる。美奈は は? と首を傾げた。

「もしかして、鏡でご自身のお顔を見られていないのでは? ロイ様」

「・・・・・・・そうかもしれない。そう云えば、鏡は貴重品で客室には置いていないからな。国王と皇后の寝室に大きなのがあるだけか」

ロイとヤンが、2人で話し合う。美奈は、ナニを話しているのかな? と思いつつ、お茶を飲んで云った。

「アラフォーは、アラフォーだよ。40歳だもんねぇ。ロイとヤンさんより2倍歳くってるし。」

笑って云う美奈を見て、ロイとヤンは深く大きく溜め息を吐いた。


のんびりとした空気に癒されたのか、舟をこぎ始めたロイを見て、美奈は席を立つとロイを今朝作ったハンモックに連れて行った。

「ロイ。ここで寝たら良いよ。ロイが来るって云うから、造ったんだけど。ソファよりも寝やすいかも。」

「え? 造ったって・・・・。これを?」

「そうそう。お尻から椅子に座るみたいにして座って。それから、脚をこっち側に伸ばして。で、頭を枕側に倒したら、はい。もう寝るしかない。」

美奈に云われるままに、ハンモックの布に座り、両脚を伸ばし入れ、枕に頭を乗せる。とすぐに、ロイは眠ってしまった。

「はやっ。・・・・・って、どれだけ休んで寝てないのさ。やっぱり、あの無能くそバカ皇子を椅子に縛り付けて、しなければならない仕事を強制的に・・・・・。」

「それ、良いですね。できるものなら、したいですけど。このままですと、ロイ様が過労で倒られてしまいます。」

「ヤンさんもね。ヤンさんも、疲れがたまっているでしょ。ヤンさんは、ソファで寝てて。お昼ごはんが出来たら、起こすから。」

とんでもないことを云い出す美奈に、ヤンも同意をして話す。眠そうにしているヤンを見て、美奈はソファで休むように云い、毛布を渡した。

「・・・・・申し訳ございません。ここに来ると、気がとても緩んでしまうと云いましょうか・・・・。」

「そういうところになっているのなら、嬉しいよ。」

にっこりと笑う美奈に、ヤンは思わず顔を赤くしてしまうが、リルとドランが睨みを利かせていて。こほんこほんと、ワザとらしく咳き込むとソファに座る。と、すぐに座ったまま眠ってしまった。

「横になった方が休めるのに。仕方ないなぁ。」

美奈が云うと、精霊たちがヤンの身体を動かして横にさせる。

「ありがとう。さ、リル、ネコ、ドランちゃん。2人が起きるといけないから、静かにね。」

〈結局。ドランはいて良いことなったのか。〉

「うん。さて、残りの収穫に行きますか。」

帽子を被り、籠を抱えて云う美奈に、リルとネコは立ち上がり、ドランはパタパタと飛んだ。


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