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第十三話 ギルド本部

 また膜を抜けるとそこは街外れの森の中だった。


「私は、王都に向かうのでここでお別れだが、まあ近いうちにまた会うことになる。ダンジョンマスターがあれこれしているからね。君は大変だと思うよ。奴のオモチャにされる運命だから、お気の毒に」


「はあーー、ダンジョンマスターに目を付けられた冒険者なんて、命が幾つあっても足りませんよ」


「まあ、九十九階層まで行って抗議しないとやめないと思うよ」


「九十九階層って、アタイの寿命が尽きます。リュケアさん、お願いします」


「私は旅人なので、争いごとは勘弁してほしいな」


 なんか爽やかに言われて、ちょっとムカツイた。アタイも旅人になろうかなあ。その前にギルド本部に行って報告しないとだ。


「リュケア様、お世話になりました。ありがとうございます」


「ああ、また会おう。では」


 やはりエルフさんはカッコいいよね。超年上だけど。



 ギルド本部にアタイが入ると、お通夜だったギルド本部がぱあっと明るくなった。


「お久しぶりです。戻って来ました」


「ミサさん、ギルド長がずっとお待ちです」


 受付のお姉さんが私の手を引っ張って応接室に連れて行った。ほどなくしてギルド長が応接室に入って来た。


「ソルドの親方たちは戻っていますか?」


 暗い表情のギルド長が一言。


「ソルドたちはまだ戻って来ていない。戻って来たのは君だけだ」


「ソルドの親方たちとは十八階層で別れてしまいました。十八階層まで行く過程でアナキンさんのとこの斥候さんが亡くなり、ベンさんとこの戦士さんが亡くなって、お二人が亡くなりました」


「私は二十階層まで到達したところで倒れて、ギルド長たちを助けたリュケアさんに私も助けてもらって、この街まで送ってもらいました」


「君たちが調査に入ってから今日で三ヶ月が経った。ソルドのパーティの幹部から救援隊の派遣を盛んに言って来ている」


「人選は慎重にした方が良いと思います。何しろ第三階層は人喰い鬼とゴブリンの大集落になっているので」


「どう言うことだ。それは?」


 アタイはダンジョンマスターのこと、ダンジョンを超難易度の高いダンジョンする計画になっていることなどを手短に話した。


「ミサさん、戻って来て早々悪いのだが、救援隊を派遣にすることを今決めた。君に案内役を頼みたい」


「はい、アタイもそのつもりです」


「今日のところはゆっくり休んでほしい。受付の者の指示に従って外に出てくれ、冒険者たちが君の話を聞きに群がって来ると困るから」


「ミサさん、ギルド職員の服に着替えて下さい。裏から外に出ます。ミサさん、黒髪ですね。ピンクのカツラを被って変装してください」


「ミサさんの荷物はギルドが責任を持って預かります」


 アタイは、指示に従って受付のお姉さんと一緒に裏口から出た。裏口にも冒険者たちがたむろしていたが、気付かれることなく、道に出ることができた。


「ミサさんの下宿は冒険者たちが張ってますので、別の信頼の出来る人のところが良いと思います」


「ギルドからの連絡は市場にいるミハイルさんに言付けを頼みます。ギルドのお昼休みの時間にその制服で市場に行ってください」


「あのう、ミハイルって酒場の店主になっているのんじゃないのですか?」


「彼のお店は夜の八時が開店なの。相変わらずお昼は市場でバイトしてます。もしミサさんがミハイルのお店に入れるなら、夜八時にミハイルのお店に来てくださいね。お客さんが少なくて大変そうです」



「マスター、ジュン、サオリ、ただいま!」


「ミサちゃん、お帰りなさい……」


「ううう、ええええ、んんん」

 

 ジュンとサオリは言葉にならなくて、泣き続けていた。


「ミサちゃん、お疲れ様」


「でもね、ギルド長から救援隊を出すので案内役をしてほしいって依頼された……」


「マスター、急にナイフを研ぎだすのは怖いから、やめてよ」


「ギルド長をぶっ殺す!」


「マスターを助けてくれたエルフのリュケアさんが約束を守ってくれてありがとって」


「ミサ、エルフ様に会ったのかい」


「アタイもエルフ様に助けられたの……」


「だろうね、エルフ様がいなければダンジョンからは出られないのだから」


「やっぱりギルド長は殺す」


「待って、マスター、たぶんまだソルドの親方もアナキンさんもベンさんは生きている思う。少なくとも十八階層で足止めされているだけならね」


「アタイを待っていると思うの」


「どうかねえ、十八階層の空気を吸い続けると、体が徐々に動かなくなるよ。中に入ってすでに三か月が経っているし……」


「それでも、アタイは助けに行きたいの」


「ミサちゃん、そんなことを言う冒険者は死ぬのは知っているよね」


「知っている。助けたいって気持ちが強いと冷静な判断ができなくなるのは」


「それでも行くのなら、ミサちゃんのパーティ全員で行くことだね」


「ジュンとサオリには無理だ。マスター!」


「ミサちゃん、地上にいてもジュンとサオリは死ぬ。たぶん、ダンジョンで死ぬよりも確実に死ぬ」


「マスター、どう言うことなの?」


「ダンジョンを根城にしていた連中が一般の冒険者に混じって地上に出て来たの。それと、ダンジョンが閉鎖されて食い詰めた連中がわんさか、この街にはいるの」


「この街はもう終わった街だよ! 救いようのないクズが集まっている街」


「自警団を作ったけれど、その自警団が人殺し、強盗を働いている」


「ジュンもサオリも何度か誘拐されかけたのよね、ジュン、サオリ」


「うん、……」


「たった三か月でそんなに酷いことになってたんだあ」



「アタシね、この店を別のダンジョンがある街に移転するつもり」


「ミサちゃんもまだ冒険者稼業を続けるなら別のダンジョンに入る方がマシだよ。アタシとおいでよ。もうここはダメだよ」


「それもこれもソルドの親方たちを助けてから考えるよ」


「ミサちゃん、ジュンとサオリの命にを背負って、ソルドを助けるの? そんな義理なんかないでしょう?」


「冒険者は人助けはしない。すれば自分が死ぬ。ミサちゃんが死ねばジュンもサオリも死ぬ」


「アタシと一緒に行くのが正解だと思うけど」


「アタイもそう思う。死ねば終わりだもの。わかっている」


「ねえ、ジュン、サオリ、お願いだからマスターと一緒に……」


「断るよ、俺たちはダンジョンの中ではミサさんの命令は絶対。でも今はダンジョンの外、俺もサオリもミサさんと一緒に行くって決めている。ミサさんが、ダンジョンに入るなら、俺たちも入る」


「サオリも、ミサさんと一緒に行く。ここにいれば、私、間違いなく人を殺す」


「この二人ね、誘拐されかけた時に反撃して、相手に、重傷を負わせてさあ、でも、そいつら仕留めなかったもんだかた、ギルド長にその連中が一方的にジュンとサオリが襲ってきたって訴えたの」


「それで、マスター、どうなったの」


「アタシがギルド長と賭けをしたの。そいつらの前で、明日の午前零時までに、連中が訴えを取り下げなかったら、ギルド長の勝ち、訴えを取り下げたら、アタシの勝ちって。この街では訴えた人間が一人もいなくなったら、自動的に訴えは取り下げられるからね」


「ギルド長が勝てば、この店でエールが飲めるの。ただし一回だけ」


「アイツら直ぐに訴えを取り下げてこの街を出て行ったよ……、結局賭けにならなかった」



「ジュン、サオリ、いつも言うけど、アタイが助からないって判断したら見捨てるよ……」


「わかっている。ただ、ミサさんには悪いけど、俺はサオリを絶対に見捨てない。二人とも死ぬってわかっていても、見捨てない……」


「勝手にしなあ」


「ミサさん、ありがとう」


 アタイは二人が眩し過ぎて顔が見られなかった。

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