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第二十九話 決戦(エピローグ)

 宮殿の門は音もなく開いた。まるでアタイたちを歓迎するかの様だ。


 玄関の扉は大理石で出来ていた。左右に立っている天使の像が開けてくれた。ここまではお客様扱いだったが、中に入った途端、下級悪魔が押し寄せて来た。


 黒龍様は、これで手加減しているのって思うくらいの強力なブレスを吐いていた。アタイも聖魔剣を振るう。下級悪魔だと当たってないのに消える。


 床から手が伸びたら、短剣でジュンとサオリが短剣を振るっている。


「何か虫退治をしている気分になるよな、サオリ」


「私たちの最初の依頼がネズミ退治に虫の駆除だったからずっと中腰で大変だったねジュン」


「ああ、そうだったなあ……」


「ミサ、大物様が登場だ。シールドを張れるだけ三百六十度張っておけ! 直撃を一発くらうと三人まとめて死ぬぞ!」


 ダンジョンマスターがお出ましなの。一発くらうとって何を?


 先代黒龍様がのっそり出て来た。やはり寝ている。で、ブレスを吐いた。黒龍様も応戦したけれど、アタイたちは近づき過ぎていた。一部がアタイのシールドにぶち当たった。


「シールドが溶ける。マジでヤバい」アタイはアタイに支援魔法を掛けた。


「アタイたち、生きている?」


「大丈夫みたい」


「二発目が来そう?」


 アタイはちょっと目が霞んで見えない。


「大丈夫。先代様は大いびきで爆睡しているから」


 アタイはホッとして床に座りたくなった。


「龍って本当に使えないねえ! デカいだけじゃないかあ」


 ダンジョンマスターが現れた。羽根が三十一枚と半分。本来なら三十二枚あったであろう美しい天使がアタイたちの目の前にいる。目が霞んでいても見える。


「元神の御使、堕天使ルシフェル。親父殿に詫び入れて天界に戻ったらどうだ。親父が仕事で忙しいのなら、お前が手伝え」


「私は悪くない。父上の頭が固いだけ……」


「ミサ、さっきと同じだけシールドを張れ! ブレスが来るぞ」


 アタイは自分自身に支援魔法を重ね掛けしてシールドを張った。たしかにブレスを受けたけれど、先代様よりも格段に弱い威力しかなかった。紛い物のブレス?


「ドラゴンソード、ドラゴンランス!」


 黒龍様に無数の剣と槍が刺さっていた。


「お前の親父の拳の方が効いたぜ。坊や」


 もはやダンジョンマスターは何でもありだった。キメラモンスター、悪魔、堕天使を召喚してアタイたちを襲い続けた。このままだといずれはアタイたちは力が尽きて、お陀仏になる。


 アタイの悪運もここまでかって思ったら、黒龍様が「空間展開」と詠唱するとアタイたちとダンジョンマスター、黒龍様が、別の空間に入った様な気がした。


「ドラゴンソード、ドラゴンランス」とダンジョンマスターが叫んでもこれまでの様にはならなかった。


「俺がよう、お前の親父のチート能力を無効化するための努力をしなかったと思うのか? 坊や」


「ここは、どこだ? 黒龍!」


「ここは俺が神になる世界だ。親父に会ったらちゃんと説明しておけ」


 黒龍様がブレスを吐いた。純白だったダンジョンマスターの羽根が灰色になった。


「ミサ、こいつの真名、本当の名前はルシフェル。ルシフェル覚悟って言いながら聖魔剣で斬りつけてみろ。こいつのお陰で多くのお前の友人、知人が死んだんだろう。そのかたき打ちだな……」


「やめろ、やめろ、私はこの世界の創造主になる者だ」


「ルシフェル覚悟」と叫びながら聖魔剣をルシフェルを斬った。羽根が十数本根元から斬れた。


「堕天使、悪魔、私を助けに来い!」


 ルシフェルが叫んでも誰も来なかった。


「ルシフェル、もう気が済んだか? 親父の元に送ってやるよ」


「やめろ、黒龍、やめてください。お願いします……」


 黒龍様は、ぼろぼろになっているルシフェルにブレスを噴きかけた。ルシフェルの体が粒子になってキラキラ輝きながら天界に戻って行く。


 アタイたちは、元のダンジョン九十九階層に戻っていた。でも、そこは白亜の宮殿も何もなかった。


「黒龍様、このダンジョンは今後どうなるのでしょうか?」


「モンスターが生まれるダンジョンなら、他のダンジョンと同じになるな。まあもうどこからかモンスターを連れてくる奴もいないし。俺は知らねえよ。成るようになるさ」



 アタイたちは、ダンジョンの外に転移し、黒龍様は龍の谷に戻って行った。


「マスターの顔でも見に行こうか? きっとアタイたちの事をめちゃ心配しているだろうしさ」


 マスターのお店に行ったら、しばらく臨時休業って張り紙がしてあった。アタイたちは合鍵でお店に入ったら、マスターがお酒を飲んでいた。


「今日も休みだよ!」


「マスター、ただ今、今戻りました。マスターどうしたのですか? お店のお酒には手をつけないって言っていたのに」


「ミサ、ジュン、サオリ! 皆んな生きていたんだね……」


 マスターが大号泣してしまった。アタイたちもいつの間にか泣いていた。


 アタイたちは、ギルド長にも報告をしに行った。未だに龍の谷に行った冒険者は戻って来ていない。国王陛下はまた冒険者を集めて、龍の谷に行くように命令したらしい。


 アタイは王都に呼び出されて、王女アンリエッタ様は現在、神の巫女になるべく、あるところで修行中でおそらく、三年ほどで王都に戻って来ると国王陛下に報告した。


 もし、王女と連絡を付けたければ、アタイだけがそこに行けるので、国王陛下が手紙を書いてくれれば持って行くと言ったら、束になった手紙をアタイに渡して、すぐに届ける様にと言われた。よっぽど可愛いんだ。でも、迎えに行かされた冒険者はたちは?


 国王からの依頼はほぼ毎日、三年後王女が世界樹の巫女になって戻って来るまで続いた。


 ルシフェルのダンジョンは十九階層まで潜れる。とは言え誰も冥府めいふに行きたい人はいないので、ベテラン冒険者は十階層あたりで狩りをしている。それなりに稼げる。初心者と中級冒険者はこのダンジョンは無理なので別のところに移って行った。


 アタイたちもマスターのお店が暇な時はダンジョンに潜って稼いでいる。運が良ければドロップもある。埴輪が多いけど……。


「ねえ、あんたたち、早く冒険者を引退してアタシの養子になってよ」と、毎日の様に言われている。


 今日もこの街は平和だ。

最終話です。ここまでお読み頂きありがとうございます。

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