番外編 歴史に封じた真実の記録
リンセン・ナールス。優秀な人間だった。私に師事して三年でもう私を超越していた。彼の魔法、剣の才能はシーベルエ一だった。しかし、彼は庶民の出。その才能はシーベルエの貴族達に認められることは無かった。
その不遇の弟子を私は魔導大国ガンデアへと送った。そこでならば、彼の才能は必ずや認められる。
今日、その判断は間違っていたことを彼の口から聞かされた。
ガンデアからペグレシャンを持って帰って来た救世主リンセン・ナールス。その人が語る真実。
その彼がガンデアでも認められ無かったことを…、
そして、悩み抜いた彼が異界ヘブヘルより魔王を喚んでしまったことを…。
心優しい弟子だった筈だ。魔物すら討つのを戸惑う弟子だった。
その彼が一時でも世界を壊そうと考えるとは思わなかった。
私が彼を見ていなかったのだ。師である私が彼が辛い時間を過ごしていることに気付かなかったのだ。何れ程彼が思い悩んでいたことか!何故、私は手を差し伸べてやらなかったんだ!
悔やまれて仕方がない。
だけど、今更、後の祭りである。
だから今は魔王を撃とうとする英雄リンセン・ナールスの力となろう。
それが私、レクスター・シークスが師として出来る弟子への贖罪である。
だから、このリンセン・ナールスの失態はこの日誌に記して私の中に閉じ込めておく。
せめて、悲劇を味わう彼を英雄として死なせてやりたい。
それが愚かな師の出来る彼への罪滅ぼし。
短いですね。
実は『勇者との冒険記』、立案当初の予定では主人公はこのレクスター・シークスだったんです!勇者はもちろんリンセン・ナールス。魔王を召喚してしまった弟子との魔王討伐物語。
第二部が『小さき勇者との冒険記』、主役はライシス・ネイスト。小さき勇者は分かりますよね?
しかぁーし、作者の中でこちらを先に書きたい欲望が高まってしまいました。
だから、そのうちにレクスターの話を書こうかなぁーと思っとります。宜しければ、気長にお待ち下さい。
まずはライシスに乗っ取られた『勇者と冒険記』を書き終わらせないと…