巻き込まれて異世界に来てしまったけど、聖女とか関係ないのでのんびりします。
11.
リルの体に凭れて眼を閉じていると、外の音が聴こえて来て。美奈は聴こえてくる鳥のさえずりや、葉の音や、風が織りなす音楽を聴いていた。
「・・・・・・はぁ。静かな分、音が凄いねぇ。リル」
〈そうか? 我れはいつも聴いているから、そうは思わんが〉
「そっかぁ・・・・。そういや、こんなに自然の音がしているなんて、私のいた世界じゃ、田舎の方に行かないと聴こえなかったし。」
〈どんなところなんだ。自然がないと、世界は滅ぶぞ〉
「そうだよねぇ。それに気づいて、いま必死に森を再生しようとしているよ。木が育つのも時間がかかるけどね。」
〈・・・・どこの世界も同じよ。にしても、頭の中でそれだけ考え込んでいると、逆にのんびりできておらぬぞ。美奈〉
「うぐっ。・・・・・・これは、もう癖だから仕方ないかも。」
リルと話をしながらも、色々な音が届き、聴こえて来て。美奈は寝そうになっていたのだが。
コツン、コツン、コツン。
窓にあたる音が聴こえて、美奈は眼を開けた。
「・・・・・あ? あ、ロイに送った返事が返ってきたみたい」
窓に行き開け、手を伸ばす。伝書紙は美奈の手に乗ると、姿を手紙に戻した。
「・・・・・うん、うん。なになに? ・・・・・・・・え!?」
大きな声に、リルも顔を上げる。美奈は、フルフルと震えつつ、リルを見ると云った。
「・・・・・・来るって。」
〈なにが?〉
「・・・・・・・・ロイがっ、狼と暮らすとは聴いていないから、今日の昼ぐらいに来るってっ。」
〈ほぉ・・・・・・。〉
この国の第2皇子が来る、とリルは眼を細めた。
とりあえず、落ち着こうと何故か寝室に入り、一心不乱に書き始めた美奈を見て、リルは布団の上に丸まっていた。
「・・・・・ううう。現実逃避にはこれが一番っ。しかしっ、手がいたいっっ。」
もう無理っ。とペンを机に投げる。書き終わった紙を揃え整える。棚に戻すと、大きく伸びをした。
〈現実逃避も終わったか。そろそろ、昼の刻になるぞ。美奈〉
リルがくああ。と欠伸をして云う。美奈は机に突っ伏した。
「・・・・忙しいなら来なくても良いのに。」
〈そうはいくまい。お主の後見人になっているのではないか。というよりも、その第2皇子が、世話をしてくれているから、ナニも起こっていないのだと思うぞ。我れは〉
のっそりと躯を起こし、大きく躯を伸ばす。美奈は、なにが? とリルを見た。
「ナニも起こっていないって、なにが?」
本当に無防備すぎて、心配が過ぎる。とリルは思いつつ、アルフォード神を仰ぎ見る。空が見えるわけでもなく、木目の天井があった。
〈・・・・・召喚された相手が、聖女でなければ、それ相応な道しか残っていない。と云うことだ。〉
これで解かるだろう。とリルが言葉を紡がずにいると、美奈は腕を組んで考え込んでいた。
「・・・・・・まぁ、なるようになるさっ。どうせ、いつ死んでもおかしくないのだしっ。アラフォー女を舐めるなよぉっ。」
〈・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。〉
良い意味で良い性格をしている。と、リルは思っていた。
お昼ご飯を食べて、片づけをして、掃除をする。お茶の用意をしていると、リルが顔を上げた。
〈・・・・・来たぞ。あと、300mと云ったところか。馬で来たようだ。〉
「馬? 良く聞こえるねぇ。」
〈耳が良いのでな。〉
感心して話す美奈に、リルは答えた。
〈それよりも、我れと話せることと、美奈のステータスの話はしないようにな。確実に、城に戻されるぞ。〉
「・・・・・絶対に、やだっ。絶対に、話さないっ。」
リルに云われて、美奈は拳を握り強く云う。リルは、頭を脚に乗せて眼を閉じた。
コン、コン、コン。
扉を叩く音がして、お茶の用意をテーブルにしていた美奈の手が止まる。
「来たぁーーーーーーっっ。」
はふはふと呼吸を整えると、玄関に行き小窓から確かめて開けた。
「いらっしゃい。ロイ。忙しいのに、来てくれてありがとう。」
「美奈。まだ2日しか経ってないけど。元気そうで何よりだよ。忙しくはないから気にしないでくれ。」
中にどうぞ。と通す。ロイは、暖炉の前に丸まっているリルを見て、息を飲んだ。
「・・・・・狼を拾ったと聴いてはいたけども。こんなに大きいとは思っていなかったよ。」
「あ、怪我をしていたから保護したんだけど。このまま一緒に暮らそうと思ってるんだ。」
椅子をすすめ、お茶を煎れて、美奈が云う。ロイは座るとそれはダメだと。と返した。
「狼と暮らすなんてっ。危険だっ。美奈の世界ではどうだったか知らないが。こちらでは、人食い狼に人食い熊がいるんだ。この狼が人食いではないとは、云いきれない。」
一気に云い切り、肩で息をするロイを見て、美奈はまぁ、飲んで。とお茶を進める。ロイは座り直すと、少し落ち着こうと、お茶を飲んだ。
「ねぇ、ロイ。1日一緒にいたけど、私はこの通り生きてるよ。きっと、もう動物的にも不味くて、喰らう気も出ないぐらいなんじゃないかな?」
「そんなことはない! あなたはご自身を卑下しすぎだっ。」
良く云った。とリルは片目を開けてロイに同意する。どうもこう自分を卑下する美奈に、どうやったら自分の価値を分かってもらえるのか。とロイはひそかに頭を痛めていた。
「・・・・そうかなぁ? でも、きっとリルがいることで、他の動物は絶対に来ないと思うんだけど。」
「・・・・・リル? ・・・・・まさか、あの狼の名前ですか?」
ロイが眼を丸くして訊く。美奈は頷いた。
「まさか、もう名前まで付けてるいるなんて・・・・・。」
ロイが椅子に凭れ、天井を見上げて眼を抑える。美奈は、肩身を狭くしてお茶を飲んでいた。
「・・・・・・・はぁ。もう、一緒に住むと決めたのですね?」
「うん・・・・・・。」
それなら、しょうがない。とロイは腹をくくる。
「解かりました。確かに、狼が傍にいれば、他の獰猛な動物や、魔物も寄ってこないでしょう。ですが、美奈に危険が迫るようであれば、私が処理します。」
リルを見て云うロイに、リルは若造が。と思っていた。
お茶とお茶菓子を食べ、ロイはこの2日間の話をする。メインは一緒に連れて来られた女性と第1皇子の話であったが。話しているうちに、ロイがだんだんと舟をこぎ始めた。
「・・・・・・で・・・・・。」
「うん。・・・・・ロイ?」
途切れた声に、美奈はロイを見る。くぅくぅと寝息を立てるロイを見て、美奈は眼を丸くした。
「もしかして、寝ちゃってる?」
〈もしかしなくても、そうだろう。これは、寝ても仕方がない。〉
リルが躯を起こし、云う。どういう意味だろう? と美奈は思いつつも、座ったままではダメだろうと。どうにかして、ソファに移そうと考えていると、リルがロイの首根っこを咥えた。
「リル?」
〈そこに寝かせれば良いのだろう。〉
ロイをソファに放り投げる。扱いがぞんざいだなぁ。と思いつつ、美奈はプライベートルームに行くと毛布を持ってきてロイにかけた。
「大分、疲れてるみたいだし。この後なにもないなら、このまま寝かせておこうか。」
なら予定を聴かないと。と外で待機している補佐に聴こうと、美奈は玄関を開けた。




