バイト
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…ここは…夢?
…ッ!!
なんだこれ!?馬車みたいなものが馬を連れずに動いてる…?そんなバカな!どこが動力になってんだこれ…?
周りを見渡せばとてつもない高さの建物ばかりだ…
あっ!あの人が持っているのって俺が持ってるオーパーツと同じものだ。話を聞きに行ってみるか…
「すみません、あなたは……」
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…夢か。とんでもねぇ夢だったな…
外はもう明るくなってきている。もう日雇いのバイトの求人探しに出た方がよさそうだ。
「ルセイ!起きろ!ってかどうなってんだお前の寝相!足と頭が反転してんじゃねぇか!」
「これ癖なんよ」
「ツインベッドにしなくてよかったわ」
なんて言いあいながら服を着替え、顔を洗って1階まで降りる。
「ここからは別行動で、日が暮れたら宿の部屋で集合しよう。」
「了解。」
そうしていったんルセイと別れ、自分のバイト先を探す。
とは言ってももうすでに目星は付いているのだが。
昨日お世話になった骨董品店。あそこへ向かって足を進める。
「お邪魔します。テレッゾさんいますか?」
「おうボウズ。昨日ぶりだな。要件はなんだ?」
「いや、お金があまりないのでここで働かせていただけないかと。」
「そういうことなら大歓迎だぜ。店番を頼むよ。」
すんなり受け入れてもらえるようでよかった。…ん?あれなんだ?
「あと聞きたいことがあるんですが。」
「お、なんだ言ってみろ。」
「棚の上の太いブレスレットみたいなあれ、なんですか?」
大きな丸い飾りがついていて、中で針が回っている。
「ありゃ腕時計だ。普通の時計よりコンパクトで、持ち運べる。もしお前さんさえよければ持っていきな。」
時計だと!?あんな小さいのがか?やっぱり古代の技術力は凄いんだなぁ。
「お言葉に甘えさせていただきます」
「ハハハッ。店番頼んだぜ。」
正午を回り、お腹がすいてくるころ。テレッゾさんが声をかけてきた。
「おいボウズ。昼休みにするぞ。店は一旦閉めるから飯食い行こうぜ。奢ってやるから。」
「流石に恐れ多いです」
「良いんだ良いんだ。人の厚意は受け取っておくもんだぜ。」
この人、見た目に反して凄い良い人なんだよなぁ。
連れられて行った店に、偶然ルセイが居た。
「よお。仕事、どんな感じ?っていうかその人誰?お前が女連れとか世も末じゃん。」
「黙らっしゃい。この人は俺が交通規制の仕事してたら話しかけてきて、冒険をしてるって話をしたら私も付いていくって聞かなくなっちゃったんだよ。」
金髪ロングで碧眼の我々と同世代に見えるその女性は、ルセイの腕に引っ付いている。傍から見たらカップルみたい。
「私はスティーノと申しますわ。小さい時からあまり家の外は危険だと言われ、あまり外に出していただけませんでしたの。ですから私、家の中にいる間ずっと筋トレしてましたわ。」
お嬢様みたいな風貌と口調からとんでもねぇ事言いやがったな。
「ですから、私を用心棒として一緒に旅をさせてはいただけませんでしょうか?」
お前が用心棒やるのかよ。
ツッコミどころ満載だけど仲間が増えるのはありがたい。
「良いですけど、途中の費用は自分で出してくださいよ。」
「やりましたわ!私、ついに冒険ができるんですのね!」
この人も、俺と同じように冒険に憧れていたみたいだ。
「しかし、なんで冒険をしてらっしゃるのに交通整理とか店番をしてらっしゃったんですの?」
痛い所突いてくるな。
「俺らは2日後のアデレード行きの馬車に乗るんだが、それに乗っちゃうとお金がカツカツになっちゃうんだ。」
「あ、それなら私出しますわよ。有り余ってますし。お金。」
そういえばこの人お嬢様だったな。
「じゃあ申し訳ないけど頼むよスティーノさん。あとテレッゾさん、お金の心配は無くなったけど今日一日は働かせていただきますね。」
「おうよ!一人で切り盛りするの大変なんだ。助かるぜ、ボウズ。」
と、話していると、ルセイが口を開いた。
「スクリード、お前のその腕のやつって何なんだ?」
やっぱ気になるよね。
「これはな。めっちゃ小さい時計だ。腕に巻けるくらいのな。これもオーパーツらしいぜ。」
「昔は便利な物があったもんだな。」
まことに同感。一度西暦2000年代の世界を見てみたいものだなぁ…ん?
今朝の夢ってもしかして…?
「さぁ昼休みは終了!午後の仕事にいくぞぉ!」
と、テレッゾさんが声を上げる。
俺はこの後、業務を終わらせ、どう考えてもおかしい量の報酬を
「いいからいいから」
と、いわれて受け取ってしまい宿に戻った。
宿のロビーにてルセイとスティーノさんが居たので声をかける。
「スティーノさんの別部屋取っておくから先俺らの部屋で待機しといて~」
「おーけー」
「了解しましたわ~」
部屋の空き状況をチェックすると、ちょうど我々のいる部屋の隣が開いていたので、そこのカギを受け取り自室に戻る。
「カギ貰ってきたぞ。スティーノさんも寝るとき以外はここの部屋使ってていいからね。」
「何から何までありがたい限りですわ」
「なぁスクリードぉ…このヒトヤバいよ…主に筋力が」
まぁずっと筋トレしてたって言ってたもんなぁ…
腕時計で時刻を確認すると、もう11時を回っていた。旅の最中、疲れもたまりやすい。早く寝ておくのが一番だろう。
そんなことを考えながら俺は眠りについた。