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第八話 第十五階層

 第十二、十三、十四階層もモンスターが凶悪化しているので、中堅冒険者は立ち入り禁止にしないとダメだと思う。十階層から下は牛があちこち、ウロウロしているし。



 アタイも十五階層までしか来たことはない。ここは犬、狼の楽園だ。狼が狩り、犬がそのおこぼれをもらうって感じだけど。


 犬が常にアタイたちの周辺をウロウロしている。狼にまるで獲物がここにいますよって知らせている感じがする。犬と狼が連携している。まあ、ご先祖様は一緒だし当然かあ。


 一流の冒険者たちは、犬ころは無視して進んでいる。全神経を近くにいる狼に集中している。二流の冒険者君はずっと犬たちに追いかけられている。早晩犬の餌になるだろう。


「ここの狼ってこんなに統率とうそつが取れていましたっけ、親方」


「幾つかの群れがあって、争っていたと思う。これが一にして全だ」


 狼も犬も完全に誰かの指示で動いている。どうもアタイたちを誘導している感じが強くする。


 アナキンさんとこの斥候せっこうさんもこの階層全体が罠じゃないかと言い出した。


「さて、この階層の主戦場はどこだろうなあ。下手を打つと全滅ってこともあり得るかもな」


「ソルドの親方、ここは下手に動かず守りに徹した方が良くないですか?」


「ベンとアナキンの言うこともよく分かる。ただここで守っているようじゃ、二十階層には絶対に着けない」


「罠にハマったらそれを食い破る力がないと……」


 ここで何人かが死ぬのだろうか?



「痛えーー、咬まれた」


 斥候さんが傷用高級ポーションを飲んだ。斥候さんにすら気付かれずに接近出来る犬って訓練された忍者犬じゃないかしら。軍用犬だと思う。


 調査隊全体に緊張感が走った。


「ミサ、あの丘で俺たちを睥睨へいげいしている狼がボス、狼たちの王だと俺は思う」


「アタイもそう思うよ。ソルドの親方。なんか威厳って言うかそういう雰囲気があるもの」


「じゃあ、ミサ、アレを仕留めれば俺たちの勝ちってことなのでよろしく」


「うーーん、あそこに行くまでに千頭近くのお犬様か狼様がいると思うんですけどねえ」


「アレを仕留めないとどの道俺たちここで犬の餌になる」


「あのう、もうすぐ犬の餌になりそうな人がいるんですけど」


「ロスも戦力に入れるので、支援魔法を掛けてやれ」


「了解です」


 ロス君に支援魔法を掛けたら急に元気になって一流冒険者の輪の中に入って来た。


「それじゃあ、親方、行って来ます」


「ああ、頑張ってくれ。俺たちも今日一日は頑張るから」


 明日になれば全滅ってことですね。サックとすめば良いんだけど。


 アタイは狼と犬の群れに飛び込んだ。襲い掛かってくる狼たちを回避しながら、狼王に接近する。アタイの後ろからロス君が、狼たちを刺突しながら追って来ている。


 アタイが狼王と戦って、狼王に隙が出来たら、ロス君が止めを刺すつもりみたい。美味しいところは持って行く。まあ、パーティでよくやっていたねえ。一流冒険者の人に良いところを見せたいのはわかるけど……。


 ほら、狼に剣を咥えられて、長剣を奪われた。もう、戻れないよ。どうするつもり?


「支援魔法、支援魔法……」


 ロス君、支援魔法って叫んでいるけどさ、今、支援魔法を重ね掛けしても、こんなに連続攻撃をされたらすぐに効果はなくなるのよ。アタイが優先すべきはロス君より狼王と戦うことなので。さようならあーー。



 狼たちの頭を踏み台にして、丘に着地。


「ぎゃああああーーーー」


 シールドに無数の狼の体毛が突き刺さっている。念のため三枚重ねで張っていたけど、慌ててもう一枚シールドを張ってやっと止められた。


 狼王に瞬殺されるのは免れた。でも、狼王の体はこの鋼鉄より硬い体毛で覆われているってことは、斬れない。体毛を飛ばしたところにはもう毛が生え始めてるし……。



 背中に殺気。


「うわーーーー」


 尻尾がシールドに刺さってる。狼って接近戦じゃないわけ。これじゃあ近寄れないよう。アタイはその後防戦一方になってしまった。アタイは丘の上の軽業師とその後呼ばれることになる。


 空中に張ったシールドを足場にして、狼王の周りを跳ね回ったから。


「ミサさん、防戦一方ですね」


「お前さんにはそう見えるか?」


「ええ、親方」


「俺には狼の方が押されているように見える。狼の攻撃が全部止められて、ミサにはカスリ傷さえつけられていない」


「尻尾の不意打ちが止められれば、ミサの勝ちだ」



 狼王の体毛が薄くなってきたし、後は尻尾さえ押さえられば一気に形勢逆転だよ。来た!


 尻尾がシールドに食い込んだ。しばらくは抜けない。


「やああーーーー」


 狼王の薄くなった横腹の部分に短剣を突き刺し一気に下向きに腹を裂く。速攻で狼王の心臓を取り出して、狼たちに掲げた。


 狼たちが、腹ばいになっていく。アタイに服従していく。


 狼王を見ると、やはり腹ばいになって服従の姿勢になっている。


「そんじゃあ、心臓は返すね」


 狼王が笑ったように感じた。


「ウリャあーーーー」


 ロス君が狼王に向かって行って、尻尾で薙ぎ払われてすっ飛んで行った。



「ロスがこの調査隊になぜ選ばれたのがずっと不思議だったんだがなあ、アレはもしかしたら不死身かもしれねえなあ」


「ソルドの親方、アナキンの斥候が死にました。咬まれたところからの出血が止まらなくて……」


「魔術師、燃やしてやんな。アンデットになったら気の毒だ」


「そうだなあ……」


 十五階層で死者一名が出た。




 

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