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第九話 第十六階層、十七階層、十八階層

「ここは、速攻で抜ける。ここには牛と首から上が人間で首から下は馬の群れだ。まともにやって勝てる可能性はほとんどない」


 アタイはすでに牛を三頭(ほふ)った。道を歩けば牛に出会うって感じだ。馬はダメだ。人間の言葉を話すし、牛以上にタフだ。しかも群れで襲って来るので、逃げるしかない。


 勇敢なロス君は馬に挑んで、蹴られてどこかに飛ばされた。不死身のロスだから、きっと生きているだろう。



「第十七階層だが、死霊しかいない。死霊の歌を聴くと魂が抜かれて、永遠に目が覚めない。耳に綿をして降りるように。死霊には物理攻撃はまったく効かない」


 アタイは幽霊系はダメなんだよ。これってアタイがビビるって知っていたから、黙っていたんだろう。もし最初に知っていたら、何が何でも断っていたもの。ホラー系は苦手だよ。



 十七階層、ともかく寒い。真冬なのに下着で外に出たって感じ。耳に綿をしているけど、風の音が聞こえてしまう。何か呪いの言葉が聞こえてくるし。気持ち悪い。


「あれは、吸魂鬼だ。耳を塞げ。奴の言葉を聞くな! 魂を取られるぞ」


 アタイはすぐに耳を塞いだ。ベンさんのとこの戦士さんが倒れた。苦痛で顔が歪んでいる。


「ベン、もう奴は骸骨になってここをさまようしかない。お前が良ければ人間のうちに燃やすが」


「親方、お願いするよ」


 親方の魔術師が戦士さんを燃やした。


 十七階層にて死者一名が出た。


 ロス君が耳栓もせず、十七階層の私たちに合流した。吸魂鬼がロス君の上空で何か言っているみたいだけど、平気みたい。なぜだろう? 不死身だから?


 吸魂鬼が諦めていなくなったとこで、ソルドの親方が十八階層対策のアイテムを各パーティに配った。ロス君はベンさんにお願いして亡くなった戦士さんのアイテムを一日千ダルでレンタルしていた。


 何これ、フルフェイスのヘルメットに、ゴム製の服とゴム製のグローブを渡された。ゴム製の服を着てフルフェイスのヘルメットを被って、ゴム製の服に付いているフォックをパチンとして密着させて、グローブをはめる。


 視界が狭い。声があんまり聞こえない。


「ゴム製の服が破れたら、ポケットに入っている補修材で修理すること。破れ目から濾過ろかしてない空気が入り続ければ、死ぬ」


 ソルドの親方から注意事項が説明された。いつものようにロス君は聞いていない。



 十八階層に入った。木が歩いている。樹木人と言うらしい。攻撃はして来ないみたい。


「ぎゃあ、何か踏んだ!」


 黒くてすべすべして平べったい虫を踏んでいた。ここって植物だけじゃないんだ。ヘルメットを被っているからよく見えないけれど、昆虫も多い。


 アタイは全身を覆うようにシールドを張って服やヘルメットの中に虫が入って来ないようにした。幽霊も昆虫もまったくダメなアタイにとって、十七階層と十八階層は二度と来たくはないところだ。



「痛えーー、虫に刺された」


「ゴム製の服の補修と解毒剤のポーションを飲め、俺たちもここで何が起こるか、わかっていない」


「ポーションねえ、ヘルメットを脱がずに飲むのとって難しいのだけど」


「ほれ、ストーローで吸え」


「おう、ありがとうね」


 ロス君は樹木人にちょっかいを出して、樹木人の枝がしなったと思ったら、鞭のようにうなってロス君を吹っ飛ばしていた。


「樹木人も攻撃することがあるのか。気を付けよう」


「樹木人にちょっかい掛けるなよ」


「へい、親方」


「ソルドの親方、どうも同じところをグルグル回っているような気がするのですが?」


「ああ、目印が付いている。ここはさっき通ったところだ」


「マッピングしてるのですが、森が変化しているみたいです」


「変化する森をどうやって出れば良いんだよう」


「森を全部燃やすか?」


「一本でも木を燃やせばすべての木が攻撃してくる。この森は一つの生き物だ」


「そうなると完全に詰みですけど」


「ああ、詰みだ。マッピングしても森が変化して元の位置に必ず戻す。俺たちのパーティがここから先は進めないでいる理由だ」


「空でも飛びますか?」


「魔術師がやったが、風で押し戻された」


 この魔術師さん飛べるんだ。良いなあ。アタイも飛びたい。


「まあ、この先どうなっているのか、ちょっと見て来ますね」


 アタイはシールドを足場にしてピョンピョンと跳ねながら空中に昇ったら、木の枝がしなってアタイ目掛けて打ち掛かったきた。軽く避けて先に進む。道が見えたのでそこに着地したら、もう木は攻撃して来なかった。


「ええと、行けるところまで行ってみます。親方」


 そう宣言すると道なりに進んだ。


「ねえ、森さん、アタイ以外は進めないようにしているわけですか? もう、ここ十九階層の降り口なんですけど」


 そう言うことなら降りるしかないかあ。


 アタイは十九階層に降りると、ヘルメットとゴム製の服を脱いだ。誰も盗らないだろうと、降り口の横に置いた。


 ここからは人喰い鬼とゴブリンが支配する階層なんだけど、人喰い鬼の気配もゴブリンの気配もまったくないし、向こうの方に、どう見ても人間の行列が出来ている。ともかく行ってみるしかないかあ。



「あらまあ、何で生きてる人間が冥土めいどに来ちゃったの!」


「あのう、おばあさん、冥土って何ですか?」


「えっ、あんた冥土を知らないの?」


「はい、学校とか行ってないので……、すみません」


「冥土ってあの世のことだよ」


「ここってあの世なんですか!」


「正確に言うとあの世の入口。たまに生き返る者もいるしね」


「おばあさんは亡くなっているのですか?」


「ああ、もう葬式が終わって体は燃えて無くなったから生き返るのは無理さ」


「でも、おばあさんには足がありますけど……」


「幽霊にも足はあるの」


「そうなんですか、ないって思ってました」


 アタイ、幽霊と話してるけど、怖くない。


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