親父無双
クマの真正面に立ち、武器を構える。
後方ではソフィーが弓を構えているので、射線上に入らないように立ち回る。
親父は何をしているのかというと、武器を取り出していた。
あの馬鹿デカい荷物は、親父の得物の両手剣だったようだ。
それにしても…まぁデカい。
親父は自分の身長ほどある刃をブンブン振り回している。
はたから見てもすげぇ怖いのでもうちょっとコンパクトに振っていただきたい。
そうこうしていると、クマの視線は俺ではなく親父の方へと向いていた。
だから目立ちすぎなんよ。
まぁこっちに注意が向かなくなったってことは好機だ。
クマの背後に回って一発を食らわせてやる。
と、背後に回ろうとすると、突然親父が大声で、
「スクリード!こいつは俺がやる!離れてろ!」
と。
この目立ちたがり屋が!
まぁ、そこまで言うならおとなしく待っておくとするか。
クマと対峙した親父は、じりじりとその間合いを詰めていく。
その間は3メートルほど。
両手剣の間合いは2メートル程度なので、まだ攻撃するには遠い間合いだ。
…と、そんなことを考えていると。
クマが動いた。
それを合図にしたかのように親父が一気に間合いを詰める。
次の瞬間、親父の両手から斬撃が放たれた。
敵を叩き切る鈍い音が響き、一瞬、静寂が訪れる。
その一太刀は、クマの胴体を真っ二つにしていた。
ドサリとクマが力尽き、倒れる音がする。
…。
なに今の斬撃。
太刀筋見えなかったんだけど。
えぇ…?
「いやー。久しぶりに体動かしたけど、何とかなるもんだなぁ」
「いや絶対筋トレとかしてただろ。鈍ってたやつの動きじゃねぇぞ。太刀筋見えなかったし。」
「それ褒めてんのか?わかりにくいからやめれ。」
と、さっきから仲間たちが静かだが、どうしてだろうか。
「おいみんな。どうした?静かになって。」
「ちょっとこっち来い。いいから。」
と、ルセイに呼ばれたので、仲間の3人の方へ向かう。
近づいて、
「どうした?」
と、声をかけると。
「いや、お前の父ちゃんヤバすぎるでしょ。」
「うん。あれはプロフェッショナルの動きだったね。」
と、ソフィーが相槌を打つ。
すると、スティーノが。
「私スクリードさんのお父様に弟子入りしますわ」
「待て待て待て、早まるな」
などと喋っていると。
「なぁなぁスクリード達。そろそろお父さんも会話に入れてほしいな~」
さみしがり屋か。
「はいはいごめんね無視して話し込んじゃって。」
「何その適当な感じ」
そんな感じで、この国での初めての戦闘は、勝利を収められた。
というか。
全部親父一人でいいんじゃないかな。
もうそんな気がしてきた。
まぁとにかく。戦闘面で問題はなさそうだ。
今後も親父のお世話になっていくとしよう。
その後の冒険は至って順調で、夕方には今日の目的地、シモノセキに着いた。
今日はここで一泊することにしよう。




