巻き込まれて異世界に来てしまったけど、聖女とか関係ないのでのんびりします。
15.
朝ご飯を食べ、ソファで丸まるキャットシーを見て、リルもラグにあるクッションに丸まる。お茶を飲んでいた美奈は、ホッと息を吐くと云った。
「今日は、散歩でもしようかなぁ。天気もいいみたいだし。」
〈・・・・・どこまで行くつもりだ?〉
「決めてないよ。ぶらぶらするから、散歩って云うんだよ。」
〈森に行くのか、街に行くのかによっては、違ってくるぞ。美奈よ。〉
そうでした。と美奈はテーブルに突っ伏す。
「・・・・・街ってさぁ。ひとが多いよねぇ?」
〈まぁ。それなりにはいるだろうな。なにせ、王都街なのだから。〉
「うぐぐ・・・・・。ひとが多いのは嫌だなぁ・・・・・。のんびりできないからぁ~~~・・・・・。」
〈・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。〉
ここ数日見ているが、一向にのんびりしているようには見えない美奈を、リルは憐れみを持って見上げる。
「・・・・・し、仕方ないでしょっ。だって、いままで働き詰めだったしっ。休みの日なんて、あってないのと同じだしっ。気付いたら、1日終わってたなんてこと、ざらだったしっ。休みを寝て暮らしたというとてつもない悲しみをっ。知らないでしょう!!」
まぁ、普段から寝ているし。とリルとキャットシーは思っていた。
創造スキルで水筒を造った美奈は、水を入れる。リルとキャットシーはナニをしているんだと。見ていた。
「これは、水筒と云って。飲み物を入れるものだよ。散歩をするにも、水分がないと倒れちゃうからね」
これでよしっ。と水筒をリュックに入れると、背負う。
「さ、散歩に行こっかっ」
リルとキャットシーに云うと、美奈は外に出る。リルとキャットシーも、外に出た。
路の整備はきっちりとしてあり。ロイの手腕の良さに感心する。美奈は、外に出るとまずは続いている小道へと歩を進めた。
「いい、天気だねぇ~~~。やっぱり、空気が違うやぁ~~~」
伸びをして云う美奈の横を、リルはゆっくりと歩く。キャットシーもその横を歩いていた。
「ネコちゃんは、家にいても良かったのに。怪我が治っても、油断は大敵だよ?」
〈ね、ネコちゃん?〉
キャットシーは心外だっ。と美奈を見る。
「一緒に住むなら、名前がいるよね。もう、ネコちゃんでいっかっ。」
ちょっと待ってっ。とキャットシーは口をぱくぱくさせる。
〈・・・・・ふぇ、フェンリル様っ。こ、この名つけは・・・・!?〉
〈・・・・美奈にセンスを求めても無駄だぞ。我れでさえも、“リル”であるしな。〉
〈そ、それはフェンリル王様と、解かってのことでは?〉
〈美奈は、我れのことを、狼と思っておるぞ。それでも、リルと名付けたのだからな。感覚的に理解していると云うところか。〉
〈感覚的・・・・・。感覚的で、ネコ、とそのまま・・・・・。〉
〈諦めよ。〉
リルが云うと、ネコは、はぁ・・・・。と深く溜め息を吐いた。
美奈が歩いていると、そこかしこから話し声が聴こえて来て。なんだか、盗み聞きしているみたい。と思い、どうにか聴こえないようにするにはどうしたら良いかと考える。
〈危ないっ。美奈っ。〉
「ふえ!?」
スカートをリルが咥えて、美奈を止める。美奈は驚いて、変な声を出した。
「り、リル!?」
〈馬鹿者っ。ちゃんと、前を見て歩かんかっ。〉
リルが咥えたスカートを外すと、美奈が進もうとしていた道を見る。そこには、しっかりと見ないと解からないぐらいの大きさの穴があいていた。
「あ・・・・。ご、ごめん。ありがとう・・・・。でも、なんでこんな道の真ん中に穴が? ロイがそのままにしてるわけないと思うけど・・・・。」
バクバクする心臓をなんとか抑えて、美奈はリルに云う。リルはその周りにあるモノを見て、さっきからカサコソと動いている茂みを睨んだ。
〈〈我れの治める森でなにをしている。ピクシーども。勝手をするのであれば、その存在を消すぞ。〉〉
リルの威嚇に、隠れていたピクシーたちは逃げて行く。ネコは可哀そうに。と眺めていた。
「リル?」
〈美奈よ。これは、“ピクシーの環”と云って、めぼしいひとを、さらう罠だ。この環に少しでも触れると、向こうの世界に連れて行かれる。ピクシーの王と女王に気に入られれば、そのまま住むことが許されるが。もし、気に入られなければ・・・・・・。〉
「なければ?」
ためるリルに、美奈は息を飲む。
〈永遠に奴隷として、使われ続ける。死んでもな。〉
気を付けます・・・・。と美奈はその環を避けた。
〈まぁ、美奈なら大丈夫であろうが。用心に越したことはない。〉
〈悪意はないと、伝えればよろしいのに。フェンリル王もおひとが悪い。〉
先を行く美奈を見て、聴こえないように話すリルに、ネコは云う。リルは、くつくつと笑うと云った。
〈まだまだ、美奈はこの世界に慣れておらぬ。慣れるまでの間の保護は、我れがアルフォード神様より承ったのでな。〉
〈・・・・・良く仰られる。承ることなく、接触をしたのはフェンリル王であろうに。〉
まぁ、そう云うな。と笑うリルを見て、ネコは大きく肩を落とした




