巻き込まれて異世界に来てしまったけど、聖女とか関係ないのでのんびりします。
3.
それから、用意してくれた家に引っ越しするまでの間、ロイが昼食と夕食を共にしてくれるようになり。その時に、この国の情勢と魔物の話をしてくれた。
「生活には、火の魔法石・水の魔法石が必要なんです。この城では、かなりの量の魔法石が使われています。あ、もちろん。美奈の住む家にも、魔法石は常備してありますので安心してください。」
「2つしか魔法石はないの?」
「2つ、と云う訳ではありません。農民たちは土の魔法石を使い、田畑を耕しています。あ、農具もありますが。ほぼ、土の魔法石で耕かされるので、種をまいたり人の手が必要なことをしています。」
「そのへんは、私が住んでいた世界と同じだね。農作業専用のトラクターがあって、田畑を耕してたりしているから。あとは、鍬なんかを使って人の手でするところもあるけど。」
美奈自身は農作業をしたことはないが、テレビで見たことや田舎に行った時のことを思い出して話す。ロイは、美奈の話もきっちりと聴いてくれていた。
「美奈も農作業をしていたことがあるのですか?」
「私は、ないよぉ。ずっと、デスクワーク・・・・。あ、執務してたから。」
言葉を言い換えて話すと、ロイと給仕をしてくれているひと達が、眼を丸くする。なんか、おかしなことを云った? と思っていると、ロイが教えてくれた。
「執務は、王族か、貴族もしくは商人や町の役所勤めの者しかしていません。美奈の世界では、執務をするのは普通のことなのですね。」
「そう、だね。いろんな職業があったけど。・・・・まぁ、でも。どの仕事も慣れるまでが、大変なのは変わりないけどね。」
美奈の話を聴いて、ロイたちは笑う。美奈も同じように笑って、はたと思った。
(・・・・・こんなに、声を出して笑うのって。すっごく久しぶりな気がする・・・・・)
ここに来てから、なんだかひととしての感情を取り戻しているような感覚を覚えて、美奈は行儀が悪いと思いつつ、フォークでお肉をつついた。
それからさらに数日が経ち、一緒に召喚された女性が呼ばれたことに承諾し、聖女教育を受けていると云う話を聴かされた。
「良かった。良かった。私には関係ないから別に良いのだけど。」
とついつい、口に出してしまい前に座っていたロイが、眉を下げる。いや、美形がそんな顔をするのはいかんと思う。と思いつつ、私は、ロイが話すのを待った。
「美奈。希望されていた家が用意ができました。明日にでも、そちらに移ることができます。」
「ほんと!? なら、もう今からでも行きたいのだけどっ。」
「・・・・・今からは、私が執務にあたるので。明日まで待ってください。」
執務と云われてしまっては、納得するしかない。
「・・・・・解かりました。じゃあ、明日の午前中には行けるかな?」
と年甲斐もなく眼を輝かせて訊くと、ロイはとても寂しそうな顔をして頷いた。




