電話
昼前の日差しが、砂漠と海岸の砂と海に降り注いでいる。ここは最後の停車駅、ユークラだ。
オーストランドの丁度中央部に位置するこの町は、北は砂漠に、南は海に面している。
ロッキングハムを出発してから丁度1週間程度でこの最後の町まで着いたことになる。しかし、ここからアデレードまでは3日程度かかる。その間には宿泊施設のある町がないため、この町を出た後は3日間、野営をすることになる。
まぁまずはこの町で一泊するわけだが。
「いや~暑いな流石に」
と、ルセイがぼやく。
「仕方ないだろそれは。今12月なんだしさ。」
「海の方に出てみれば多少は涼しいかもしれませんね。」
と、スティーノ。
「それいいな。水着はないけど足元濡らすくらいなら涼をとるのにいいかもしれんな。」
「やったぁ!海だぁ!」
はしゃぎ方が子供っぽいソフィーも、海に行くのには賛成のようだ。
「よし。じゃあ荷物を宿に置いたら海にでも行くか。」
「「「賛成!」」」
宿にチェックインを済ませ、部屋に荷物を置き、必要最低限の物だけ持って海の方へ歩く。
海岸まではすぐ着いた。
「「砂あっつ!!」」
「そりゃ裸足で行ったらそうなるよ。」
足を冷やそうと全速力で海へ向かうソフィーとルセイを見ていると、スマホが急に振動しだした。
親父からの着信らしい。そろそろ連絡を取ろうと考えていたので丁度良かった。
「もしもし?スクリードだけど。」
『もしも~し。父ちゃんだよ~』
「キショいよ…んで、何用?」
『いや、今お前どの辺にいるのかなっていうのが一つ』
「今はユークラに着いた所。これからアデレード経由でブリスベンまで向かうよ。」
『おぉ。いいペースじゃないか?まぁそっちはどうでもいいんだ。』
「どうでもいいんかい」
『まぁ聞けって。二つ目はな。【聖域】に関しての話だ。』
わお。いきなり俺の気になっていたことがタイムリーに分かるぞ。
「で、聖域がなんだって?」
『まぁ分かってるかもしれないが、【聖域】として扱われている場所は太古の昔、【神の鉄槌】が落ちた場所なんだ。』
それは分かっている事だな。でもちょっと待て。
「それとは関係なしにちょっと聞きたいことがあるんだけど。父さんは俺が聖域を目指すと言ったら、『立ち入り禁止はコネでどうにかする』って言ってたけど父さんにどんなコネがあるっていうのさ。」
『ああ、そのことか。言ってなかったっけ?父さん昔そこそこ名の知れた冒険者だったんだよ。』
…は?
「おいおいそれマジで言ってんの?」
『マジだぞ』
「じゃあ何で旅についてきてくれなかったのさ」
『かわいい子には旅をさせよっていうだろ?』
「そういうもんなのかねぇ」
『ま、それもお前がブリスベンに着いて目的を果たすまでだがな。』
「ん?どういう事?」
『ブリスベンで目的を達成したら一旦パースに帰ってこい。ヨコハマとカルフォルニアには俺も行くからな。』
「マジか。」
『お友達もみんな連れて来いよ。まとめて面倒見てやる』
「思考が追い付いてこないけど、まぁ分かったよ。ブリスベンに着いたらまた連絡する。じゃあ切るぞ。」
『はいはーい』
俺は電話を切り、今の会話を整理する。
聖域に入るためのコネは昔親父が冒険者だった時のコネで、ブリスベンまで行ったら一旦旅は中断でパースへ戻る。パースに戻ったら親父をパーティーメンバーに加えて残りの目的地へ向かう。
整理してもちょっと何言ってるかわからないな。
親父が冒険者だったのは意外だ。道理でオーパーツにやたら詳しいわけだ。
頭の中で今起きたことを整理して、オーバーヒートしそうな頭を冷やしに、俺も波打ち際へと移動する。
足元の水を少しパシャパシャして遊び、仲間と合流して話をしながら涼む。
こんな時間がずっと続けばいいのに、と思える時間であった。




