後日
二週間後、俺たちは無事にパースへ帰り着くことができた。
次の目的地であるヨコハマ行きの船が出るのは3日後だ。
俺とルセイは各々の家に一度戻り、スティーノとソフィーは隣町であるロッキングハムにあるスティーノの家で生活している。
3人には次回集合する日時を教えてあるので、3日後にまた会うことになるだろう。
約一か月ぶりに、自分の家の戸を叩く。
家の中でガタガタと音がし、ガチャリという音とともにドアが開く。
「お疲れスクリード。よく帰ってきたな。おかえり。」
と、親父が出迎えてくれた。
「ただいま、父さん。流石に疲れたわ。」
「そりゃあそうだろう。今日はもう早く寝て、明日土産話を聞かせてくれや。」
「そうするわ。」
そんな会話をし、俺は家の中に入った。
もう日も落ちているし、今日は風呂に入って寝よう。
自分のベッドに入ると、長旅の疲れもあって俺はすぐに眠りに落ちた。
_________________________
…ここは夢の中か…?
そう思いながら、周りを見渡してみる。
どうやら船の上らしい。
それにしても変な船だ。帆は見当たらないし、どうやって動くのか想像もつかない。
甲板の上に俺は立っているようだが、甲板は平らで、道路の様だ。
さらに周りを見渡してみると、いつぞやの夢で出てきた、空を飛ぶ人工物と思われるものがあった。
とてつもなく攻撃的なフォルムをしていて、それでいて美しいとすら思える流線型のそれは、なぜか俺の目線をを惹きつけていた。
_________________________
目が覚めると、もう時刻は8:00を回っていた。
すごく長い時間を寝ていたような気分だ。
あの夢は何だったのだろうか。
前はあのような不思議な夢を見ていた時期があったが、最近は見ていなかった。
ずいぶん久しぶりに見た気がする。
そんなことを考えながら、俺はベッドを降り、朝ご飯を食べに寝室のある2階から食卓のある1階へと向かう。
「おはようスクリード。よく寝てたみたいだな。」
「おはよう父さん。流石に疲れてたみたいでね。」
「そうかそうか。よく寝られたんなら何よりだ。さ、話を聞かせてくれ。」
「あぁ。ちょっとその前に顔洗ってくるわ。」
と、洗面所で顔を洗い、食卓に座る。
「じゃ、話を始めさせてもらいます。」
「どうぞ。」
それから俺は、今回の旅であったことを全部話した。
そして、ブリスベンで見聞きしたことも話した。
これで【神の鉄槌】に関する情報が少しでも分かればいいが…
「うーん…どこからともなく声が聞こえたのは古代の技術だってことで片付けられるとして、『原子爆弾』と『内蔵放射性物質』ってのはちょっとわからんな…」
「やっぱり資料とかも無い感じ?」
「無いね~。それこそウィルカニアの町長さんみたいな歴史に詳しい人でも持ってなかったんだから俺みたいな一般人はお目にかかることもできないだろうね。」
やっぱり歴史に関する資料は貴重なんだな…
「ただ、推測することはできるぞ。お前の話を聞く限り、原子爆弾ってのは【神の鉄槌】本体のことで、内蔵放射性物質ってのは神の鉄槌…もとい原子爆弾の中に入っていた魔物を生み出す物質なんじゃないか?それの放出を止めたんだから、これからオーストランドでは魔物は生まれないはずだ。」
なるほど。俺の目的は『魔物の生成を止めること』。
親父の予想が正しいなら目的は達成できたようだ。
今回の旅は成功だったってことになる。
それが分かっただけで俺は大満足だ。




