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3XXX  作者: 紫電
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目的地

「スクリード、大丈夫か?辛いようなら、俺達だけで行ってもいいけど…。」

ひとしきり泣いた後、ルセイが話しかけてきてくれた。

「いや、大丈夫。これは俺がやらなければならない仕事だから。」

そう言って、もう一度立ち上がる。

かつての街に向き直り、また歩き始める。

丁度この辺りは俺の実家があった場所。

建物は影も形もないが、ここは俺が生まれ育った町なのだ。


破壊された街を歩き、【神の鉄槌】こと原子爆弾を探す。

クレーターの真ん中に落ちているはずなので、見つけやすい。

クレーターの中心部は…中華街があった場所あたりか…。

よく家族と行ったなぁ…中華街。

また食べたいな…行きつけのあのお店の料理。

だが、そんな願いは叶うことは無い。

失われてしまったものを元に戻すということは、本当に難しいことだ。


廃墟だらけとなった横浜をしばらく歩き、クレーターの中心、爆心地付近まで歩いてきた。

爆心地周辺は、廃墟すらも残っていない。

ただまっさらな、灰色の地面が続いているだけだ。

その中心にある金属の塊。

俺の故郷をこんな姿にしたすべての元凶。

世界の文明をリセットすることになった原因。

原子爆弾がそこにはあった。


俺が今できることは、これの表面にあるレバーを下げ、これ以上の魔物の生成を抑えることだけだ。

己の無力さに打ちひしがれながら、俺はレバーを下げた。

『操作ガ行ワレマシタ。【神の鉄槌】型原子爆弾、内蔵放射性物質ノ放出ヲ停止シマス。』

無機質な合成音声が、辺りに響いた。


目的を達成した俺たちは、一旦さっきの集落へと戻ることにした。

戻った先には、桜田さんが待ってくれていた。

「神の鉄槌の効果を消してきたんですね。お疲れ様です。私の屋敷に二部屋、空きがあるので、良ければ今日は泊って行ってください。」

「ではお言葉に甘えて。」

家に上がらせてもらうことにした。


しばらくして、日も完全に沈んだころ。

みんなはもう寝ているが、俺はなぜだか寝られずに外に出ていた。

辺りをぶらぶらしていると。

「スクリードさん?まだ起きていたんですね。」

と、声をかけられた。

「桜田さん。なぜか寝られなくって。」

「そうですか…。では一つ、伝えておきましょう。」

「…?」

「私たちは今の暮らしで満足しています。あなた方の時代に起きたことでそんなに気に病む必要はないですよ。」

そう告げると、桜田さんは屋敷へと戻っていった。

この人は、俺の心の中が見えているのだろうか。

確かに俺は、俺たちの時代の戦争で、こんな世界になってしまったと思って気に病んでしまっていた。

でも、この時代も人類は生きている。

生きてさえいればどうとでもなる。

たとえ文明がリセットされたとしても、千年先まで人類は途絶えることなく命をつないできた。


皮肉にも、見上げた夜空は前世よりも格段に美しかった。


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