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第六話 調査隊

「調査隊の任務は二十階層にまで潜り、ダンジョンが大きく変化した原因を探ること。三大パーティのリーダーとその部下と十五階層に到達したパーティのリーダーのロス君」


「それと、先日牛型モンスターを一人で倒したミサ君も参加する。ミサ君は、ソルドの指示以外は従わない。またソルドにもしものことがあれば、ミサ君は即座に撤退することになっている」


 ギルド長が調査隊の任務の説明と私の参加条件を説明した。


「相変わらずの臆病者が……」


「ロスさん、アタイ、ソルド親方の部下なんで、支援魔法をくれって言ってもしないからね」


「パーティメンバーを助けないってことはないだろう」


「アタイはあんたの指示には従わないし、はっきり言っておくね、あんたがダンジョンから二度と出て来ないことを願っている」


「俺のパーティを追い出されたことをそんなに恨んでいるのか、まあなあ、そんな小さい人間だから追い出されるわけだ。お前が悪い」


「そう、私は心の狭い魔女だから。ロスさん、あんたのご友人の支援魔法の達人さんに参加してもらえば」


「……」



「俺たちはパーティメンバーじゃない。それぞれのパーティの看板を背負ってギルドの命令で動いているだけだ。重要なのは情報の共有すること」


 ロスはまったく聞いていない。大丈夫かコイツ。


「十五から十七階層のモンスターは群れで襲ってくる。奴らは一にして全。全にして一だ」


 十五階層は狼と犬の群れなのは知っているけれど、十六から十七階層は何が襲って来るのだろう?


 ソルドの親方のパーティは初の十八階層に到達、残り二つのパーティは十六階層を経験している。


「つまり、一頭と言うか一体と言うかだが……、の経験を他のすべてのモンスターが共有する。一頭のモンスターと戦っているのではなく同時に他の何十頭、何百頭のモンスターを相手に戦っていることになる」


「俺たちは十八階層に突入した。そこにに生えている植物はすべて植物型モンスターだ。とにかく空気には気を付けろ。神経性の毒が含まれている。対策をしてておかなければ死ぬ」


 十六、十七階層の説明なしで一気に十八階層ってどう言うことよ。ロスはともかく、アタイへの説明は、まあ後で聞くけど……。


 とにかく空気に気を付けろって言われても、どうするのさ、ソルドの親方説明下手過ぎだよ。


「対策って何だ」


「それは秘密なので、俺と秘密保持契約してもらいで、俺のパーティに百万ダルの支払いが必要だ」


 何それ、ここで商売ですか。アタイ、もう不参加で良いや!


「ソルド、百万ダルはすぐに用意をする。秘密保持契約もする。ソルド、教えてくれ」


「承知した。ベン」


「俺たちもだ。すぐに金は用意する」


「承知した。アナキン」


 どうして皆さん、お金を払ってまで危ないところに行こうとするのか? 冒険者のさがだろうか?


「……」


 ロスには百万ダルの現金はすぐには用意出来ない。つまり、十八階層にはロスは入れない。でも、このメンバーだと、コイツが一番最初に死んでるかな。


「ミサ、あんたには悪いが剣士としての参加だ。先陣を切ってくれ」


 アタイは辞退したいのだけど。


「はあ……、でも、アタイ、百万ダルなんて用意出来ないし……」


「心配ない、ギルド長がミサの分は払ってくれている。ミサは秘密保持契約にサインするだけで良い」


「はあ……」


「ソルドの親方、こいつはノロマの魔女だ。先陣はこのロスが務める」


「好きにしな」


「俺はこの調査隊の隊長だが、俺の部下とミサは俺の指示で動くが、後は各自の判断で動いてくれ。ただし、情報だけは共有すること。それがこの調査隊の唯一のルールだ。守れない奴は、いらない。今すぐとっとと帰れ」



 調査隊がダンジョンに入っるとすぐにダンジョンの入口は封鎖された。ダンジョンの中には一般の冒険者はいない。いるのは犯罪者のみ。


 ロスが一番に飛び出し雑魚モンスターを狩っている。本当に埴輪しかドロップしないね。


 現在、第八階層、いつも通りロスが雑魚モンスターに一撃を入れに飛び出したが、それはウサギのモンスターが張った罠で、餌にされたモンスターのその周りにはウサギのモンスターの群れが待ち構えていた。


「八階層で罠を張るモンスターってあり得ないんだけど」


「もうここは、俺たちが知っているダンジョンとは別ものになったと思った方が良いぜ」


 ロスがこっちを見て、大騒ぎをしている。何でだろう。ウサギなんてお得意の連続刺突で簡単に囲みを抜けられるだろうに。


 誰も動かないので、覚悟を決めたみたい。ロス君は突貫してウサギの囲みを抜けた。ロスの後をウサギの群れが付いて行く。


「獲物が疲れたら襲うつもりだな。賢いウサギだ」


 ロス君がウサギの餌になってくれたお陰でアタイたちは安全に進める。


「これって八階層のモンスターがやることかよ。初心者マークだと絶対死ぬな」


「中堅クラスもヤバいと思うぜ」


 調査隊員が口々に感想を言っている。誰もロス君の心配はしていない。ゆるゆると歩いている。全周囲を警戒しながらだけど。ここはすでに未知の領域だ。



 九階層への降り口、通路が狭くなっているので、ウサギたちも一斉にロス君を襲えない。でも、ロスの服がところどころ破られている。


 一流の冒険者なら、服をウサギごときに服を破られることはない。そう言うことでロス君は二流冒険者であることが確定した。


「お前ら、ウサギを排除しろ邪魔だ、その前にいる奴に間違って当てても良い」


 ソルドの親方が弓使いと魔術師に指示を出した。弓使いが矢を一本いると何本もの矢になってウサギを狩っている。魔法が付与された矢だ。


 魔術師は小石を宙に飛ばすと幾百もの小石がウサギを襲う。あっという間にウサギは死体になっていた。ドロップしてきたのはお約束通りの埴輪だった。


 やはり一流は違う。ロス君は殺されるとでも思ったのか腰を抜かしていた。私たちは誰もロス君を助けることなく、九階層に降りた。


「えっ………」



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