エスペランス
翌朝、起きると時刻は8:00を回っていた。
俺にしては遅い目覚めだ。
俺は夢を見ないくらい深く眠っていたらしい。
今日も馬車に乗り、二つ目の町、エスペランスへと向かう。
馬車の出発時刻までまだもう少し時間があるので、昨日の料理の余りを少し食べる。
昨日は夕食を食べたらすぐ寝るということで少ししか夕食を食べていなかった。
お陰で寝起きから腹がペコペコである。
「お、起きたかスクリード。おはよう。」
と、先に起きていたルセイが話しかけてきた。
「おはよう。めっちゃ寝たわ。」
「そりゃいいことだ」
などと話す。俺は最近笑うことが少なくなってきたと感じているが、ルセイやスティーノと一緒にいるときは自然に笑顔が出る。
まぁ、それもこれもあの夢にうなされているせいなのだが。
あの夢の真相がブリスベンに行けば見つかる。そんな気がする。
しかし、この旅は、この夢の問題は、ブリスベンに着くだけでは終わらない気がする。なぜなら、地図にピンが刺さっている場所はほかにも二つあるからだ。
アジア極東とアメリカ西部。おぼろげな歴史の授業の内容を思い出してみる。
『【神の鉄槌】。これが何なのかはまだ解明されていませんが、落ちた場所だけは明白に分かっています。ブリスベン、ヨコハマ、カリフォルニアです。』
とか言ってたような気がする。
まあ今そんなことを気にしていても仕方がない。もうすぐ馬車の発車時刻だ。
野営時の荷物をまとめ、3人一緒に馬車に乗り込んでいく。
今日の正午にはエスペランスに着くそうだ。
丁度いい時間だし、到着までもうひと眠りしようか。
「エスペランスに着いたぞ。スクリード、起きろ~」
というルセイの言葉で目が覚める。
思ったより早く着いたな。
いや、寝てたからそう感じただけか。
「おはよう。これ二回目だけど。」
なんて冗談交じりに体を起こしていく。
エスペランス。パース、アデレード間の丁度中間に位置するこの町は、白い砂が輝くビーチと、蒼く透き通る海が売りの町だ。
少し気晴らしに海岸に出てみるのもいいかもしれない。
海岸線に止まった馬車から降り、潮風を体に浴びながら宿へと向かう。
今回の宿は海に隣接している。砂浜に遊びに行くなら絶好のロケーションだろう。
宿のチェックインを済ませて自分たちの部屋へと向かう。
ドアを開けて中へ入ると、換気中だったらしく、海の香りが部屋中に漂っていた。
俺はこの匂いが好きなので大歓迎だ。
宿について少しまったりした後、ルセイたちに、
「せっかく海が綺麗なんだし、海岸に出てみないか?」
と、提案してみる。
「「大賛成」ですわ!」
二人の賛同も得られたところで、海へと向かう。
砂浜にはいくつか屋台も出ており、ここで昼食を食べていってもいいかもしれない。
なんて考えていると、
「お、あそこの屋台、美味そうな匂いがするぞ。あそこで食事にしないか?」
と、ルセイ。
「私も同じこと考えてましたわ!」
「考えることはみんな同じか。俺もだ。腹減ってしょうがねえ。」
全員の意見の一致により、屋台で昼食を食べてから海を堪能することにした。
「いや~食った食った。」
「お腹いっぱいですわ~」
みんな屋台での食事にテンション上がって沢山食べたようだ。
腹ごなしに海岸を散歩する。
綺麗な貝殻があれば拾ったり、波打ち際の濡れるか濡れないかギリギリのところに立ってみたり、それぞれ思い思いの過ごし方をする。
やっぱり海は心を穏やかにしてくれる。
エメラルドグリーンの海を眺め、潮風に当たっていると、たいていの悩み事なんてどこかへ飛んで行ってしまう。
海に寄った後は、海岸線にほど近い場所にある、ピンク色の水の湖に寄ってみる。
ここはさっき観光名所として馬車の運転手さんに聞いたところだ。
その光景は圧巻の一言で、自然が生み出した芸術といえるだろう。
そんな感じで、俺たちは一通り散歩をして落ち着いたところで、日も暮れてきたので宿へ戻った。




