夢(第二章 完)
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ここは…夢の中か。
ここに来るのも慣れたものだ。
しかし、いつもの感じじゃない。
辺りは暗く、何も見えない。
これまで夢は、『スクリード』に、『桜田正義』の記憶を見せてきた。
記憶が戻った今、もう夢で何かを見ることは無いと思っていたが…。
しばらく辺りを歩いてみると、少し明るいところが見えてきた。
俺の足は自然とそっちの方向に歩いていく。
歩いていくと、光は強くなる。
さらに近づくと、もっと明るく。
光に体が呑み込まれていく。
光の中に、ぼんやりと何かの影が見える。
それは、俺の家族たちの影。
無意識にそちらの方へ手が伸びる。
俺もそっちの方へ行きたい。行かせてくれ。
そう思うと、声が聞こえてきた。
「お疲れ様。戻っておいで。」
と。
それは神の声にも、俺の両親の声にも聞こえた。
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…。
ここはどこだ。
っていうかここ数日の記憶がない。
どうしたもんかな…。
隣のベッドで寝ている親父を起こす。
「ちょっと父さん起きて。ここどこなの?」
「ん~。それ今じゃなきゃ駄目~?」
「うん。今じゃなきゃ駄目。ここ数日の記憶がないんだ。どうなってんの?てかここどこ?」
「記憶がないだと?お前自分がサクラダマサヨシさんの生まれ変わりって言ってたけどそれも忘れたのか?」
「なにそれ気でも触れたの?」
「お前が言ってたんだろうがよ」
俺がサクラダさんのご先祖様の生まれ変わり?
どういうことだ?
「ちなみにここはヨコハマのサクラダさんの屋敷だ。もう目的は済ませたぞ。」
「いつの間に!?俺の記憶がない間にそんなに進んでたのか!?」
もう目的は済ませたのか。
「とりあえず、みんなが起きたらサクラダさんに挨拶して家に帰るぞ。」
「OK。なんとなく状況は分かった。」
みんなが起きるのを待つことにしよう。
しばらくして、みんなが起きてきたので、今の俺の状態を話した。
「はえ~。スクリードの中のサクラダさん、いなくなっちゃったのか。」
「目的を達成したからあるべき場所へ帰ったのかな。」
などと、みんなが話す。
そうこうしているうちにこの家の主、サクラダさんが部屋へ入ってきた。
「おはようございます皆さん。…何かありましたか?」
雰囲気で何かを察したのだろう。
「実はかくかくしかじかで…。」
「そんなことがあったんですか。まぁご先祖様と一瞬でもお話しできたのが奇跡みたいなものですし。きっとご先祖様も有意義な時間を過ごせたことでしょう。」
少し寂し気に、そう呟いた。
「本当にいろいろと、ありがとうございました。」
「いいえ。こちらこそ、いい経験をさせていただきました。」
サクラダさんにお礼をし、屋敷を後にする。
今回の旅は、ここで終わりを迎える。
最後の何日かは記憶がないのが悔しいけど。
それから俺たちはオーストランドに帰り、各自自分の家に帰ることとなった。
次に集合するのは1か月後。
今度は最後の目的地、アメリカへと向かう。
第二章 完




