ウィルカニア(前編)
砂漠の真ん中にぽつんと建っている小さな町。
ここはウィルカニア。
ダーリング川のほとりに位置しているこの小さな町は、どの大都市とも離れたところにあるため人の出入りも少なく、昔からの伝統や伝説を大事にする町だという風に聞いている。
町に入ってまずはラクダを返しに行く。
窓口の人にミルデューラでもらった紙を渡し、代金を支払って手続き完了だ。
ラクダのペースが速かったのもあり、日没までまだ時間がある。
日がまだ出ているのでまだ気温も少し暑いな。
と、そんなことを考えていると、地面にうずくまっている人影を見つける。
「なあ。あの人大丈夫かな。ちょっと様子見に行こうか。」
仲間に呼びかけて、うずくまっている人影へ向かう。
「大丈夫ですか?声聞こえてますか?」
などと呼びかけると。
「水…水を…」
これはまずいな。熱中症か。
その人は老人の男性で、このまま放っておいたら危険な状態だ。
俺はその場に残ることにして、仲間に飲める水を持ってきてもらうことにした。
「ここは日向で危険です。日陰に移動するのでおぶさってください。」
と、その老人を背負って日陰に移動する。
涼しいところで待っていると、仲間が水を持ってきてくれた。
「早かったな。ナイスだみんな。」
「お安い御用だよ。」
持ってきてくれた水を老人へ渡し、
「少しずつでいいですから、水飲んでください。」
と、声をかける。すると、
「あぁ…ありがとう」
話せるくらいには回復したようだ。
「回復したようなので良かったです。ではそろそろ俺たちは行きますね。」
と、立ち去ろうとすると。
「いや、待ってくれ。君たち旅の者だろう?儂はこの町の町長でね。お礼に何かしたいんだ。家に寄って行ってはくれないか。ご飯もご馳走しよう。」
この人町長だったのか。ありがたい話だが…
「いや、当然のことをしたまでです。ご馳走になるわけには…」
「いいんだいいんだ。若いうちは甘えておくものだよ。」
まぁ、そこまで言うならお言葉に甘えるか。
「みんなもそれでいいか?」
「いいよ」
「いいと思いますわ」
「いいと思うよ。」
うわーお満場一致。
町の中で、ひときわ大きな家の中に入っていく。
人助けもしてみるものだな。
「まぁそこに座ってくれ。」
と、4人で言われるまま近くの椅子に座る。
「自己紹介がまだだったね。儂はこの町で町長をやっているリザルドという者だ。」
「スクリードです。よろしくお願いします。」
「いやぁ。さっきは本当に助かったよ。夏に一人で外に出るものじゃないな。死にかねんわ。」
と、気さくに話す。いい人そうだ。
「君たちは旅をしてる様だが、何か目的はあるのかね?」
「えーとですね。このオーパーツ…って言ってわかります?」
「あぁ。鉄の時代の遺物だろう?儂もいくつか持っとるよ。」
鉄の時代ってなんだ? まあいいか。
「で、そのオーパーツの地図にピンが刺さっていたので、何か意味があるのでは、と思い旅をしてるんです。」
「ほぅ。なかなか興味深いね。ちなみにそのピンが刺さっている場所はどこなんだね?」
「えっと、ブリスベンと…」
「なんだと!?」
「わぁ!びっくりした!」
なんだぁ?急に大声出して…
ブリスベンに過剰反応するってことはやっぱり地図に刺さっているピンには何か意味があるということか。
…と。自分で考えても何も始まらない。話を聞いてみよう。




