巻き込まれて異世界に来てしまったけど、聖女とか関係ないのでのんびりします。
17.
帰って来た美奈は、歩き疲れた身体を癒そうと、お風呂にお湯をためる。
「やっぱ、お風呂は最強!」
お湯がたまるまでに、着替えを用意し、入る準備を整える。リルとネコも脱衣所で美奈を待っていた。
「さて、入りますかっ。」
服を脱ぎ、引き戸を開けて、洗面器でお湯を身体にかけると湯船に浸かる。リルとネコも同じように器用に自分で自分の躯にお湯をかけて、湯船に入った。
「はふぅ~~~~~・・・・・・・・。やっぱり、最高~~~っ。」
〈いかん。この温かさは心地良くて・・・・・・。〉
〈だらけりゅにゃあ~~~~~。〉
浴槽のふちに凭れて、美奈たちはホッと息をつく。身体が温まったのを確かめると、美奈は脚のマッサージを始めた。
「久々に歩いたし。ちゃんとマッサージしておかないとっ。絶対に、筋肉痛になるっ。」
〈そんなに歩いていないだろう。〉
〈ほんとだにゃあ~~~。極楽にゃあ~~~~。〉
マッサージを真剣にする美奈に、リルとネコが云う。美奈は、リルとネコを睨むと云った。
「甘いっ。私ほどの年になると、筋肉痛は2~3日後に来るの! 翌日、もしくは当日に来るのは10代から20代前半までっ。ちゃんと、ケアしないと全身筋肉痛で動けなくなるっ。」
そんなものなのか。とリルとネコは、湯のぬくもりを堪能すべく、美奈のマッサージが終わるまで、待つことにした。
漸くお風呂から上がると、用意されていたお昼ご飯を食べて、プライベートルームに籠る美奈を見る。
〈フェンリル王。美奈は一体、ナニをしているのでしょう?〉
〈なにか、一心不乱に書いているようだ。なんでも、頭の中で創作されている話とか云っていたな。創作をしている時は、邪魔をするなと云われている。〉
〈そうですか・・・・・。それなら、暫くは出てこないですか?〉
〈うむ。書き始めると、1時間ぐらいは出てこないな。で、気になったことがあったのだろう。〉
リルが云うと、ネコは頷く。
〈・・・・・・この周辺の空気が以前と全く変わっています。清らかに清浄になったと云いましょうか。〉
〈それは、我も感じていた。そして、美奈が来るまでいた、魔物の気配がまったくしない。消えてしまっている。〉
〈やはり!! ・・・・・ピクシーや、妖精たちがあんなに飛び回っているのを見るは、とてつもなく久しぶりで驚きましたが。〉
〈おそらく、無意識のうちに美奈の癒しの力が発揮されているのかもしれぬ。本人は全く気付いておらぬ様子じゃが。〉
〈・・・・・・・はぁ。気付いていないのですか。〉
〈そうじゃ。最も、美奈はのんびりしたいとずっと云っているからな。もし、その癒しの力が外に漏れて知られると、本人が望む生活はできぬようになってしまう。〉
〈断固、漏れないようにしないといけないと云うことですね。〉
〈そう云うことだ。我々と話せることも他の輩どもには云うな。と云ってある。それに、あの創造のスキルやらもな。〉
くああ。と欠伸をするリルを見て、ネコは真剣に頷いていた。
からからと引き戸が開く音がして、リルとネコは眼を開ける。
「う~~んっ。ちょっと、集中して書きすぎて手が痛いっ。ペンだこができてるしっ。」
伸びをしながら出て来た美奈を見て、リルが訊く。
〈ペンだこ、とはなんだ?〉
「ん? ペンだこって云うのは、鉛筆がちょうどあたるところに出来る、固い角質のことだよ。・・・・・これっ。」
と親指に出来ているペンだこを見せる。
〈自分で治せるだろう。〉
「ん~~? これは書いている限りずっとできるし。いちいち治すのもめんどくさい。それに、自分に使うようなステータスじゃないでしょ。」
と云い、台所に行く美奈の背を見る。
〈・・・・・・・おかしな奴だ。〉
〈・・・・・・本当ですね。〉
リルとネコが話をしているとはつゆ知らず。美奈は、お水を飲みリビングに戻ると、そのまま外に出る。リルとネコも身体を伸ばすと、美奈について外に出た。
「・・・・・・このあたりかなぁ?」
なにやら、柵に近い庭で悩み始めた美奈を、リルとネコは見上げる。
〈にゃにしゅりゅんだにゃあ?〉
さっきまで普通に話していたのを変えて、ネコが美奈に訊く。美奈は、ネコを見ると云った。
「この辺りにさ。馬の厩舎を造ろうと思って。」
〈馬の? なにゆえに?〉
今度は、リルが訊き返す。美奈は笑うと云った。
「ロイとヤンくんが来る時って、馬で来るでしょ? この間は、なにもないところで待たせてしまっていたから。天気だったから良かったけど。これが、途中で天気が下って雨になったりした時とかに、困るかなぁ? と思って。柵内の土地なら、好きに使って良いってロイが云ってくれてるし。」
そう云って、どれぐらいの大きさにするかを考える美奈を見て、リルとネコは感心する。
〈馬のことまで考えるとは。〉
リルが呟くと、美奈は大きさと内部を想像したのか、声を上げた。
「創造! 馬小屋!!」
ピカッ!!
一瞬にして、光が輝くと眼を開けた時には、立派な厩舎ができていた。
「これで、よしっ。あ、ちゃんと中に藁が敷いてある。お水と餌を入れる器もついてるし。ちゃんと細部まで想像できてよかった。」
笑って云う美奈を見て、リルとネコは中に入り出来上がったばかりの厩舎を見て回っていた。
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