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第十四話 人喰い鬼

 ソルドの親方のパーティの人たちが中心になって救援隊が編成された。百名の冒険者が志願した。


 百名の冒険者が救援隊に参加してきた主な理由は生活の困窮。純粋にソルドの親方たちを助けたい冒険者は三大パーティのメンバーだけ。たぶん多くて十人程度だと思う。


 一稼ぎして、今のダンジョンの様子を見る。彼らは危ないと思ったら、すぐに逃げ出す。周りがどうなろうが関係ない。冒険者は自分さえ生き延びれば良いのだから。



「ダンジョンは皆さんが知っていたダンジョンではありません。凶悪なモンスターが第一階層から出現します。第三階層には人喰い鬼がいます。罠を張ってくる利口なモンスターも多いので、本当に注意してください」


「最初からハードモードかよ! 痺れるぜえ」


 こいつらウォーモンガーの集まりだった。いつも以上に慎重に行動してほしいって言ったつもりが煽ってしまった。


 アタイたちを含めた第一陣三十人が第一階層突入した。何も起こらなかった。


 第二陣三十五名が入った瞬間から地獄が始まる。第二陣、三十五名はモグラの集団に襲われ、全員が食われた。


 第三陣が突入した。モグラとの戦いは何とか撃退したものの、第一階層から第二階層に行く途中にウサギの群れの奇襲にあい三十五名全員が死んだ。


 第一階層なのにもう七十人の冒険者が死んでしまった。このダンジョンって超上級者冒険者じゃないと入ってはいけないと思う。


 第二階層、牛が多い。もうあれは、レアモンスターじゃなくなったようだ。アタイたちは牛との戦闘を避けて三階層に入った。


 三階層は戦斧せんぷを持った人喰い鬼がゴブリン数千匹を統率している。アタイたちは救援隊は隠密モードに入り、時間が掛かっても迂回して、四階層を目指した。


 それなのに戦斧を持った人喰い鬼の軍団と遭遇した。絶対、ダンジョンマスターがアタイたちの前に配置したに違いない。



「サオリ、矢が一矢が十本になる魔法を掛ける。それと矢がなくなったら、この剣で自分を守れと、ミスリルの短剣を渡した」


「ジュン、サオリが矢を放つ間、サオリは無防備だ。絶対に守れ」


「はい!」


 サオリに向けてゴブリンの粗末な矢が放たれた。その矢のやじりには致命傷になる猛毒が塗ってある。ジュンが矢を叩き折っている。


  サオリもゴブリンに向けて矢を放つ、他のパーティの弓使いもゴブリン目掛けて矢を放つ。すべて命中してるけれど、ゴブリンはどこからかわいてくるようで一向に減っているようには見えない。


 ソルドの親方のとこの、ベンさんとこの、アナキンさんとこの剣士さんが、素晴らしい連携で人喰い鬼を圧倒している。アタイは支援魔法を掛けまくっている。


 でも、人喰い鬼は牛以上の再生能力があって、頭を落としても、両腕を切断してもすぐに再生してしまう。これでは、アタイたちがいずれ潰される。


「ジュン、サオリ、アタイが人喰い鬼の動きを止める。十五分ゴブリンの攻撃を二人で凌いでほしい。きっかり十五分」


 アタイは剣士が斬り落とした腕が握る人喰い鬼の戦斧を手に取った。


「十五分で蹴りを付ける。加速、超加速、超、超加速、筋力強化、最大筋力強化!」


 真正面から人喰い鬼に突進する。人喰い鬼の両手から巨大ファイアボルトが放たれた。


「ええ、人喰い鬼って魔法が使えたの」


 アタイは戦斧でファイアボルトを防いだ。


「サオリ、人喰い鬼の目に矢を放って! ジュン、サオリにゴブリンを近づけさすな」


「はい!」


 人喰い鬼の両目にサオリの矢が刺さった。魔法で抜けないようにした。でも、目の玉ごと人喰い鬼は矢を引き抜いた。再生が始まる。


 アタイは跳躍をして人喰い鬼の脳天に戦斧を叩きつけた。一瞬人喰い鬼の動きが止まった。


 人喰い鬼が見せたその一瞬の隙に三人の剣士が人喰い鬼を切り刻む。


 十五分、アタイは戦斧をジュンに群がるゴブリンの中に投げ入れた。そしてその後に続いてアタイも斬り込んでこんだ。


 もうどれだけのゴブリンを殺したのか数えられなかった。何度も攻めてくるゴブリンをアタイは二度と雑魚モンスター扱いをするのはやめようと決めた。


 ゴブリンって、本当にしつこい。


 サオリは放つ矢がなくなり、ゴブリンとミスリルの短剣で戦っている。ジュンはそのカバーをしている。


「ウリャあああ、ゴブリンの雑魚ども、さっさと撤退しろーーーー」


 ようやく人喰い鬼が倒れた、再生もしない。それを見たゴブリンは我さきに逃げ出し始めた。誰も追いかけない。


 終わった。


「ジュン、サオリ、ケガはない?」


「はい、大丈夫です。少し疲れただけです」


 第三階層で古参冒険者が十三名も死んだ。ハードモード過ぎるぞ。ダンジョンマスター!


 アタイは人喰い鬼とゴブリンをファイアボルトで完全に灰にした。


 亡くなった古参冒険者の遺体は、そのパーティの代表者が責任を持って灰にした。アンデット化しないように。


 亡くなった冒険者の装備は、家族のいる人の装備で携行できそうな物はそのパーティのその代表者が預かった。それ以外の装備は、生き残っているゴブリンが使用出来ないように徹底的に破壊した。


「ここって、まで三階層だよなあ……」


「人喰い鬼はもう現れない?」


「たぶん、ダンジョンマスターがまたどこからか連れてくると思うよ……」


「ゴブリンをこのまま放置するのは危険だ。三階層だと連中、街に出て来るぜ」


「ゴブリンを根絶やしにしないと……」


「たぶん、ダンジョンマスターがどこからか連れて来ると思う……」


「最悪だ……」


 その後の言葉はそのまま古参冒険者は飲み込んだいた。絶対、ダンジョンマスターはアタイたちの会話を聞いているはずだから。


 

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