第二十五話 オシャレな堕天使
羽根が十三枚の堕天使が空中に浮いている。見た目は天使様なのだけれど、里のエルフさんたちに嫌がらせをしている。
「はあ、面倒くさいね。どうして私が羽虫を担当しないといけないのかねえ」
エルフさんたちは精霊に祈って堕天使に攻撃をしているけれど、火球を飛ばしても、氷柱を飛ばしても堕天使の前で全て消えてしまう。普通の矢を射っても同じ、堕天使に当たる前に消えている。
「ミサさん、あの堕天使何をしているの? 私たちのこと完全に無視している様に見えるけど」
「様に見えるではなく、まったく見ていないよ。一生懸命爪のお手入れをしてるわ」
「俺にはあの堕天使の目的がわからないよ」
「目的はたぶん、自分を見てほしいのではないかなあ?」
「俺たちをガン無視してるのに」
「視線は感じているのでは……」
堕天使がここにいるお陰でアタイたちは他の場所に移動出来ない。突然、怒りだして周囲を燃やしたりするので放置も出来ない。本当に厄介な奴だ。
アタイは黒龍様の鱗から作られた短剣を持って、ヒョイヒョイと堕天使に近づいた。羽毛が無数に飛んで来たけれど、シールドに刺さって問題なし。で、堕天使のの羽根をスパッと切った。
ハラハラと羽根が地面に落ちた。
堕天使は自分の羽の状態に気付くと体全身が燃えた様になって「殺す、殺す。絶対に殺す!」歌う様に繰り返し言い始めた。
「ミサさん、なんか堕天使を本気で怒らしたみたいだけど」
アタイはハラハラと落ちて来た羽根を一枚拾って、堕天使にヒラヒラさせてみた。
「お前かあ!」
アタイは逃げた。出来るだけ里から遠くへ。堕天使は速攻で追いかけてくる。アタイは必死に逃げる。沼の側で堕天使を迎え撃つ事にした。
堕天使は頭に来ているので攻撃が単調になっているので読みやすい。また堕天使の羽根を少し切ってみた。沼の上に堕天使を誘導して、アタイに意識を集中させている間に沼の泥を堕天使に浴びせた。ほとんど防がれたがほんの少し、堕天使に泥がついた。
「ぎゃあああああーーーー!」
堕天使が叫び出した。
「お前は絶対に殺すからなあ、絶対にだぞ。泥の中に埋めてやる! もう、私の体を浄めなければ、羽根の長さをちゃんと揃えないと、お前、絶対に殺すからな待ていろよ」
堕天使がそう叫ぶと消えた。
◇
「ミサさん、凄い叫び声が聞こえたけれど、堕天使を倒したの?」
「うううん、ちょっと堕天使さんに沼の泥を付けたら叫び出して、帰った」
「帰っただけ?」
「うん、帰っただけ」
何となくだけど当分戻っては来ない気がする。短剣だと堕天使の羽根を切るのがせいぜいなので、何とかならないものだろうか? 次に会ったら、おそらく完全防備でアタイを襲って来ると思うし……。
堕天使にどう対応したら良いのやら。
「はあーー」
皮袋の中のハゼの実が弾けた。緊急招集だ。
「ジュン、サオリ、緊急招集だ。世界樹のところに行くよ! 里の皆さんは魔獣の討伐頑張ってください」
アタイたちは走り出す。結界の前で泣いているあれを無視して通り過ぎようとしたら背中に何かが貼り付いた。止まるわけも行かずそのまま結界を通り抜けると唖然とした。
悪魔とキメラモンスターと堕天使がわんさか世界樹の周りに密集している。
「何これ、世界の終わりなの」って声が聞こえた。あれがアタイに貼り付いている。
「アンリエッタ、アタイから離れろ!」
「言われなくても、離れるわよ。下郎が」
アンリエッタってボキャブラリーが少ないのかもしれないなあ。
「リュケアさん、これは一体……」
リュケアさんは微笑んでいる。
「世界樹の結界がまた突破された。巫女たちが最終防衛の結界の維持に全力を注いでいる。でも、ほらキメラモンスターが結界内にたまに現れる」
キメラモンスターは地面からわいて来る。それを世界樹の前にドッカと座り込んだ黒龍様がブレスで消滅させている。
「リュケアさん、アタイは何をすれば良いのでしょうか?」
「僕とミサさんは世界樹の周りに集まっている、堕天使と悪魔を滅する」
「でも、私では悪魔を倒す武器がありません。堕天使も羽根を数枚切ることしか出来ません」
「悪魔用の短刀をミサに上げる。これで刺せば中級クラスの悪魔までは倒せる。堕天使は羽根から神力を得ているので、ある程度切れば逃げ出す」
「ジュン、サオリは魔獣を始末して、絶対に悪魔、堕天使には近寄らないこと」
◇
アタイとリュケアさんは悪魔と堕天使退治が永遠に続くかの様に戦い続けた。どのくらい倒したのか逃げ出したのか? まったくわからない。
エルフの兵士、ミアの父親たちは巫女たちに近づいて来る、悪魔と堕天使とキメラモンスターを倒している。
今は黒龍様は世界樹の前で座っている。なんか寝ている様にも見える。ジュンとサオリは地面に落ちて来たキメラモンスターにトドメを刺している。
この戦いはいつまで続くのだろう。アタイ、かなり疲れて来た。
突然、悪魔、堕天使、キメラモンスターが消えた。アタイはホッとしたけど、リュケアさんは緊張している。
「皆んな、本隊が攻めて来る。頑張ってください」
えっ、あれが本隊ではないの。
黒龍様が立ち上がって龍の姿になった。巫女たちを守る兵士の顔には余裕が感じられない。
最終決戦が始まる。
「ミサさん、子どもたちを巫女たちの側に行くように指示してください」
「ジュン、サオリ、アンリエッタを抱えて巫女さんたちの近くに行って! 急いで」
ジュンとサオリがアンリエッタを抱えて巫女さんたちの近くに行ったと同時に地震が来た。
「来る!」
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