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3XXX  作者: 紫電
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最初の町へ

そうこうしている内に、日が暮れた。

運転手さんから野営地に着いたことを告げられる。

食料は自分たちで持ってきたものを食べるので、ほかの乗客たちとは違う場所で俺たち3人で食べる事になる。

寝る場所は、馬車内に設置されている椅子を変形させてベッドのようにして使う。

「料理するってんだからまずは火が必要だな!火を起こせそうな枝と板、探してくるぜ。」

と、ルセイ。

「いや、その必要はない。」

「?」

こんなこともあろうかと、俺はテレッゾさんの店で着火するためのオーパーツを仕入れてきたのだ。

「これはライターというオーパーツでな。ここをこうすると…」

ギザギザした円盤に親指をかけて…

ボッという音とともに小さな炎ができる。

「こんな感じで着火できるんだ。」

「はえ~。凄い便利じゃんこれ。」

「昔はこんな便利な物がすぐに手に入ったんですわね。なんでこんな文明が滅んでしまったのでしょうか…」

本当にそのとおりだと思う。一体なぜ…?

「まあまあ、そんなことはいいから夕飯にしようぜ。俺スープ作っておくよ。出汁とるの得意なんだ。」

「じゃあ俺は肉焼いておくよ。スティーノは火の番をしておいてくれ。」

「了解しましたわ。」


30分ほどして、あらかた料理が完成する。

本日のメニューは、ローストチキンと鶏ガラの野菜スープである。

なるべく食料の無駄のないように作るといえばこれで決まりだろう。

「出来上がりだな。それじゃ、」

「「「いただきます!」」」



「いや~美味かったな。」

「外で食べるご飯って、こんなにおいしい物なんですのね~」

スティーノにしたら初めての野営なのか。そりゃあワクワクするわな。

俺も親父と初めてキャンプに行ったときはめちゃくちゃワクワクしたものだ。


さて、夕飯も食べたことだし、あとは寝るだけか。

冒険の一日目がもう終わる。楽しい事はすぐに過ぎ去ってしまうものだ。

仲間と旅をするということは、単なる楽しいという感情で済ませてはならないほど尊く、貴重だ。

旅を通して繋がった仲間という関係は、目的地に着いた後も繋がり続ける。


本格的に始まった冒険の、1日目が終わった。





空が白みがかってくるころ、俺は目を覚ました。海岸線に昇っていく太陽を暗闇に慣れた目を庇いながら眺める。

今日はここ最近悩まされていた夢にうなされることもなく、清々しい目覚めとなった。あの夢の世界はなんなのだろうか。俺はここ数日そのことばかり考えてしまっている。

がれきだらけの町の中にポツンと一人でいる夢。

薄暗い空気の中、何一つ音もならない世界。

そんな世界が存在したのだろうか。


と、海から昇る朝日を眺めながら考えていると、ルセイとスティーノが起きてきた。

「おはようスクリード。起きるの早いな。」

「ああ。朝日見るの好きなんだ。俺。」

朝日を見ると心が洗われる感じがする。

「馬車の出発まであと2時間だ。まだ寝ていてもいいぞ。」

「ほんじゃお言葉に甘えさせてもらうわ。置いていかないでくれよな。」

「じゃあ私も~」

二人共昨日は疲れたらしい。


馬車の運転手さんに聞いたところ、オールバニーでは美味しい料理が有名なんだそうな。旅の目的とは違うが、そうした観光旅行的な楽しみ方をしてみてもいいかもしれない。

段々さっきのナーバスな気持ちが薄れ、楽しみになってきた。


時刻はAM9:00。馬車の出発時刻だ。俺は二度寝に耽っていた二人をたたき起こし、荷物とともに馬車に詰め込んだ。ルセイが

「これが寝起きに対する仕打ちか」

とか言っていたが、知ったこっちゃない。


馬車は昨日と同様、海岸線を進んでいる。ルセイとスティーノは楽しくトランプをして遊んでいる。これじゃまるでただの旅行だ。


そんなこんなしている内に、最初の町、オールバニーに到着した。


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