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3XXX  作者: 紫電
36/59

出発

時刻は9時丁度。

俺たちは今日からお世話になる船に乗り込み、出発を待っていた。

前回の旅よりかは幾分緊張も少なく、旅を楽しめそうな予感がする。


出発までの時間、仲間たちと船の内部を探検することにした。

見たところ、この船に宿泊施設は無い。

毎日街に停船するのはそのためだろう。

客室のエリアのほかには、めぼしい施設は食堂くらいしか見当たらない。

そこまで高い船というわけではないのでまぁこんなものかと思い、自分たちの席へ戻った。


しばらくして、船が発進しだした。

動き出してしまえば、とてつもなく安全で、順調な旅になるだろう。

船とはそういうものだ。

快適ではあるものの、言い方を変えてしまえば退屈とも言える。

まぁ、少なくとも『冒険感』は陸路より少ないだろう。

友達や家族との旅行と思えば楽しいものになるかもしれないが。

こう言っては悪いが、俺はこの船の中で何かしらトラブルが起きてほしいと思っている。

そうでもしないと退屈な旅になってしまうかもしれない。


そんな俺の思惑に反して、船は順調に進む。

今日の目的地は、ジェラルトンという町らしい。


船の中に旅のパンフレットが置いてあったので読んでみる。

目次から頭文字のGを探し、ジェラルトンという見出しを見つけた。


『ジェラルトン』

オーストランド王国の西海岸に位置する海沿いの街。

パース以北では一番人口が多く、栄えている町である。

気候はパースと比べて高温、乾燥しているが、暮らしやすい気候となっている。


…なるほどね。

てかこの旅行パンフレット、名物とか載ってねぇのかよ。

パンフレットとしてどうなんだそれ。


特に新しい情報は得られなかったので、パンフレットを置き、自分の席に戻る。

席に近づいていくと、何やら仲間たちが盛り上がっている。


「何々?何でそんなに盛り上がってるの?」

「おうスクリード。いいところで戻ってきたな。」

「スクリード!見てみて。イルカだよ!」

窓から外を覗いてみると、確かにイルカの群れが船と並走している。

「おぉすげぇ。生で見たのいつぶりだろう。」

多分子供のころに砂浜で遊んでた時以来だな。


よく考えたら俺はこういう些細なことを楽しみたくて旅をしているのかもしれないな。

安直にトラブルを求めるのはちょっと違ったかもしれない。


それからしばらくして、お昼の時間になった。

さっき見かけた食堂に、仲間たちみんなで向かう。

やっぱり食事も、一人で食べるよりみんなで話しながら食べる方が美味しい。

…というか。

仲間たちの中に親父が入っていてもあまり気にならない。

中身がやっぱり子供っぽいのだろうか。


そうして昼食を食べ終え、また自席に戻る。

お腹いっぱいになって船に揺られていると、だんだんと眠くなってくる。

いっそのこと昼寝してしまおうと、目を閉じる。

そうすると案の定、だんだんと意識が遠くなっていく。

ジェラルトンに着くまで、しばらく眠ることにしよう。

_________________________


またここは夢の中だろうか。

前に見た、甲板が平らな船の上に、また俺は立っている。

今までの夢と同じかと思っていると、そうでもないようで。

話し声が聞こえてきた。


「桜田二等空佐、発進の準備はできてるか?」

「問題ありません!すぐに行けます!」


サクラダって俺のことか?

というか、自分の体が勝手に喋ったな。どうなってんだこれ?

そんなことを考えていると、体が揺り起こされている感覚がする。

まだ考えたいことはあるけど体が起きようとしている。仕方あるまい。


_________________________

「やっと起きたかスクリード。お前がこんなに寝起き悪いなんて珍しいぞ。」

「いや、ちょっといろいろあってな。」

「…? まぁいいや。ジェラルトンに着いたぞ。早く船降りようぜ。」

と、腕を引っ張られる。


しかしあの夢は何だったんだろう。

何はともあれ、最初の停船駅、ジェラルトンに到着した。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 今度は船旅ですねー(*´ω`*)船の旅も素敵だなぁ!
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