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勇者との冒険記

後日談です

今日が本当に楽しみだ。父上がシーベルエンスに連れて行ってくれた前の夜ように、昨日の夜は良く眠れなかった。



だって今日は久しぶりにあの勇者が家に来るんだ。それだけじゃない。父上が旅した英雄の人たち皆が家に来るんだよ。

絶対にあのガンデア革命戦争の話をいっぱい聞くんだ。


父上もたまにその話をしてくれるけど、いつも僕を子供扱いして冗談ばかり話すんだ。


本当は凄い召還魔法を使えたくせに、ピンチの時にたまたま試してみたら使えただけだとか、5000人の敵に対してたった500人で父上が凄い作戦を使って勝ったトーテス防衛戦の話をでっかい落とし穴を掘ったんだとか。その中で一番僕が面白く無いのは、魔王を父上が凄い魔法で降参させて、優しい父上が悪の魔王を可哀想に思って元の世界に帰してあげた凄い話を、“あれは魔王の奥さんが子どもを生むって大変だから急いで帰りたいって頼まれたから帰してあげたんだ”って言うんだ。


父上は僕が子どもだからって馬鹿にしてる。そんなの嘘っぱちだって分かるよ。僕だってもう8才になるんだぞ。今日は父上と旅した人達から本当のことを聞くんだ。



家のロビーから女の人の声と父上の嬉しそうな声が聞こえる。誰か来たんだ。あの声は…。


「聖女様!」


階段を僕の方を見て綺麗な女の人が微笑んでくれる。あっ、隣にはシーベルエの総騎士団長のジンさんもいる。少し怖そうでだけどとてもいい人だ。

そのジンさんの影で隠れているのは、ルクちゃんだ。聖女様に似てすごく可愛いんだけどすごく恥ずかしがり屋さん何だ。何故かジンさんは僕にルクに手を出すなよって怖い顔で言う。僕はルクをいじめたことは無いのに…


父上は“ルクはニーセに似て魔性の女に成っちまうなぁー”て言ってたけど、マショウの女ってどう言う意味だろう。きっと、聖女様みたいに綺麗で優しい女の人になるってことなんだろうな。


「聖女様、父上が、魔王の奥さんが子どもを産むからって素直に帰っていった言うんだ。そんなの嘘だよね?」


「こら、リセス、ちゃんと挨拶をするんだ」


突然の質問に母上に怒られてしまった。だって、早く聞きたかったんだもんとは言えない。母上は怒るととても怖い。


「ユキちゃん、しっかり母親やってるねぇー。フム、ライ君の言ったことは本当何だよぉ~」


父上を見ると、ホラ、見ろって顔をしてる。でも聖女様が嘘を付く何てあり得ない。本当のことだったのかな…。でも聖女様は更なる真実を教えてくれた。


「でも、魔王が強ーいライ君を見て戦うのが怖くなって逃げる為にそんな嘘を付いたんだよ~。ライ君はねぇ~、優しいからわざと騙されて魔王を帰してあげたんだよ~」

そうだったんだ。偉大な父上の前では魔王も戦って負けると思ったんだ。うん、そうだったに違いない。


「ニーセ、あまり家の息子に…」

「やっぱり父上は凄いんだ!」


「そうだよぉ~!リセス君のお父さんはすごーく凄いんだよぉ~」


聖女様が僕の頭を撫でてくれる。少し照れてしまう。


「遅くなりました。お久しぶりです。皆さん」


「カー君、遅いぞォ~。お姉さまを待たせる何てぇ。罰で~す。ハグしまぁーす」


「どうぞ」


あれ、カーヘルさんの言葉に聖女様が止まった。周りの父上達も唖然としている。


「…カー君、成長したな」


父上がしみじみと言います。


「まぁ、僕もニーセさんにからかわれてた時は若かったってことですよ」


「カー君が大人になってつまんなくなってるよぉ~、きっとティスちゃんと大人の階段を上り捲ってるんだぁー」

「断じて違います!」


「ニーセ、子どもの前だぞ」


ジンさんが嘆く聖女様に言います。僕も大人の階段っていうのを上ればカーヘルさんみたいに格好良い人になるのかな。カーヘルさんはとても強いんだ。父上と見に行ったシーベルエの剣術大会で勇者と決勝戦で戦ったんだよ。僕もカーヘルさんや勇者みたいに強くなりたいなぁ。


「すいません。遅くなりました」


「よぉ、エル。お腹は大丈夫なのかよ。無理してトーテスまで来なくて良かったんだぞ」


「ご心配おかけします。でも、大丈夫ですよ。それに皆さんにお会いしたくて」


「エル、本当に大丈夫か?」


「大丈夫ですよ。ジン隊長は本当に私をいつまでも子ども扱いしますね。私はもうすぐ母親になるんですよ?」


エルさんだ。お腹がまた大きくなっている。

エルさんが来たってことはあの人がもうすぐ来るんだ!


「皆さん、待たせました」


来た!勇者アレン・レイフォート!僕が一番憧れる人だ。凄く強くて、凄く格好良くて、凄く優しい人なんだ。


「それじゃあ、俺らの勇者様が来たところで一杯やりながら本題といこうぜ」


僕はアレンさんといろいろと話したかったけど、父上の言葉にみんな動き始めたので、僕もついて行くことにした。



僕が父上と母上の間に座ると父上は仲間のみんなに本を配り始めた。


「これが俺たちの話を纏めた真実の記録だ。まぁ、出版する訳にはいかないがな。特に聖女の実態がばれたら、聖女ファンに俺が叩かれちまう」


「アハハ…、ライ君、それはどういう意味かなぁ~」


真実の記録。見てみたいけど父上は僕の分は用意してくれなかった。だから、母上の読んでいる本を見てみる。


表には『勇者との冒険記』と書いてある。

読みたい!きっとアレンさんの格好良い話がいっぱい書いてあるんだ!


でも、母上は見せてくれないし、父上もまだ、ダメだって…。大人ばっかりずるいよ。


それでも、何とか見たかったから父上の開いてボーッと見ているのを盗み見た。


残念ながらそれは最後のページ。短い文が書いてあるだけだった。


『この本はその偉大なる愚かな意志を継いだ者が、愚かで偉大なる大英雄であるリンセン・ナールス、ケルック・ラベルクに捧ぐ』


リンセン・ナールスは父上から聞いたことがある。アレンさんの前にペグレシャンを持っていた人だ。

でも、ケルック・ラベルクって誰だ。


「どうした、リセス?」


さっきはダメだって言われてたのに今は怒られなかった。


「ケルック・ラベルクって誰なの?」


「この世界を守った凄い人だ。俺の中で一番の大英雄だ」


父上は嬉しそうにそう言った。


「僕も父上やその人みたいに世界を守れるようになるかな?」


父上は言った。


「なれるさ!この俺だって世界を守れたんだからな。リセスは俺を越える勇者になれるさ」


父上は笑った。とても嬉しそうに。そして、僕に語った。


「自分の正義を信じて進め。


自分の愛する世界の全てを守れ。


そして、自分の出来ることをやり遂げろ。


それが勇者だ!」



The End

これにて、『勇者との冒険記』は終了です。終わった。終わってしまったんだ!


読者の皆様、長い間、私の拙い小説に付き合って頂き誠にありがとうございました。


ここまで応援してくださり本当にありがとうございました。


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