ラクダ
翌朝、いつものように目を覚まし、眠い目をこすりながら洗面所に向かい、顔を洗う。
冷たい水を浴びれば嫌でも目が覚めるというものだ。
今日の旅は、歩きではそうそう1日では終わらないような距離である。
じゃあどうするのかというと。
今いる町、ミルデューラと次に行く町のウィルカニアの間には物資の輸送用にラクダでの移動手段がある。
少しだけお金はかかるが、民間人もラクダに乗って移動することはできるのだ。
そうすれば、普通に歩くよりも数倍速く、次の目的地に着くことができる。
出発時刻は7:30なので、あと1時間ほどしたら出発する予定だ。
それまでに仲間たちを起こさねば。
まぁ、まだ時間はあるので俺は自分の荷物をまとめ、出発する支度にとりかかった。
しばらくすると、スマホが震えだした。親父からだろう。
「おはよー。何用?」
『おうスクリード。おはよう。』
久しぶりに声が聞けて少し安心する。
『あー今日電話したのはな。ジャパン行きの船の予約が取れたぞってことを伝えるためだ。』
おぉ。ブリスベンの次の目的地、ヨコハマへ行くことができるということか。
『そんで、お前今どこにいる?船の出発が1か月後なんだが…』
「今ミルデューラで今日はウィルカニアに向かうよ。ブリスベンまではあと5日くらいで着くと思うし、1か月あれば大丈夫だと思う。」
『おぉ。そうか。いいペースだな。ラストスパート、頑張れよ。』
「ありがと。多分帰りの時間も加味してあと3週間くらいで戻ると思うから。」
『はいよ。そんじゃまた』
「はいはーい」
と、電話を切る。
もう次の目的地への手段が確定したのか。
まぁ今はそんなことを考えても仕方ない。
今の俺の目標は、ブリスベンに着いて、なぜ立ち入り禁止になっているのか、そしてなぜ地図にピンが刺さっているのかを調べることだ。
そうして今後の目標を整理していると、自室のドアがノックされる。
仲間の二人だろう。
そして今日も一番最後に起きるのはルセイであった。
ルセイを叩き起こした後、みんなで朝食にサンドイッチを食べ、宿のチェックアウトへ向かう。
チェックアウトを済ませた後は、ラクダを貸し出してくれる店へと向かう。
町の入り口付近に建っているお店なので、すぐに見つけることができた。
窓口に人がいたので話しかける。
「すいませーん。ラクダを4頭貸してほしいんですけど」
「お客さん、どこまで?」
「ウィルカニアまでです」
「ウィルカニアで4人だと…800$だね。まいど!じゃあウィルカニアの窓口の人にこれ渡してね。」
4人、800$と書かれた紙を手渡された。
窓口の人のサインらしきものも書かれている。
領収書的なものだろうか。
馬車に乗った時もこれと似たものをもらったので、輸送界隈にはこういうものがよくあるようだ。
みんながそれぞれ借りたラクダに乗って、道なき道を進んで行く。
思ったよりもスピードが出るので、迫力満点だ。
「これ楽しー!あたしこれハマりそうだわ~」
と、ソフィーが言う。
対照的にルセイは。
「無理無理無理無理無理無理無理無理」
ヤバそうだ。
「ちょっといい時間になったしお昼にしようか。」
「「「賛成!」」」
手綱を引いて、ラクダを停止させる。案外馬より乗りやすかったかもしれない。
お昼を食べてまた砂漠を進んで行く。
しばらく乗っているうちに、ルセイも慣れてきたらしく、どんどんスピードを上げていく。
楽しくなってきて、もう少し乗りたいと思う頃には今日の目的地、ウィルカニアに到着していた。




