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巻き込まれて異世界に来てしまったけど、聖女とか関係ないのでのんびりします。

1.


「・・・・・・つ、疲れたっ。」

疲労を抱えた身体を、無理やり動かしどうにか電車に乗り、自宅の最寄り駅で降りる。改札を出ると、冷たい風がさらに身体を刺激していた。

「ううう・・・・。か、帰ったら、あったかいお風呂に入って、ご飯を食べて、見逃し配信を見て。書き溜めて来た小説の続きをパソるぞっ」

北風にも負けずに、自宅に向かう。途中のスーパーで買い物をして、ようやくついた自宅マンションにホッとした。

鍵を差し込み、ドアを開けて中に入り、着ていたコートを脱ぎつつワンルームの部屋を歩く。買ってきた物を、冷蔵庫に直してお風呂に行きバスタブにお湯をためる。その間に、エアコンをつけて室内を温めておく。狭いキッチンに行くと、軽く夕食の用意をする。

「あ、お湯がたまった。先にお風呂っ。」

と、いつもの日常の流れだったのだが。


「・・・・・・ここ、どこですか」

眼の前に広がるどう見ても、ローマ法王が着ているような服を着ているひと達が、なにか光る円陣の周りを囲っていて。良く見ると、もうひとり女性がいて。その女性も、周りを不思議そうにきょろきょろと見回していた。

「召喚が成功したようだなっ」

いきなり扉が開き、金髪の若い男性が入って来て。円陣の真ん中に座り呆けている女性のところへ行く。

(・・・・・私は素通りかいっ)

その男性は、女性の前に跪くと、その手を取り甲に口づけた。

「ようこそ、我が国へ。聖女よ」

「え?」

女性は惚けながらも、立ち上がらされ、その男性と向き合う。ここで座ったままになっている、私には目もくれずに、二人の世界に入ってしまっていた。

「・・・・・あのぉ・・・・・。ここは、どこでしょうか?」

おずおずと手を挙げて声を出す。すると、ようやく私の存在に気付いたのか、全員が驚いていた。

「ど、どういうことだ!? 召喚は確かひとりだけではなかったのか!?」

「わ、解かりませんっ。ど、どうして2人・・・・!?」

周りのひと達も慌てふためいて、この状況が良く解かっていないようで。だが、その金髪の男性は、私を見て鼻で笑うと云った。

「はっ。どう見ても、聖女はこちらの女性だろう。そっちのはどう見ても、歳を取りすぎている。それに、太いし。・・・・後は任せるぞ。聖女様を休ませねば」

と云って、部屋から出て行く男性に、そこにいた人たちは一応、頭を下げて見送る。私はひとり、茫然としていた。

「・・・・とりあえず、こちらへどうぞ。状況をご説明いたします」

その場を仕切っていたのか、髪の長い男性が私に声をかけて来る。私は仕方なく、立ち上がると案内される部屋へ歩いた。


長々と話を聴いた結果、ようするに自分が元居た世界には戻れない。と云うことが判り、私は愕然としていた。

「・・・・・・本来であれば、召喚される聖女はひとりだったのですが。」

「・・・・・・巻き込まれた、と」

「そう・・・・、です。どうして、あなた様までが召喚されたのかは、申し訳ございませんが我々でも解からないのです・・・・・」

申し訳なさそうに話して来る神官みたいな人に、怒る気力も出て来ず。私は、深く深くそれこそマントルに届くんじゃないか。と思うぐらいに、息を吐いた。

「はぁーーーーーー・・・・・・・・・・・・・。解かりました。ところで、あの金髪の男性は、どなたでしょう?」

もう一人の女性を連れて行った男性を思い出して訊く。と、そこに靴音が近づいて来て、扉が開けられた。

「こちらに、もうひとりのお方がいらっしゃると聴いて来た。」

「・・・・ロ、ロイ殿下! は、はい。こちらにいらっしゃいます。いま、お話しを・・・・・」

神官が立ち上がり、頭を下げて話す。ロイ殿下、と呼ばれたその男性は、さっきの金髪の男性とは違い、少し茶色がかった髪の色をしていた。

「初めまして。私は、このアルフォード大国、スペード公国の第2皇子、ロイ・シトリン・スペードと申します。この度は、我が兄、レイ・ルビー・スペードが大変失礼なことをしてしまい、大変申し訳ございませんでした。兄に代わり、深く謝罪いたします」

神官よりも深く深く頭を下げて、私に謝ってくれる。私は慌てて、云った。

「あ、あの。頭を上げてください。あなたがしたことではないですし。・・・・えっと、私は、御厨 美奈と云います」

ここで、ようやく名前を云った私を、ロイは本当に申し訳なさそうにして見上げる。

(・・・・うわぁ。美形はどんな顔をしても、美形なんだなぁ・・・・・)

などと、思わず思ってしまうぐらいで。とりあえず、話しを。とロイも椅子に座った。

「・・・・・・本当に、申し訳ない。聖女召喚は、父とも母とも話し合い、絶対にしてはならない行為だと兄にずっと話していたのですが・・・・。まさか、勝手に召喚術を行うとは、思ってもいませんでした。それで・・・・・・。」

「帰れないと云うことは聴きました。それで、おばはんと云われましたけどね」

確かに、私は40歳のアラフォーで、小太りですけどねっ。と、云う。すると、ロイの顔色がものすごく変わった。

「そ、そのようなことを兄が!? 本当かっ、神官!」

「は、はい。・・・・・・もうひとりのお方を連れて行かれる時に・・・・・」

「重ね重ね、本当に申し訳ないっ。このことは、母に強く申し立てておきます。」

また、頭を下げて謝ってくれるロイに、私は頭を上げるように云う。ロイは私を見ると、ますます眉を下げた。

「・・・・・それで、この国のことですが。どこまでお話を聴かれていますか?」

「まだ、国のことまでは聴いていません。・・・・・聖女が必要になり、別の世界から召喚をした。のと、自分がいた世界には戻れないと云うこと、かな」

私が神官から聴いていたことを話すと、ロイは続きは私から。と口を開いた。

「このアルフォード大国は、4つの公国にて統一されています。ひとつは、我がスペード公国です。残りの3公国が、ダイヤ・ハート・クローバーとなっています。ダイヤとハートは女王が治め、クローバーとスペードは王が治めています。大国の周りにある森には、魔物が住みついていて。各公国が結界を張り、魔物の立ち入りを食い止めています。」

ここで、ロイが話を止めて、私をジッと見る。

「・・・・聖女様は、その結界を強化するために必要なお方であり。各公国に、聖女様が教会に守られ、その結界を護っておられます。ただ、我がスペード公国にいらした聖女様が、ご高齢になられその任をアルフォード神より解任されました。それにより、我がスペード公国は聖女様が不在になってしまったのです。」

ここからは、と神官が続ける。

「そのため、早急に聖女様が必要になりました。ですが、公国内に聖女になられるまでの巫女がおらず・・・・。国王とも何度も会議を行い、聖女様の育成を早めるべきであると話し合いを繰り返していたのですが・・・・。」

「退任された聖女様が張ってくださっていた結界が、綻びを見せ始め、魔物たちが公国内に侵入を始めたのです。騎士団たちが頑張ってはくれていますが、どうしても力の差が歴然であり。国と公国民を守るために、聖女様のお力が必要となったのです。」

悲痛な表情をして話す、神官とロイを見て、私は強くは云えなくなってしまい。はぁ、と肩を落とした。

「それで、あなたのお兄様が強硬手段に出た。と、云うことですか。」

「・・・・・・はい。本当に、あなた様には申し訳ないことをしてしまいました。私にできることがあれば・・・・!!」

帰れないなら仕方がない。私は腹をくくることにした。

「では、お願いがあります。私は、巻き込まれてこの国へ来てしまったわけだから。なんの力も持っていないですよね。」

「は、はい。・・・・・・おそらくは」

おそらくは? と云う言葉が気にはなりはしたが、続けた。

「帰れないとなれば、もうこの世界で生きていくしかないわけです。」

「はい・・・・・・」

しょんぼり、と落胆をする姿が、大型犬に見えてしまい、笑ってしまいそうになるのを堪える。

「それで、私の住む家を用意して欲しいです。できれば、自然に囲まれた誰も来れないようなところが良いです。」

「家・・・・・。も、もちろんですっ。」

「ありがとうございます。それと、できればすぐに生活ができるように必要最低限の物は、用意して欲しいです。それだけ用意してくれれば、私はなにも云わないし、王族の方とも接しません」

きっぱりと云いきった私を見て、ロイはなぜか悲しそうな顔をしていた。



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