煙草
煙草を吸った。
なんだか鬱々として眠れなかったし、お腹も痛いし、ずっとモヤモヤしていたから、なんとなく。
煙草を、インターネットの人が勧めてくれた。ずっと歳上の人だが、どうも歳上という感覚を掴めない男の人。
「かっこいいから吸いたいけど自分の体には合わなかった」なんて言って、4つ、違う味の煙草を1本ずつもらって、一緒に数本吸って。
その時は、苦くて臭いし、しばらく舌に残るし、自分にも向いていないなあなんてぼんやり思っていたけど。
中でも特に甘みのある煙草を、あまり最近は見かけない物だからと一箱もらって、その日はその場で別れた。
しばらくして、学校を辞めることになった。理由はクラスメイトからのストーカー行為なんていう、情けない話だが。
そも、今までの人生で何度もそれ紛い、いやそれより酷い被害を受けてきたと自負していた。酷い時は暴行まで受けたのだ、こんな付き纏ってくる程度問題ない、我慢できる、と思っていたのだが、家に着いてこようとされた時点で自分の心はもう限界だったらしい。学校に行く事がだんだんと億劫になり、午前に授業に出て帰るとか、中途半端な生活になって、それも自分を責める原因になって。訳もなく涙が出てくるようになった。
学校を辞めることになった。それで自分の気が晴れたかと言われたらそうではないけれど。旧友が学校に行っている時間に家にいるのはとても苦しい。話していて、明日学校だから、と言われると、特に学校の愚痴を聞くと、ストーカーなんかで辞める自分を責めて、その責苦を朝まで眠れずに続けていた。親にさえストーカー何かに負けるなんて、と責められてどうしたらいいのかわからなくなった。
それでも、周りに悟らせて気を遣わせるほどに矜持は折れていなかった。神経は段々と擦り切れてはいるが、まだ大丈夫と彼ら彼女らと休日の時間を共にした。変な風に軋む自分の心は誰かの日常の鱗片を見るだけで死を訴えかけてくるようになったけれど。
その日もそんな日だった。ずっとぐるぐると頭の中で相手の言葉を反芻して、学校に行けない自分を責めていた。
ふと、煙草のことを思い出した。
アレ、どこに置いていたっけ。
気が向いた。
吸ってやろう。
ぷかぷかとふかす、なんて言葉が煙草にはあるが、その通りだと思った。
靄がかっていた脳みそがスッキリして、燻っていた自己嫌悪も自己否定も煙に溶けてぷか、ぷかって擬音と一緒に消えるみたいな気分だった。
煙を出す煙草の先が、赤黒く光ってこちらに寄ってくるのを見ると、なんとも言えない安心感があった。まるで命を削っているみたいだ。自分の嫌いな大っ嫌いな自分が、だんだんと削れていくのが目に見えてわかる。
煙草は、耐えきれない時の自傷だ。こんな理由で吸うことは悪いことだ。なんて、そんなことを考えつつ、夜明けを見ながら、夏を終えて肌寒くなったバルコニーで、静かに煙を浮かし続けていた。
いつも思っていることをどこかに垂れ流したくて、つらつら書いてる日記から持ってきて、推敲しました。