ブリスベン
朝日が昇るのとほぼ同時に、俺は目覚めた。
とうとうこの日が来た。
今日、俺たちは最初の目的地であるブリスベンへと向かう。
今俺たちがいるのはブリスベンの西にある小さな町。
ここはトゥーンバだ。
今日は宿のチェックアウトを済ませたら歩いてブリスベンへと向かう。
俺たちに課せられた使命は一つ。
【神の鉄槌】の表面にあるスイッチを切り、魔物の生成を抑えることだ。
ブリスベンは西暦2000年代から立ち入り禁止区域となっているため、中の状況がわからない。
最悪、ブリスベンの中で寝泊まりすることになるかもしれないが、その時はその時だ。
時刻は7:00を回った。
そろそろ出発した方がいいだろう。
仲間を起こし、いつも通りチェックアウトを済ませ、街を出る。
「いよいよだな。スクリード。」
「緊張してるか?ルセイ。」
「ちょっとな。」
そりゃそうだ。目標が間近に迫ってるわけだからな。
「そうか。ちょっと緊張してる時の方が人間はベストパフォーマンスを出せるらしいからな。それでいいぞ。」
「ねぇねぇスクリード。あたし思ったんだけど。あたし達が魔物の生成を抑えちゃったら世の中の冒険者さんの仕事奪っちゃわない?」
そうか、そんな事考えたこともなかったな。
「それはそうだけど魔物がいる世界より魔物がいない世界の方がみんな嬉しいだろ。それに、代わりの職業はいくらでもあるしな。」
「まぁそれもそうかー。」
「スティーノはどうだ?緊張してるか?」
「いえいえ~私は皆さんと目標を達成できると思うと楽しみですよ~」
この人物理的にも精神的にも強いな…
と、そんな話をしながら4人で砂漠を歩いていく。
最初は2人だけの旅だったが、色んな人に出会ってここまで来たわけだ。
スティーノとソフィーにも出会えた。
俺はこの旅を始めて本当に良かったと思っている。
そんな感慨に浸っていると、高い壁に囲われ、正面の門には見張りが2人いる、頑強に守られた街が見えてきた。
言わずもがな、あの街がこの旅の目的地、ブリスベンである。
街に入ろうとすると、看守に止められた。
「ここは立ち入り禁止になっています。特別な事情がない限り、お通しすることはできません。」
「あー…えーと。親父…タバスから何か聞いていませんか?」
「あ、例の話ですか。タバス様の息子様で間違いありませんか?」
「はい。そうです」
「大変失礼いたしました。話は聞いております。どうぞお入りください。」
あの親父、実はすごい人なのかもしれない。
「ありがとうございます。じゃあ入らせてもらいます」
と一礼し、中に入る。
入り口近くはジャングルのようになっていて見通しが悪い。
しばらく歩いていくと、少しずつツタや草に遮られることもなく、周りが見えるようになってきた。
ひときわ明るい方に進むと、街が見渡せる場所に出た。
そこで俺が見たものは、俺に今まで見たどんなものよりも強い衝撃を与えた。
俺は思わず絶句した。
前に夢で見た、あの廃墟だらけの街である。
街の中心部は地面がえぐられており、とてつもない力で破壊されたとしか思えない街並みだ。
また、街並みの特徴と言えば、すべてが金属でできている。
ウィルカニアの町長さんが言っていた【鉄の世界】とはこのことだと直感する。
俺はしばらく放心していたらしい。
仲間に、
「大丈夫か?」
と話しかけられるまで、街に目が釘付けになっていたのだから。




