巻き込まれて異世界に来てしまったけど、聖女とか関係ないのでのんびりします。
13.
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」
眼が覚めたロイとヤンはお互いを見て、無言になる。かけられていた毛布を唖然として見ていると、美奈が台所から出て来た。
「あ、おはよう。気持ちよく寝ていたから起こさなかったけど。・・・・もしかして、まだ寝ぼけてる?」
お~~い。と眼の前で手を振って見せる。ロイとヤンは、ハッとして立ち上がった。
「ひゃっ。・・・・・びっくりしたぁ。」
「す、すまない。美奈。・・・・・わ、私は寝ていたのか?」
「も、申し訳ない。美奈さま。・・・・・わ、私も寝てしまっていたようです。」
茫然とするロイに、ヤンが申し訳なさそうに云う。美奈は、眼を丸くしてロイとヤンを見ると、笑って云った。
「あはは。たまには良いんじゃない? お休みも大事だよ。ずっと、働きづめだったんでしょ。」
「そ、そうだが・・・・・。た、訪ねて来ていて本当に、申し訳ない。」
「気にしなくていいよ。それに、2人とも、来た時よりも顔色も良くなっているし。そろそろ、暗くなりそうだから起こそうと思ってたとこだしね。」
美奈に云われて、外を見れば。確かに、薄暗くなってきていて。ロイとヤンは、美奈に毛布を返した。
「暗くなると、馬たちが怯えて動けなくなるので。今日はこれで。・・・・・その、また来ます。」
「うん。気を付けて帰ってね。来る時は、伝書紙をくれれば、お茶の用意をしておくよ。」
毛布を受け取り、美奈が答えればロイとヤンは、頷く。
「そうでした。食料は足りていますか? もし、足りなくなってきた時も殿下の伝書紙を飛ばしてください。すぐに、必要な物を揃えて届けます。」
ヤンが大事なことを云うのを忘れていた。と思い出して云う。美奈は、頷くと笑って2人を見送った。
調理器具が作ってくれた夕飯を食べて、お風呂にゆっくりと入る。
「・・・・ふぁ~~~。やっぱり、1日の終わりはお風呂だよねぇ~~~・・・・・」
〈・・・・・我れも、同意する・・・・・。このちょうど良い温さ・・・・・。このまま寝てしまっても文句は言えまい・・・・。〉
「いやいや。浸かったままだと、風邪ひいちゃうからね? それに、リルの躯を乾かすのも大変だからね?」
浴槽に凭れていた美奈は、身体を起こしてリルに云う。同じく、浴槽に頭を乗せていたリルは、にぃ。と笑った。
お風呂から出ると、早々にベッドに入り込んで寝てしまった美奈を見て、リルはそっと部屋を出る。躯を少し大きくすると、外に出て空に飛んだ。
神界に来たリルは、さっそくアルフォード神の元へと馳せ参じる。アルフォード神はリルを出迎えた。
『なんぞ、あったか? フェンリル王よ』
『アルフォード神。視ておられたであろうに。おひとが悪い。』
『そうかもの。で、どう見た。』
くつくつと笑い話す、アルフォード神にフェンリルも笑いつつ、話す。
『・・・・・いろいろとお伝えしたいことはありますが。ひとりにしておくと、周りにいろいろと集まってきそうです。私がいる間も、他の魔物が近づいて来ていました。・・・・それと、あのステータスは一体・・・・。我れが初めて見るモノもありましたが。』
『・・・・・・いろいろと集まって来る。か・・・・。特性に関しては、我は一切関与しておらぬ。元々、存在していた世界で得ていたモノではないかと、考えておるのだが。』
『そうですか・・・・・。まぁ、それはともかくとしまして。美奈の傍にいるのは、とても心地よく。本人はのんびりしたいと云っていましたが。』
『のんびり、の。ふくく。それも良し。で、どうするのだ? フェンリル王よ。』
アルフォード神が、身を正し問う。フェンリル王は、答えた。
『美奈は我れを、狼だと思っています。それに、“リル”と云う名をもらいました。暫くは、美奈とともに暮らそうかと。』
『ふふ。それも良い。連れて来られた、異世界のひとを、頼むぞ。フェンリル王。』
『御意。』
消えていくアルフォード神の姿を、フェンリル王は気配が完全に消え去るまで、頭を垂れて見送っていた。




