再構築された文明の冒険話
3XXX年、人類は先の戦争により崩壊した文明を一から再スタートさせることとなった。核の応酬を喰らい、放射能まみれとなった動物たちは異形になるものや
戦闘能力が著しく上がるものもいた。そうした動物たちはいつしか魔物と呼ばれるようになった。未だ中世レベルの文明しか持たぬ人類には十分すぎる脅威である。また、過去の遺物が見つかることも少なくなく、総じてそれらは
「オーパーツ」と呼ばれる。
魔物たちに対する人類側の対応は、「冒険者」を育成し、魔物と戦わせることだった。彼らは武器を持ち、魔物を倒し、必要最低限の秩序を作っている。
これは、そんな冒険者にあこがれを持つ、一人の少年の話である。
<オーストランド王国(旧オーストラリア)西部>
「…で、あるからして、この北アメリカ大陸西部のクレーターは…」
眠ぃ。こんなことを聞いていて何になるというのだろうか。
「おいスクリード、ここテスト範囲だぞ?」
んなモン知ったこっちゃ無いわ。なんで千年近くも前の戦争の話なんかを聞かねばならんのか?俺は今現実問題として脅威になってる魔物を倒し、あわよくば魔物を根絶したいと考えているのに…
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「…今日の夜、街の外れの川へ行け…」
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…しばらく寝ていたらしい。
なんだか夢の中でお告げを受けた気がする。内容もしっかり覚えている。
しかし川か。なんか良い物でも落ちてんのかな?
「おぅ。起きたか。」
「あ、待っててくれたん?起こしゃぁ良かったのに。」
「いや、気持ちよさそうに寝てたもんでな…」
こいつは幼馴染のルセイだが、こいつの時間感覚どうなってんだろう…もう外真っ暗なんだけど…。
そうだ。丁度いい。ついでにさっきのお告げのところに行ってみようかな。
―街の外れ―
「なぁスクリード。お前の家ってこっち方面で合ってたっけ?」
と、ルセイが聞く。
「いや、寄りたい場所があってな。お前も付いて来るか?」
「ああ。暇だし付き合うよ。」
夜中に街を歩くなら人は多いほうが良い。
そうこうしていると、入っていけそうな河原を見つけた。
「ここが寄りたかった場所か?」
「そうだ。昼間、かくかくしかじかってお告げがあったんだよ。」
「お前本当に行動力だけはすごいよな…普通気にもしないぜ?」
まぁ当然の反応か。
「それに川って一括りに言っても広いぞ?」
「それは探しやすい位置に置いておいてくれるでしょう!」
「楽観的過ぎるねぇ…」
さてと。探すか。とはいってもルセイの言葉も一理ある。多少探したら帰るとするか…
…ん?なんか今光ったような…手に取ってみてみよう。
…板?黒い板だ。側面に凸凹のある…ってうわ!
「光ったぞ!?ルセイ!なんか見つけたぞ!」
「マジで言ってんのか!?見せてくれ!」
その謎の板をルセイに渡すと。
「…これ、この街周辺の地図じゃねえか。どうなってんだ?」
地図か。なんか細工でもしてあるのか…って、ええ!?
「「動いた!?!?」」
地図の表面に手を触れると、地図がスライドし、別の場所の地図を映し出した。
また、二本の指で広げたり縮めたりするように触ると地図の縮尺が変化する。
「全くどうなってるんだか解らないよ…」
同感である。
「ちょっとこれは俺が家に持って帰るわ。うちの親父こういうの詳しいから。」
「ああ。また明日な。」
そんな感じで俺は不思議な体験をして帰路に付いた。
現在時刻は20:35。
あ、門限過ぎちゃった。
「こんな時間までどこほっつき歩いてたんだこの馬鹿!」
修羅場である。
「いや~ちょっとこれには訳がありまして…」
「じゃあその訳というのを言いやがれ!」
これ、説明するのめんどくさいなぁ…
「…ということで、持ってきたのがこれなわけです。父さんこういうの詳しいでしょ?だから持って帰ってきてみた。」
と、さっきのものを差し出す。
「…おぉ!これはオーパーツだな!。かなり珍しいものだが、どこで拾ったんだこれ?」
「ここからちょっと行ったところにある川だけど。」
「何?そんなところにあるはずがないな…川は一番流されやすく、見つかりにくいはずだが…誰かが意図的に置いたとしか思えない。」
「あーそれなら、俺が学校で居眠りしてるときに『夜に川に行け』って言われたからそれ関連じゃねぇかな」
「それだな。どれどれ動くのか…え、居眠りしてたって言った?お前」
あ、事実を述べ過ぎた。話逸らそう。
「オーパーツって何なんだ?」
「オーパーツってのはな、神話の時代の遺物だ。我々には扱えない、高度な技術が詰まってる。ちなみにこのオーパーツには、われわれが扱える機能は、地図機能が付いてるみたいだな。」
やっぱりさっきのは地図だったのか。
「ん?東オーストランドにピンが立ってるぞ?それに、アジア極東、北アメリカ大陸の西部にもだ。」
…ピンってなんだ?
「…これは何かありそうな気がするな。ちょっと調べておくからもう遅いし寝ておけ。」
「了解。」
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「…東へ向かえ…」
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またなんか変な夢だったな…
眠い目をこすりながらリビングへ向かう。
「おぅ。起きたかスクリード。顔洗って飯食え。例のものだがな…目印が立っている場所が神話で原子爆弾だか何だかが落ちた地なんだ。古来より聖域として 立ち入りを禁止しているが、魔物が生まれるのはいつもあそこからだ。おかしい と思わないか?」
「何がだよ。」
「聖域から魔物なんて出てこないだろ常識的に考えて」
それもそうか。
「そこで、だ。俺のコネを最大限使って立ち入り禁止を解く。お前は現地へ赴いて調査をするんだ。お前が夢見てた冒険だ。悪い話じゃないだろう?」
この親父どんなコネ持ってやがんだ…?まぁ親父の言う通り、悪い話じゃない。
逆にワクワクしてくる!
「武器は家にあるやつ持ってけ。金は…10$でいいか?」
「なめんな」
親父からは結局5000$むしり取ることに成功した。宿の乗り継ぎだけならしばらくは持ちそうだ。
そんなわけで俺は、夢のお告げと黒い板の示す通り、東へ向かうことにした。
…おっと。アイツを忘れるところだったな。
「…というわけでルセイも来ないk」
「行く!!!」
食い気味にきた。
そんなこんなで俺の、聖域(?)を目指す旅が始まった。