オールバニー
馬車が止まった場所から少し歩けば、崖の上から入り組んだ海岸線を眺めることができる。
ここはオールバニー。
アデレードへ向かう馬車の3つある駐車駅の最初の町である。
ここで一泊し、馬車は次の町へと向かう。
「なあスクリード。俺今日の朝からのどが痛いんだけど…」
と、ルセイが言う。
「マジか。この町って医者いるのかな。」
「お医者様ならここからまっすぐ行って突き当りを右に行ったところにありますよ。メディさんという女医さんです。」
と、運転手さんが教えてくれる。
「ありがとうございます。助かります。」
運転手さんにお礼をし、指示を受けたとおりに足を進める。スティーノとは、後で宿で合流することにしてある。
「ここか。」
それは「病院」と書かれた看板がないと一軒家と見間違えてしまうような家であった。運転手さんによると、腕は立つようなのであまり心配はしていない。
玄関のドアを開けると、ドアにはまるで飲食店にあるようなドアを開けると音が鳴る仕組みがなされていた。
「いらっしゃい。今日はどうしたの?」
と、中に通される。メディさんは見た目は20代半ばくらいに見える。医者としては若そうだが、大丈夫だろうか。
…それにしても綺麗な人だ。少し見惚れてしまった。
「今日の朝からのどが痛くてちょっと体が重い気がシマス。」
ルセイも美女を前にして緊張しているご様子。
傍から見たらクッソ面白いなこれ。
「風邪だね。ちょっと口の中みせて。」
薬を出してもらえればもう大丈夫だろう。
「はい。診察は終わり。のどの痛みってことなのでアオツヅラフジっていう草の粉末を出すから、それを痛みがなくなるまで毎食前に飲んでね。そしたら薬調合してくるからちょっと待っててね。」
「良かったな。薬出してもらえばすぐ治るぞ。ってお前顔真っ赤じゃねーか。」
「のどの痛みだけじゃなくて熱も出てきたかも…」
「んなアホな。見惚れてただけだろお前。」
そんな感じで雑談していると。
「おまたせ。アオツヅラフジの粉末ね。お代が15$になります。」
少し高い気もするが、薬は貴重品だ。妥当だろう。
薬を受け取り、病院を後にする。
宿でスティーノを待たせているので、まずは宿に行き、それからご飯を食べに行こう。
「スクリード…俺旅が終わったらまたここに来たい。」
こいつは一目惚れしやすい体質なので放っておく。
今の時刻は15:00。宿に戻ってもやることがないな。スティーノと合流したら買い物にでも出かけるか。
病院から徒歩10分ほどで宿に着いた。
「お帰りなさいませお二人共!」
と、なぜか元気が有り余っているスティーノが出迎えてくれた。
「ただいま。まだ夕食の時間までは余裕があるから散歩がてらに買い物でも行かないか?」
「賛成ですわ。」
特に何を買うとか決めているわけでもないが、いい暇つぶしになるだろう。
「俺は体調も心配だし薬飲んでここにいるよ。二人で行ってきな。」
「ok。お大事にな。」
ルセイに見送られて宿を出た後、隣接しているデパートへ足を進める。
「自分で好きな物を買えるお買い物なんて、初めてですわ!楽しみですわ!」
あ~。だからさっきからテンション高かったのか。
「デパートにはいろいろあるぞ。好きなもん買ってお土産にするなり自分で使うなりするといい。」
店の中では単独行動のほうが良いと思い、自分用の土産を物色する。
ご当地のお菓子だのなんだのが並んではいるが、食べ物類はナシだ。
旅はまだまだ長い。その間に腐ってしまうからな。
ふと横の棚を見ると、そこはアクセサリーの棚だった。
その中の一つをとって、会計に向かう。
荷物を大量に抱えたスティーノと合流し、宿へ向かう。
部屋のドアをノックすると、さっきよりも顔色のいいルセイがドアの向こうで待っていた。
「薬、効いたみたいだな。」
「おう。完全復活だ。」
などとすこし会話を交わし、買ってきたものを見せる。
「これ、ルセイへのお土産なんだけど…」
と、さっき買ったネックレスを見せる。
「宝石の色がクリーム色でお前の髪色と同じだろ?似合うと思うぜ。」
「お~。ありがとう。大事に使うわ。」
「よし。時間もいい感じだ。そろそろ飯食いに行こうぜ。」
「「おー!」」