第二十六話 先代黒龍現れる
地割れが起きている。そこから悪魔が三体と堕天使が三体現れた。
「雑魚ばかりかと思ったら、世界樹の管理者さんもいるじゃないか。楽しめそうだ」
エルフの兵士が矢を放ったがすべて消えた。
ミアのお父さんが隊列を抜けて私たちの中に加わった。
「コイツらは陽動だ。本隊は黒龍殿の近くに隠れている」
アタイは冒険者になって初めて恐怖を感じた。
「ミサさんは、悪魔をお願いします。僕とルフは堕天使に当たります」
「アタイが悪魔三体ですか?」
「心配ありません。上級悪魔ですがまだ若いですから」
アタイには悪魔の年齢は分からない。リュケアさんが小声でアタイに対処方法を教えてくれた。出来なければアタイは死ぬ。
悪魔さんたちには、どこにも隙がないのですけど……。
「お嬢ちゃんが俺たちの当番なの? なんかガッカリだよね。瞬殺してやる」
一体の悪魔が来た。早い、シールドは間に合わない。右、左、どっちだ。
「右だ!」
アタイは悪魔用の短刀を空中に渾身の力を込めて刺した。悪魔が倒れている。
二体の悪魔が高速でアタイの周りを回っている。シールド五枚を張っても悪魔の鋭い爪がシールドを破る。アタイはシールドを飛び出した。
「逃がさないよ」
アタイは世界樹の結界の近くに着地したところに、悪魔の鋭い爪が、アタイの顔を抉る様に伸びて来た。アタイは必死で躱す。爪は結界に刺さっている。姿は見えないけれど、短刀を突き刺す。悪魔が倒れた。
「お嬢ちゃん、遊びは終わりだ」
倒れた悪魔たちが残った悪魔に吸収された。悪魔の体が巨大化している。
「ふう、助かった。加速、超加速、超、超加速」
アタイは、巨大化した悪魔を切りつける。的が大きいのでいくらでも当てられる。
特大ファイアボールが飛んで来た。世界樹の結界に当たって大地が揺れた。巫女さんの一人倒れたのが見えた。
「俺をそんなオモチャで倒せるものか!」
「兵士の皆さん、このデカブツに矢を放って!」
「俺に矢は効かない!」
悪魔に数十本の矢が当たった。
「お前が放たれた矢を空間を歪めて消しているのは、わかっているんだ。お前の体に封印の術式を刻んだ。お前の魔力は封じた。エルフの矢で消え失せろ!」
エルフの兵士が矢を放てば、デカブツに確実に当たる。アタイの支援魔法はやっぱり一流だね。でも、リュケアさんから封印の術式をサラッと教えられた時は、本当に大丈夫かと思ったよ。ぶっつけ本番は厳しい。
リュケアさんとミアのお父さんのルフさんは舞を舞う様に堕天使たちに近づき羽根を一枚ずつ切り取っている。凄い。三体の堕天使は羽根を切られるたびに、攻撃力が落ちている。羽根が堕天使の力の源なんだ。
三体とも逃げに入った。二体は地面の破れ目に逃げ込んだ。一体は逃げ遅れて、リュケアさんとルフさんにすべての羽根を落とされて消滅した。
巫女さんがまた今度は数人が倒れた。世界樹の結界が弱まる。
「世界樹から離れろ! 出て来るぞ」
黒龍様が叫んだ。と同時に地震が来た。黒龍殿がいる地面が大きく割れて黒龍様が現れた。
黒龍が二体、ブレスを吐いている。ブレスは真ん中でぶつかり合って消えた。
「リュケア、現在の黒龍と先代の黒龍を世界樹の近くで争わせて、世界樹を倒すつもりではないのか」
「ああ、そうだね。堕天使や悪魔では世界樹は倒せない。超ド級の自然災害級の力が必要だからね」
「リュケア、なぜ落ち着いている」
「ルフ、先代黒龍をよく見ろよ」
「うん……」
「寝ている」
「ルフ、皆に指示を」
「ああ、巫女に回復薬を飲ませろ、祈れるものは皆、祈れ! 世界樹の結界を強化せよ」
アタイはエルフさんたちに回復魔法を掛けて回った。倒れた巫女さんたちもまた祈り出した。世界樹の結界は強化された。
黒龍様が先代黒龍様を地割れに叩き込んだ。
「地の精霊を呼び出し地割れを元に戻せ!」
ルフさんと兵士たちが精霊魔法で地の精霊を呼び出し地面を修復する。長老たちもいつの間にか兵士たちの中にいた。
「若い連中はまだまだちゃんと精霊魔法が使えておらんな。訓練が必要だな」
疲れきったエルフの戦士さんの表情は勝ったのに暗かった。
現黒龍様が人の姿になって、ブツクサ言いながらこちらにやって来た。
「腹立つわあ、先代を引っ張り出すなんてよ。あのバカ息子必ず絞めてやっから。龍をオモチャにしたらどうなるのか思い知らせてやるぜ!」
完全なお怒りモードなのでアタイは近づかない。ふと、アンリエッタを見るとじっと世界樹を見つめている。
「神様だ。神気を感じる。黒龍様にはまったくない神気を感じる。私はこの樹の巫女になるべきなのだ!」
宗教的な事はまったくわからないけれど、世界樹の巫女さんに成りたければ成れば良いと思う。第一、アタイはお姫様を縄で縛る許可書もないし、連れて帰れないから。
「リュケア様、一応終わったみたいなので、私たち街に帰ります」
「たぶん、ミサさんは、これから里と街を往復してもらう事になりそうだから、旅人の印をミサさんに授けるね」
私はもうお役御免で良いのだけど。まだ、あんなのとやり合うなんて! やってられないよ。
「おい、ミサ、あのバカ息子絞めに行くから付いて来い」
「私たち、一度街に帰って休みたいです」
「ウルセイ、ごちゃごちゃ言うな行くぞ!」
そんな強引な、気付けばアタイたちはダンジョンの中にいた。




