巻き込まれて異世界に来てしまったけど、聖女とか関係ないのでのんびりします。
2.
用意をするのに数日ください。と云われ、私はあてがわれた部屋で、のんびりとしていた。
「はぁ~~~。暇ぁっ。・・・・お城の中をうろつくわけにはいかないし。それに、あの金髪くそ王子に会うのだけはご免だしっ。・・・・・置いてある本でも読もうかな。」
ふかふかのソファに座り、抱えていたクッションを置き、本棚まで行く。1冊手に取り、ぱらぱらと捲っていると、ふと思い出した。
「・・・・これってさぁ。今まで読んできてた、異世界召喚とかってやつだよねぇ。今まで読んできてたのは、一回死んで生まれ変わったら読んでいた本の主人公。ってのが多かったけど。しかも、なぜかみんな悪役令嬢なんだったはず。あとは、召喚されて旅に出たりとかしてたっけ。」
元の世界で読んでいた本の内容を思い出しつつ、ブツブツと呟く。
「そういや、そういうのって必ず付きものがあったような気が・・・・・・」
哀しいかな。そこはアラフォー。記憶力が、かなりあやふやで。本を手にしたまま、考え込んでしまう。
「・・・・・なんだっけ? 確か・・・・・。あっ、ステータスオープン! ・・・・・・だっけ?」
面白そうなので、云ってみると眼の前にナニかが現れた。
「・・・・・・・マジか。マジで、現れた・・・・・・。」
まじまじと眼の前に現れたステータスを見て、とりあえず本を元に戻してソファに座り直した。
「・・・・・・どうしようかなぁ」
眼の前に広がるステータスに、呆気に取られていると、ドアを叩く音がして。びっくりして思わず、ひゃあっ と叫んだ。
「ひゃあっっ」
「美奈!? どうかしましたか!?」
「ろ、ロイ!? ちょっ、ちょっと待ってっ。い、い、いまっ、着替えててっ」
聴こえて来た声に、私はそう云う。扉の向こうでは何故か慌てているようであった。
(ステータス! 消えてぇーーーーーっっ)
声には出さずに、心の中で叫ぶとステータスはものの見事に消え去った。
「・・・・・よ、良かった。と、とりあえず、これでよしっ。」
どうにか周りを確かめて、扉を開けに行く。扉の前で、数回深呼吸をしてから、開けた。
「お、お待たせしました。」
「い、いえ・・・・。こちらこそ、急に来て、申し訳ない。少しお話があって来たのですが。中に入っても?」
こんなおばさんにも、礼儀の正しいロイにほっこりとしつつ、中に通した。
お付きの方がお茶を煎れてくれ、椅子に座るのにロイが引いてくれ。なんとなくむず痒い感じを受けながら、座るとロイも向かい側に座った。
「・・・・・実は、ご希望されていた家の手配ができました。いま、内装に手を付けています」
「ほんとに!? ありがとう。無茶を云ってごめんなさいね」
「い、いえっ。もとはと云えば、我々の責任でもあります。美奈は、気にしないでください。」
いつも通りに対応してくれるロイに、笑いつつも私は入れてもらったお茶を飲む。ロイも安心したのか、お茶を口にした。
「ところで、一緒に召喚された女性とはお知合いですか?」
ロイが負と思い出したかのように訊く。美奈は、う~~ん、とカップを置いて腕を組み考えた。
「・・・・・それがねぇ。まったく会ったこともないひとなんだけど。でも、なんか、どっかで見たような見たことないような・・・・・。」
記憶を辿るが、まったく記憶になく。美奈は、たはは。と笑うしかない。ロイは深くは聴いてこなかった。
「そうですか。もしかしたら、召喚の魔法陣が影響したのかもしれません。」
「それだけ、大きかったってこと?」
「それが、兄がどれだけの大きさの魔法陣を作ったのか、解かっていないのです。ですが、あの広間は城の中でも一番大きな広間でしたから。・・・・・おそらく、かなり広範囲で広げたのだと予測しています。」
なんて奴だ。と私の中での第一王子の印象はますます悪くなる。ロイは、眉を下げていた。
「私としては、もう会わない人だし。どうでも良いのだけど。ただ、連れて行かれた女性のことは心配。無事なんだよね?」
美奈の言葉を聴いて、ロイとお付きの人は大きく眼を見開く。美奈は、なんでそんな顔をするかな? と首を傾げていた。
「・・・・・聴いたところでは、兄の元でこの国の情勢と、召喚された理由を聴かされて、その・・・・。」
云いにくそうにするロイを見て、なんとなく考えがつき美奈はお茶を飲む。
「閉じこもっちゃった?」
「はい・・・・・。いま、神官たちが説得をしている最中だと。あ、安心してください。美奈は私の保護下にありますので。兄が手を出すことはありません。」
それなら良かった。と美奈はホッと胸を撫で下ろした。




