第七話 第九・十・十一階層
「えっ……」
「どうして灰色グマが、しかも雄が仲良く十頭もいるのさ」
灰色グマは縄張り意識が強くて群れることはないはず。なのに、アタイたちが来るのが分かっていたかのように、道を塞いでいる。
「こりゃあ、神様か悪魔様のご意志だろうよ。自然にこんなことは起こらない」
「ソルドの親方、アタイが三頭は仕留めます。残りはみんなさんでお願いしますね」
「いや、五頭がミサで残りが俺たちでよろしく」
半分を受け持ってって、ちょっとシンドイんですけど。どう見ても連携が取れるクマさんに見えるし。
「加速、超加速、超、超加速」
アタイは灰色グマの中でも一番デカいクマに向かって行った。
「ほえ」
デカいのにめっちゃ速い、初撃を避けられた」アタイは空中に飛び上がり、クマの攻撃を躱したら、別のクマがアタイを襲う。コイツはそれほど速くないので、あっさりクビを飛ばした。
軽業師のように宙を舞いながら、四頭を倒した。灰色グマのボスの後ろを取った、勝ったと思ったら、アタイが逆に取られていた。魔法が使えるクマさんでしょうか?
「とりゃあーー」
クマさんのブットい右前足が振り下ろされる前に切断。次に右後ろ足も切断して、灰色グマが倒れたところを仕留めた。
「やはり、誰かの意思を感じる。クマは誰かに転移させられたような感じがした」
ソルドの親方のところの魔術師さんがポツリとつぶやいたのが聞こえた。アタイのノルマは終了したので、どうなったのかなって周囲を見たら、すでにクマさんたちを皆さんが解体していた。私が一番最後だった。
アタイもボスクマのクマの肝臓を取り出し、乾燥魔法で乾かした。クマの手のひらは冷凍した。今日の夕食にするつもり。
いつものようにハゲ鷹が上空を舞っているので、解体したクマはファイアボルトで完全に灰にする。
誰もロス君のことは気にかけることなく、第十階層の降り口を目指して歩き出した。後ろを振り返ると誰かが必死に走って来るのが見えた。
「もう、地上に戻れば良いのに……」
◇
お馴染みの第十階層だけど、ここは犯罪者のキャンプ地でもあるので、注意が必要だ。モンスターより人間が怖い。
人は殺したくないので、ジュンとサオリの訓練の場所には良いけど、アタイとしてはさっさと抜けたい階層だったりする。
「あっ、三十人くらいの盗賊に囲まれたみたい」
「お前ら、見逃してやるから、さっさと失せろ!」
ソルドの親方もあんまり殺しは好きじゃないみたいだ。
「……」
矢が一斉に射掛けられた。一流冒険者には当たっていない。二流冒険者には当たった。軽症のようだ。
「ミサ、楽にしてやれ」
仕方ないなあ、アタイのお手ては真っ赤っか。矢が飛んで来た方向に走った。そして斬ったら、地面に落ちたのは頭蓋骨だった。
「親方、コイツらすでに骸骨です」
「野郎ども骨を燃やせ、でないと元に戻る」
アタイは野郎ではありませんと、軽くツッコミを入れておいた。
骸骨たちを燃やした。なぜかこの階層にいるはずの草食系のモンスターがまったくいない。水場もまったく水が流れていなかった。
人狩りの連中のキャンプを調べたら、檻に入れられた骸骨がウロウロしていたので、綺麗さっぱり燃やして灰にした。
キャンプ地に掘られた井戸にも水がなかった。
十階層で水が汲めないとなると、十一階層の毒が入ってるかもしれない水を補給するしかない。まだあればだけど……。
十一階層の水場は、モンスターは飲んでも大丈夫なんだけど、人間が飲むとお腹を下す水もあったりするので、誰かが実験台になる必要がある。
煮沸をしても飲めない水もある。毒が水に含まれているとアタイは思っている。浄化の魔法で無毒化出来るかどうかも実験してみないとわからない。
◇
十一階層に到着した。十階層で水の補給が出来なかったので、ここで水を補給しないと先に進めない。水場に行く。見た目は綺麗な水なんだけどね。
ロス君が、誰にも頼まれないのに飲んでくれた。結果は腹痛で転げ回っている。
魔術師さんが鑑定したところ、ヒ素が含まれているとのこと。アタイが浄化魔法を掛けると、完全には除去出来ていないけれど、飲める水準にはなったとは言われる。
アナキンさんのところの斥候が泉が湧いているのを見つけて来た。魔術師さんが鑑定したところ、さっきの水場よりもヒ素の量が少ないってことだったので、泉全体に浄化の魔法を掛けたら、飲み水として合格点がもらえた。
念のため、ロス君に飲んでもらったが、問題はなかった。ここで二十階層までの水を補給する。
十一階層を調べたら、牛型モンスター三頭が確認が出来た。また、モグラの数が異常に多い。ロス君が地面を転げ回ったことで、ロス君はモグラに目を付けられたようでよく襲われていた。
アタイを都合よくまだ自分のパーティメンバーだと思っているようで、支援魔法を要求してくる。ソルドの親方の顔を見ると首を横に振るので、無視している。
ロス君には人に頼らず早く自立してほしい。




