大蛇
翌朝。
昨日はシモノセキに到着し、そこで一泊した。
今日は例の夢を見ることは無かった。
しかし夢を見る条件が謎だ。
何か条件があるのだろうか。
…まぁ、そんなことを今考えていても仕方ないか。
少しそんなことを考えた後、いつも通り外に出る支度をする。
宿のチェックアウトを済ませ、今日の旅路につくことにしよう。
外はいい天気である。
北半球にあるこの国は、オーストランドとは季節が逆なのだ。
今は1月で、この国では冬真っただ中だ。
この国の冬はとてつもなく寒いが、自転車をこぐうちにだんだんと暖かくなってくる。
時々魔物が出てくることがあるが、それ以外は気分爽快のサイクリング旅である。
今日はチュウゴク地方を進み、ヒロシマという町へ向かう。
少し進むと、朝はあんなに晴れていた空が、段々とどんよりしてきた。
気温が気温なので、降るとしたら雪が降りそうだ。
積もるほど降られると、地面が滑ってしまうので厄介だ。
スピードも出せなくなってしまう。
さらにしばらくすると、不安は的中し、雪が降ってきてしまった。
この辺りは平野になっており、雪をしのげる森などは無い。
仕方ない。ペースを上げて強行突破することにしようか。
と、そんなことを考えていると。
追い打ちに体長5メートルはあろうかという大蛇が道をふさいだ。
例によって、本来この大きさの蛇はこの国にいない。
魔物である。
即座に全員自転車から降り、武器を構える。
コイツの皮膚はうろこに覆われており、俺やルセイの小さな剣では刃が通らない。
ソフィーの弓も同様だ。
ここはスティーノと親父に任せることにしよう。
降りしきる雪の中、俺はおとりとして蛇の注意を引く。
蛇は温度で敵を感知するので、気を引くのは容易だ。
蛇の頭が俺の方を向いている隙に、スティーノと親父は背後へと回る。
背後に回った二人が、じりじりと間合いを詰めていく。
蛇への攻撃圏内に、二人が入ったことを確認し、俺は二人に合図を出す。
まずはスティーノがハンマーを振りかぶり、蛇の頭に一撃。
急な攻撃に虚を突かれた蛇は、頭をスティーノの方向に向ける。
それを待ってましたと言わんばかりに、親父が大剣を振りかぶり、蛇の頭めがけて剣を振り下ろす。
冒険者時代に洗礼されまくった親父の一撃は、今も衰えることなく。
蛇の首を切り落とした。
「よし。綺麗に決まったな。」
「よかったですわね。」
と、攻撃を食らわせた二人が話す。
「二人ともグッジョブだ」
と、労いの言葉をかける。
…。うわ。
ルセイとソフィーの顔色が優れないと思ったら。
二人の視線の先には、首を落とされた大蛇が頭がない状態でのたうち回っていた。
率直に言ってクッソキモい。
「は、早く行こうぜ。」
と、ルセイ。
「賛成だな…」
昼飯前に嫌なもの見ちまったな…




