表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/99

終わりの前に 〈雪見〉

明日か。明日が終われば俺は解放されるぞー!自由だぁー!

と、気合いを入れなければやってられない気分です。色々と重圧がスゲェのよ。


だから、雪を見ながら一人、拝借してきた酒とマイ煙草をたしなんでいるのです。

気分転換に大好きな歴史について考え込む事にする。

俺は一人酒に酔うとぼやいてしまう事がある。


「ナールスは何を考えてたんだろうなぁ?」


「魔王を召喚した時にか?」


応答が来るとは思ってませんでした。

気配を消して後ろに立つのは止めてください。俺の心はとてもチキンなのです。


「それもあるけどよ。自分で召喚した魔王を倒す時に何を思ってたのかなぁーと」


ユキは当然の如く俺の隣に腰を掛ける。そして、俺と同じように雪の舞い落ちる夜空を仰いだ。


「そんなこと今は誰も知り得ないんじゃないのか?」


「まぁ、そうなんだけどさぁ、ナールスがグルアンに再び魔王を倒しに来た時には既に勇者って言われてたんだぜ。自分がその称号に相応しく無いのを知りながら」


才能あった彼とは、実力は天地ほど違えども、周囲の大誤解で大人物と認識されてしまったところが俺に似ている。


「私にもナールスの気持ちは分からない。ネイストほど詳しくも無いしな。でも…」


不意に話を止めたユキの方に顔を向ける。ユキと視線が合う。


「ナールスが勇者だろうが無かろうが関係無いんじゃないのか?ナールスは自分の犯した罪を償う為に頑張った。その結果、世界を救ったんだ。それで良いじゃないのか?」


フム、終わり良ければ全て良しと?


「ナールスが勇者で在ろうが無かろうがかまない、かぁー」


俺は彼が勇者でなかったら熱を上げなかったのだろうか。


「別にどうでも良いじゃないか。リンセン・ナールスが凄く無かろうが。自分のやるべきことをやったには違いない」


「そう…だな」


自分がやるべきことをやる、ね。


「やっぱり、俺には無理だなぁ~。ナールスはやっぱり凄いはやるべきことが出来ちまうだからさ。俺は出来ることしかやれないし」


「それは違うと思うぞ。ナールスも自分の出来ることをやっただけだと思う。ネイストも自分が出来ることはやってると思うぞ」


そいつはどうもありがとう。ただ、誉めすぎだよ。俺を見つめるユキの真剣な瞳に凄く照れます。


「私は好きだぞ、そんなネッ…、ナールスが…」


ありゃ、ユキちゃんそんなにナールスが好きだったのね。顔を赤くして俯く姿は恋する乙女じゃないですか。ユキの意外な可愛い一面を知りました。


「何て言うか、雪が綺麗だなぁ?俺って雪を見てるの、結構好きなのよ」


顔を沸騰させた美女と黙って並んで居るのは俺として空気が重すぎるので話題を降りました。

ところが、そんな何気ない俺の話は逆効果。ユキちゃんがさらに壊れました。顔はさらに沸騰して、俺を見ながら何か言おうと口をパクパク動かしていらしゃる。


「その、だなぁ…私も好きだ!」


そんな力まなくても。何故、この話題でそんなにも真剣何ですか?


「ああ、そうなの?俺もさぁ、ガキの頃から雪が好きで一晩中眺めてたらお袋にスゲェ怒られたんだよなぁー。…あのユキさん、どうかしましたか?」


下を向き身体を震わせているユキ。あれ、何故だろう。寒気が増したような。特に俺の背筋に寒気がスゥーっと来ました。


「さっきの話はそのままの意味なのだな?私の名前の意味を知っていた訳では無いのだな?」


「ユキミか?悪いが俺はカイナ語には疎いんだけど。もしかして、誰か偉人の名前だったりするのか?それとも神様の名前とか?」


あれ、何故かユキの機嫌を損ねてしまったようだ。


「“ユキミ”はカイナで雪を見る風習のことだ」


「あぁ、その“ユキミ”だから雪が好きなのな」


「違う。ネイストがあんな思わせ振りなことを…、何でも無い私は寝る!」


ユキちゃんは何故か少し怒り、去ってしまいました。俺は彼女に何か悪いことを言ったでしょうか?


少し考えてみましょう。

えーっと、ユキちゃんはナールスが好きで、雪が好きで、ユキミって言う名前はカイナ語で雪を見るっていうことで…。何なんでしょうね。雪を見るって言う意味の“ユキミ”かぁー?良い名前だよなぁ。俺もさっき言ったようにその“ユキミ”とやらは好きだしなぁ。


アレ、さっき俺は雪を見るのが好きって言ったよね?つまり、そのカイナ語では“ユキミ”と言う訳でして、好きと言った訳で、それを俺の言ったのとはユキが違うもっと深い意味に捉えた可能性が出てくる訳でして、ユキは私も好きだと答えた訳でして…


なぁーい、絶対にそれは無い!

思考がお粗末過ぎるぜ、ライシス・ネイストよ!

あのユキだぞ!そんなことが有るわけが無いだろう。俺みたいな駄目男にそんな感情を懐くようなことはゼェーッタイ無い!


フフフ、一瞬でもそんな有り得ない妄想をしてしまうとは、どうやら俺の頭は働き過ぎで疲れまくってるようだ。

だから、俺の心臓さんよ、急に活発に働き出さんでくれ。


よし、酒だ。全ての思考を停止させよう。そうそう、せっかく雪が降ってるんだ。

いやぁ~、雪は良いなぁ~、全くもって雪は良いぞ~。


えっ、ユキミって何の事ですか?全く全然知りませんよ!

俺の顔が熱いのは酒のせいに決まってるじゃないですか!

言語の壁を書くのは難しい。

何せ、天見酒は日本語と僅かな英語しか使えないからね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ